111AM045|第111回 看護師国家試験 過去問

慢性膵炎患者 chronic pancreatitis の食事療法で制限が必要なのはどれか。

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正解: 4

正答

4.アルコール

この問題のポイント

慢性膵炎の食事療法で必ず制限すべきものを問う問題です。慢性膵炎の成因で最も多いのが飲酒であり、飲み続けると炎症の再燃と病期の進行を止められないことが判断の鍵です。蛋白質・カリウム・食物繊維の制限は、肝硬変、腎疾患、腸管狭窄など別の疾患の食事療法と取り違えやすいので区別します。

解説

慢性膵炎とはどんな病気か

慢性膵炎は、膵臓で炎症が繰り返し起こることで膵実質が失われて線維化し、膵管の不整や膵石(膵石灰化)が生じる疾患です。その結果、膵臓の外分泌機能(消化酵素の分泌)と内分泌機能(インスリンなどの分泌)が不可逆的に低下していきます。成因はアルコール性が最も多く、特に男性で多数を占めます。ほかに特発性、遺伝性、胆石関連などがあります。喫煙も独立した危険因子で、飲酒と重なると発症や進行のリスクがさらに高まります。

病期による症状の変化

  • 代償期:膵機能はまだ保たれています。上腹部痛や背部痛を繰り返し、飲酒や脂肪の多い食事の後に痛みが誘発されやすい時期です。
  • 非代償期:膵実質の荒廃が進むと、痛みはむしろ軽くなることがあります。代わりに外分泌不全(脂肪便、下痢、体重減少、脂溶性ビタミンの欠乏)と内分泌不全(膵性糖尿病)が前面に出てきます。
  • 両者の間に移行期があり、痛みと機能低下が混在します。

食事療法の原則:病期を問わず断酒

病期にかかわらず共通する最重要の原則が断酒です。飲酒を続けると膵液の性状が変わり、膵管内に蛋白栓ができやすくなります。これが膵石の形成につながり、さらに膵実質への直接的な障害も加わります。そのため炎症の再燃、疼痛発作、線維化の進行が続きます。断酒によって疼痛の軽減や進行の抑制が期待でき、生命予後にも関わります。

目標は「量を減らす(節酒)」ではなく「やめる(断酒)」です。背景にアルコール依存症がある患者も多いため、本人の意思だけに頼らず、専門医療や自助グループ(断酒会など)、家族の協力につなぐことが看護の役割になります。禁煙指導も必ず併せて行います。

病期ごとの食事の工夫

  • 代償期:脂肪は膵外分泌を強く刺激して痛みを誘発しやすいため、控えめにします。香辛料、カフェイン、炭酸飲料などの刺激物も控え、1回量を多くしすぎずに規則正しく食べます。急性増悪時は急性膵炎に準じて絶食とし、膵臓を安静に保ちます。
  • 非代償期:消化吸収障害から低栄養に陥りやすくなります。エネルギーとたんぱく質を十分に確保し、脂肪も過度には制限しません。そのうえで消化酵素薬(パンクレリパーゼなど)を食事と一緒に服用して吸収を補います。脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の欠乏にも注意します。
  • 膵性糖尿病:インスリンだけでなく血糖を上げるグルカゴンの分泌も低下します。そのためインスリン治療中に低血糖を起こしやすく、回復もしにくいのが特徴です。低栄養もあるため、過度なエネルギー制限は避けます。規則正しい食事と低血糖への備えを指導します。飲酒は肝臓での糖新生を抑えて低血糖を助長するので、この点からも断酒が必要です。

選択肢の確認

1.蛋白質:たんぱく質は筋肉や血漿たんぱく、消化酵素の材料となる栄養素で、慢性膵炎の食事療法では原則として制限しません。特に非代償期は消化吸収障害による体重減少や低栄養が問題になるため、十分量を確保する方針です。たんぱく質の制限が必要になるのは、慢性腎臓病や、肝性脳症を伴う非代償性肝硬変などです。これらと混同しないようにします。

2.カリウム:この電解質を制限するのは、腎機能が低下して排泄できず高K血症を来しやすい慢性腎臓病や透析患者の場合です。膵臓の病気である慢性膵炎では制限の対象になりません。むしろ非代償期に下痢が続くと腸管から失われ、低K血症を起こすことがあります。

3.食物繊維:繊維は慢性膵炎の食事療法で一律に制限する成分ではありません。便通を整えるほか、膵性糖尿病では食後血糖の上昇を緩やかにする利点もあります。ただし、非代償期に極端に多く摂ると消化酵素の働きを妨げたり腹部膨満を招いたりすることがあるため、摂りすぎない程度の配慮にとどめます。低残渣(低繊維)食が必要になるのは、狭窄のあるクローン病や大腸の検査・手術の前などです。

4.アルコール:正答。飲酒は慢性膵炎の成因として最も多く、続けると病期にかかわらず炎症の再燃、疼痛発作、線維化の進行を招きます。そのため節酒ではなく断酒が求められます。膵性糖尿病を合併した場合には低血糖を助長する点でも避ける必要があり、食事療法で制限が必要なものとして最も確実です。

覚えるポイント

  • 慢性膵炎の成因で最も多いのは飲酒(男性に多い)です。喫煙も危険因子なので、病期を問わず断酒と禁煙が基本です。
  • 代償期は腹痛が主体です。脂肪と刺激物(香辛料、カフェイン、炭酸飲料)を控え、急性増悪時は絶食で膵臓を安静にします。
  • 非代償期は脂肪便、体重減少、膵性糖尿病が主体です。脂肪を過度に制限せず、消化酵素薬で吸収を補い、エネルギー・たんぱく質・脂溶性ビタミンを確保します。
  • 膵性糖尿病はグルカゴンの分泌も低下するため、インスリン治療中の低血糖に特に注意します。
  • 制限する栄養素と疾患の対応:たんぱく質制限は慢性腎臓病・肝性脳症、カリウム制限は腎機能低下、低残渣食は狭窄のあるクローン病や大腸検査前です。

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