111AM087|第111回 看護師国家試験 過去問

急性胆管炎 acute cholangitis の代表的な3症状を示す Charcot〈シャルコー〉3徴に含まれるのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 1・4

正答

1.黄疸
4.発熱

この問題のポイント

急性胆管炎の古典的な診断の手がかりである Charcot 3徴(発熱・黄疸・右上腹部痛)を問う問題です。急性胆管炎は「胆管が詰まって胆汁が流れない(胆汁うっ滞)」状態に「細菌が感染する(炎症・菌血症)」ことで起こります。この2つの病態から症状を導けば、黄疸と発熱を選べます。意識障害はショックとともに Reynolds 5徴に加わる重症化のサインなので、3徴とは区別して覚えることが重要です。

解説

急性胆管炎の病態

急性胆管炎は、胆管が何らかの原因で閉塞し、流れの滞った胆汁に細菌が感染して起こる炎症です。閉塞の原因で最も多いのは総胆管結石です。ほかに、胆管癌や膵頭部癌などの悪性腫瘍による狭窄、胆道ステントの閉塞があります。起炎菌は大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性桿菌が中心で、腸管から胆道へ上行性に感染すると考えられています。

Charcot 3徴の成り立ち

Charcot 3徴は、発熱、黄疸、右上腹部痛の3つです。それぞれを病態と結びつけて理解すると忘れにくくなります。

  • 発熱:閉塞によって胆管内圧が上がると、胆汁中の細菌やエンドトキシンが血流やリンパ流へ逆流し、悪寒戦慄を伴う高熱が出ます。菌血症から敗血症へ進みやすいのが胆管炎の特徴です。
  • 黄疸:胆汁が十二指腸へ排出されないため、肝臓で抱合された直接(抱合型)ビリルビンが血中へ逆流します。その結果、皮膚や眼球結膜が黄染します(閉塞性黄疸)。
  • 右上腹部痛:胆管の拡張と内圧の上昇によって、右季肋部から心窩部にかけて痛みが生じます。

Reynolds 5徴と重症化

Charcot 3徴にショック(血圧低下)と意識障害が加わったものを Reynolds 5徴といいます。この病態は急性閉塞性化膿性胆管炎とも呼ばれ、敗血症が進行して全身の循環が破綻しつつある重篤な状態を示します。急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン(Tokyo Guidelines 2018)の重症度判定でも、意識障害や循環障害などの臓器障害を伴うものは重症(Grade III)とされます。重症例では、全身管理を行いながら緊急の胆道ドレナージを行います。

診断と治療の考え方

Charcot 3徴は、3つがそろえば胆管炎の可能性が高い(特異度が高い)所見です。一方で、3つすべてがそろう患者は多くありません(感度が低い)。そのためガイドラインでは、次の3つを組み合わせて診断します。

  • 全身の炎症所見:発熱・悪寒戦慄、血液検査での炎症反応
  • 胆汁うっ滞所見:黄疸、肝胆道系酵素の異常
  • 画像所見:胆管の拡張、結石や狭窄などの原因

治療の基本は、絶食・輸液・抗菌薬に加えて、閉塞を解除する胆道ドレナージです。ドレナージには、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)の手技を用いる内視鏡的ドレナージ(内視鏡的経鼻胆道ドレナージ〈ENBD〉、胆管ステント留置)と、経皮経肝胆道ドレナージ(PTBD)があります。閉塞が残ったままでは感染を制御しにくいため、抗菌薬だけでは治療が不十分になりやすい点を理解しておきましょう。

看護での観察

  • 体温と悪寒戦慄、血圧・脈拍・尿量、意識レベルを継続して観察し、Reynolds 5徴への進行を早期に捉えます。
  • 閉塞性黄疸では、尿の濃染(ビリルビン尿)、灰白色便、胆汁酸による皮膚瘙痒感がみられます。瘙痒には、皮膚の清潔と保湿、爪を短く保つことなどで掻破による皮膚損傷を防ぎます。
  • 胆汁が腸に届かないと、脂溶性ビタミンであるビタミンKの吸収が低下します。すると凝固因子が作られにくくなり、プロトロンビン時間の延長や出血傾向を来すことがあります。
  • ドレナージ後は、チューブの固定と事故抜去の予防、排液の量と性状、刺入部の出血や胆汁漏れを観察します。

選択肢の確認

1.黄疸:正答。胆管の閉塞で胆汁が腸へ流れなくなると、直接ビリルビンが血中に逆流して皮膚や眼球結膜が黄染します。Charcot 3徴の一つで、胆汁うっ滞があることを示す重要な手がかりです。

2.嘔吐:胆道疾患では悪心とともに吐くことがありますが、急性胆管炎に特異的な症状ではありません。Charcot 3徴にも Reynolds 5徴にも含まれないため、誤りです。消化器症状として観察はしますが、診断の鍵となる所見ではありません。

3.下痢:急性胆管炎に特徴的な症状ではなく、Charcot 3徴にも含まれないため誤りです。胆汁が腸管へ流れない状態では、むしろ脂肪の消化吸収が障害され、脂肪便や灰白色便がみられることがあります。水様便が主症状になるのは感染性腸炎などです。便の問題では「灰白色便は胆道閉塞の所見」と結びつけて覚えましょう。

4.発熱:正答。胆管内圧の上昇により、胆汁中の細菌やエンドトキシンが血中へ逆流し、悪寒戦慄を伴う高熱を生じます。Charcot 3徴の一つで、ガイドラインの診断基準では「全身の炎症所見」の中心となる項目です。

5.意識障害:これは Charcot 3徴ではなく、ショックとともに加わって Reynolds 5徴を構成する所見なので、誤りです。敗血症が進行した重症胆管炎を示し、ガイドラインの重症度判定でも臓器障害として重症(Grade III)の根拠になります。3徴と5徴を取り違えさせる選択肢です。この所見が出現したら、緊急の胆道ドレナージを要する状態と理解しておきます。

覚えるポイント

  • Charcot 3徴は「発熱・黄疸・右上腹部痛」です。胆汁うっ滞(黄疸)、感染と菌血症(発熱)、胆管の内圧上昇(痛み)の3つの病態に対応させて覚えます。
  • Reynolds 5徴は、Charcot 3徴に「ショック・意識障害」が加わったものです。急性閉塞性化膿性胆管炎として、緊急の胆道ドレナージの対象になります。
  • 急性胆管炎の治療の柱は、抗菌薬と「閉塞の解除(ENBD・胆管ステント・PTBD などの胆道ドレナージ)」です。
  • 閉塞性黄疸で押さえる所見は、直接ビリルビンの上昇、ビリルビン尿(濃い尿)、灰白色便、皮膚瘙痒感、ビタミンK吸収低下による出血傾向です。
  • 急性胆嚢炎は右上腹部痛・発熱と Murphy 徴候が特徴です。黄疸が目立つときは、胆管の閉塞(胆管炎)を考えます。
  • 他の3徴と混同しないようにしましょう。Beck 3徴(心タンポナーデ)は血圧低下・頸静脈怒張・心音減弱、Cushing 3徴(頭蓋内圧亢進)は血圧上昇・徐脈・呼吸の異常です。同じ名を冠した多発性硬化症の Charcot 3徴(眼振・企図振戦・断綴性言語)も別物です。

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