111AM044|第111回 看護師国家試験 過去問
Aさん(60歳、男性)は大動脈弁置換術を受け、ワルファリンの内服を開始することになった。Aさんが摂取を避けるべき食品はどれか。
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正解: 3
正答
3.納豆
この問題のポイント
ワルファリンの作用機序であるビタミンK拮抗作用から、薬の効果を弱める食品を選ぶ問題です。手がかりは「大動脈弁置換術」と「ワルファリンの内服開始」で、人工弁の血栓を防ぐために抗凝固療法を長く続ける患者への食事指導が問われています。ビタミンKを大量に含み、さらに腸内でビタミンKを作り続ける納豆が、摂取を禁止する代表的な食品です。
解説
なぜワルファリンを内服するのか
大動脈弁置換術で使う人工弁には、機械弁と生体弁があります。機械弁は耐久性に優れていますが、弁の表面に血栓ができやすくなります。その血栓が脳などへ飛ぶと塞栓症を起こすため、生涯にわたる抗凝固療法が必要です。機械弁の患者には直接経口抗凝固薬(DOAC)は適応がなく、ワルファリンを用います。生体弁でも、術後早期の一定期間はワルファリンを内服することがあります。
Aさんは退院後も長く服薬と食事の自己管理を続けることになります。そのため、入院中から本人と、調理を担う家族への指導が重要です。
ワルファリンの作用機序
凝固因子のうち第Ⅱ因子(プロトロンビン)、第Ⅶ、第Ⅸ、第Ⅹ因子は、肝臓で合成されるときにビタミンKを必要とします。これをビタミンK依存性凝固因子といいます。この反応で使われたビタミンKは、ビタミンKエポキシド還元酵素によって再び使える形に戻ります。ワルファリンはこの酵素を阻害してビタミンKの再利用を妨げ、働きをもつ凝固因子の産生を減らします。凝固を抑えるプロテインC・SもビタミンK依存性ですが、国試では上記4因子を押さえておけば十分です。
そのため、食事から大量のビタミンKが入ると、阻害された経路を補うように凝固因子が作られ、薬の効果が弱まります。効果が弱まると、人工弁に血栓ができる危険が高まります。
食事指導の要点
納豆が特に禁止されるのは、次の2つの理由からです。
- 納豆そのもののビタミンK含有量がきわめて多い。
- 納豆菌が腸内で生き続けてビタミンKを産生するため、食べた後もしばらく影響が続く。
このため「少量なら食べてよい」とはせず、摂取しないよう指導します。同じ理由で、クロレラと青汁もビタミンKを多く含む健康食品として避けるよう伝えます。
一方、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜にもビタミンKは含まれますが、栄養上必要な食品なので禁止はしません。一度に大量に食べたり量を急に変えたりせず、摂取量を一定に保つよう指導します。ワルファリンの投与量は、ふだんの食生活を前提に調整されているためです。
効果はPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)で評価します。健康な人ではおおむね1前後で、弁の種類や血栓リスクに応じて医師が定めた目標範囲に入るよう、投与量を調整します。
効果が強すぎると出血しやすくなります。そのため、次のような出血徴候を観察し、気づいたら受診するよう指導します。
- 歯肉出血、鼻出血、皮下出血
- 血尿、黒色便
- 頭痛、意識の変化
あわせて、歯科治療や手術、他院受診の際には服薬中であることを必ず伝えるよう説明します。また、市販薬やサプリメントを自己判断で始めないことも伝えます。解熱鎮痛薬(NSAIDs)など、出血傾向を強めたり、ワルファリンの効果を変えたりする薬が多いためです。
選択肢の確認
1.海藻:海藻はヨウ素や食物繊維、ミネラルの供給源として知られる食品で、ワルファリン服用中に禁止される食品には含まれません。のりやわかめにもビタミンKは含まれますが、通常の食事量で問題になることは少なく、緑黄色野菜と同じく一度に大量にとらないよう伝える程度で十分です。ヨウ素との関係で海藻の制限が問題になるのは、甲状腺疾患の検査や治療の場面です。抗凝固療法とは区別して覚えます。
2.牛乳:牛乳の主な栄養素はカルシウムとたんぱく質で、ビタミンKはほとんど含まれず、ワルファリンの効果には影響しません。牛乳に注意が必要なのは、カルシウムと結合(キレート形成)して吸収が低下する薬を飲む場合です。代表例はテトラサイクリン系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬、ビスホスホネート製剤で、「牛乳と薬」の組み合わせはこちらで問われます。
3.納豆:正答。納豆はビタミンKをきわめて多く含みます。さらに納豆菌が腸内でビタミンKを産生し続けるため、ワルファリンの効果を強く、しかも長く弱めます。その結果、人工弁の血栓や塞栓症の危険が高まるので、量にかかわらず摂取を避けるよう指導します。
4.グレープフルーツ:グレープフルーツは小腸の薬物代謝酵素CYP3A4を阻害し、特定の薬の血中濃度を上げて作用を強める食品です。対象となるのは、カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)、一部のスタチン、シクロスポリン、タクロリムスなどです。ワルファリンのうち作用の強いS体は主にCYP2C9で代謝されるため、グレープフルーツの影響は大きくありません。避けるべき代表的な食品には挙げられないので、「薬と食品の相互作用」という共通点で取り違えないよう注意します。
覚えるポイント
- ワルファリンはビタミンK拮抗薬で、ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ)の産生を抑えます。
- 禁止する食品は納豆・クロレラ・青汁です。緑黄色野菜や海藻は禁止せず、一度に大量にとらず量を一定に保ちます。
- 効果判定はPT-INR、拮抗薬(効果を打ち消す薬)はビタミンKです。ヘパリンは効果判定がAPTT、拮抗薬がプロタミン硫酸塩で、対にして覚えます。
- グレープフルーツはカルシウム拮抗薬など(CYP3A4阻害)、牛乳はテトラサイクリン系・ニューキノロン系・ビスホスホネート製剤(キレート形成)と組み合わせて覚えます。
- 服薬指導では、出血徴候の観察、処置や受診時の服薬申告、自己判断で薬やサプリメントを始めないことを伝えます。ワルファリンは催奇形性があるため妊婦には禁忌です。
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