111AM046|第111回 看護師国家試験 過去問
血中濃度の測定にあたり食事の影響を考慮すべきホルモンはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.グルカゴン
この問題のポイント
ホルモンの血中濃度は、分泌を左右する因子に合わせて採血条件をそろえないと正しく評価できません。血糖値や栄養素で分泌が直接変わるホルモンは食事の影響を強く受けます。日内変動の大きいホルモンは採血時刻、体液量で調節されるホルモンは水分の状態が問題になります。4つのホルモンの分泌部位・作用・分泌刺激を整理できているかが鍵です。
解説
問題文の手がかり
問題文には「食事の影響を考慮すべき」とあります。したがって、食後の血糖値や栄養素の変化がそのまま分泌量を動かすホルモンを選びます。検査前に看護師が絶食や安静、採血時刻を説明・確認するのは、こうした変動要因をそろえるためです。
グルカゴンと食事の関係
グルカゴンは、膵臓のランゲルハンス島A(α)細胞から分泌されるペプチドホルモンです。主に肝臓に作用してグリコーゲン分解と糖新生を促し、血糖値を上げます。
分泌の調節は次のとおりです。
- 血糖値が下がると分泌が増えます。
- 血糖値の上昇やインスリンによって分泌は抑えられます。
- アルギニンなどのアミノ酸は分泌を刺激するため、たんぱく質の多い食事ではむしろ上昇することがあります。
つまり、空腹時には高く、糖質を含む食事の後には下がり、食事の内容によっても値が変わります。そのため、原則として早朝空腹時に採血して評価します。同じ膵島のB(β)細胞から分泌されるインスリンも食後に急増するため、空腹時採血が基本です。
食事以外の条件が問題になるホルモン
- メラトニン:松果体から分泌されます。視交叉上核の体内時計の支配を受けて夜間の暗い時間帯に増え、網膜に入る光で抑制されます。
- コルチゾール:副腎皮質束状層から分泌される糖質コルチコイドです。視床下部(CRH)―下垂体前葉(ACTH)―副腎皮質の系で調節され、起床前後の早朝に最も高く、深夜に最も低い日内変動を示します。ストレスでも増加します。
- バゾプレシン:視床下部の視索上核・室傍核で産生され、下垂体後葉から放出される抗利尿ホルモンです。血漿浸透圧の上昇や循環血液量・血圧の低下で分泌が増え、腎臓の集合管で水の再吸収を促します。
これらは、食事よりも時刻・光・ストレス・水分状態の影響を大きく受けるホルモンです。
臨床では、検査項目ごとに「空腹で」「決まった時刻に」「安静にしてから」のどれが必要かを確認します。たとえばコルチゾールやACTHは早朝の安静時に、レニンやアルドステロンは一定時間の安静臥床後に採血するなど、時刻や体位の指定がある検査もあります。条件が守られないと、正常な変動を異常値と誤って判断したり、疾患を見逃したりするおそれがあります。
選択肢の確認
1.グルカゴン:正答。血糖値の低下で分泌が増え、食後の血糖上昇やインスリンで抑えられ、さらにアミノ酸の刺激でも分泌されます。食事の有無や内容によって血中濃度が大きく変わるため、原則は早朝空腹時に採血します。食事の影響を考慮すべきホルモンとして最も当てはまります。
2.メラトニン:松果体から夜間に多く分泌され、光で分泌が抑えられるホルモンです。測定で考慮すべきなのは、食事よりも採血の時刻と光環境です。睡眠・覚醒リズムの調節に関わり、時差ぼけや不眠との関連で出題されます。不眠症の治療には、この受容体に作用する薬(ラメルテオン)が使われます。
3.コルチゾール:ACTHの支配を受け、早朝に高く深夜に低い明瞭な日内変動を示し、身体的・精神的ストレスでも増加します。そのため、測定では採血時刻と安静を考慮します。血糖を上げる作用はありますが、分泌の主な調節因子は血糖値ではなくACTHです。この点で選択肢1と取り違えないようにします。クッシング症候群では深夜も値が下がらず、日内変動が消失することが診断の手がかりになります。
4.バゾプレシン:血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少を刺激として下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンです。測定では、脱水や飲水量などの水分状態を考慮し、血漿浸透圧とあわせて評価します。分泌が不足すると中枢性尿崩症、過剰になるとSIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)となり、SIADHでは低ナトリウム血症を起こします。食事中の栄養素によって分泌が調節されるホルモンではありません。
覚えるポイント
- 食事の影響が大きいホルモンは、グルカゴン(空腹で上昇、食後の高血糖で低下、アミノ酸で上昇)とインスリン(食後に上昇)です。空腹時採血が基本です。
- 日内変動が大きいホルモンは、コルチゾール・ACTH(早朝に最高、深夜に最低)とメラトニン(夜間に上昇、光で抑制)です。採血時刻をそろえます。
- 水分状態で変わるホルモンはバゾプレシンです。血漿浸透圧の上昇や循環血液量の減少で分泌が増え、不足すると尿崩症、過剰ではSIADHになります。
- 血糖を上げるホルモンは、グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモン、甲状腺ホルモンなど複数あります。血糖を下げるホルモンはインスリンだけです。
- 分泌部位は次のとおりです。グルカゴンは膵島A(α)細胞、インスリンはB(β)細胞、メラトニンは松果体、コルチゾールは副腎皮質束状層です。バゾプレシンは視床下部で産生され、下垂体後葉から分泌されます。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。