111AM088|第111回 看護師国家試験 過去問
高齢者の総合機能評価 CGA 簡易版〈CGA7〉で評価するのはどれか。2つ選べ。
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正解: 2・5
正答
2.意欲
5.日常生活動作〈ADL〉
この問題のポイント
高齢者総合機能評価(CGA)を短時間で行うための簡易版、CGA7の評価領域を問う問題です。CGA7は7つの質問・観察で、意欲、認知機能、手段的ADL、基本的ADL、情緒・気分の5領域をふるい分けます。栄養状態、生活歴、新しい機器の操作能力はCGA7の項目ではありません。この区別ができるかが鍵です。
解説
高齢者総合機能評価(CGA)とは
高齢者は複数の疾患を併せ持つことが多く、病名や検査値だけでは「その人が自分らしく生活を続けられるか」がわかりません。CGAは、疾患の評価に加えて次の側面を多面的に評価します。その結果をもとに、治療・ケア・支援の方針を立てるための方法です。
- 身体機能:基本的ADL(食事、排泄、入浴、移動など)と手段的ADL(IADL:買い物、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用など)
- 精神・心理機能:認知機能、気分(抑うつ)、意欲
- 社会・環境面:家族や介護者、住環境、経済状況、利用できる社会資源
領域ごとの代表的な詳細評価尺度は次のとおりです。
- 基本的ADL:Barthel Index
- IADL:Lawtonの尺度
- 認知機能:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、MMSE
- 抑うつ:GDS-15(高齢者用うつ尺度短縮版)
- 意欲:Vitality Index
CGA7の7項目と判定
これらの尺度をすべての人に実施すると時間がかかります。そこで、外来などで短時間に実施できる簡易スクリーニングとして用いられるのがCGA7です。日本老年医学会も、高齢者診療に役立つ評価法として紹介しています。各項目は、正(問題なし)か否(問題あり)かで判定します。7項目は次のとおりです。
- ①意欲:外来では、診察時に本人の挨拶を待ち、自分から進んで挨拶するかを観察します。入院・施設では、自ら定時に起床するか、リハビリテーションへの積極性で判断します。
- ②認知機能:3つの言葉(桜・猫・電車)を復唱してもらい、あとでまた聞くので覚えておくよう伝えます。
- ③手段的ADL:外来では「ここまでどうやって来ましたか?」と尋ねます。入院・施設では、普段バスや電車、自家用車を使ってデパートやスーパーマーケットに出かけるかを尋ねます。自分でバス、電車、自家用車を使って移動できれば正と判定します。
- ④認知機能:②の3語をもう一度言ってもらいます(遅延再生)。ヒントなしで全部言えれば、認知症の可能性は低いと判断します。
- ⑤基本的ADL(入浴):お風呂に自分ひとりで入り、洗うのにも手助けが要らないかを尋ねます。
- ⑥基本的ADL(排泄):「失礼ですが、トイレで失敗してしまうことはありませんか?」と尋ね、失禁の有無を確認します。失禁がない場合は自立(正)と判定します。尿器などの集尿器を使って自分で処理できている場合も、自立(正)と判定します。
- ⑦情緒・気分:「自分が無力だと思いますか?」と尋ねます。
否となった項目は、その領域を前述の詳細尺度で評価します。判定の目安は次のとおりです。
- 復唱ができない場合:難聴や失語がなければ、中等度の認知症が疑われます(この場合、④は省略します)。
- 外出に付き添いが必要な場合:虚弱か中等度の認知症が疑われます。
- 遅延再生ができない場合:近時記憶の障害であり、軽度の認知症が疑われます。
- 入浴と排泄の両方が自立していない場合:要介護状態の可能性が高いと判断します。反対に、入浴と排泄が自立していれば、他の基本的ADLも自立していることが多いとされます。
- 「無力だと思う」と答えた場合:うつの傾向があると判断します。
つまりCGA7は、診断をつける道具ではありません。「どの領域を詳しく調べるべきか」を短時間で見つけるための入口です。外来受診時、入院時、在宅訪問時などに用いれば、認知症、うつ、閉じこもり、要介護化などのリスクを早く見つけられます。そこから詳しい評価、退院支援、介護保険サービスの導入、多職種連携につなげることができます。
正答に至る判断
選択肢をCGA7の7項目と照らし合わせると、次のように整理できます。
- 項目に含まれるもの:意欲(①)と日常生活動作(③⑤⑥)の2つ
- 項目に含まれないもの:BMI、職業歴、新しい機器の操作
「高齢者の評価に役立つ情報かどうか」ではなく、「CGA7の7項目に含まれるかどうか」で判断することが大切です。
選択肢の確認
1.BMI:体格指数は身長と体重から算出する体格・栄養状態の指標で、CGA7の7項目には含まれません。高齢者の栄養スクリーニングには、簡易栄養状態評価表(MNA-SF)などが別に用いられます。体格指数(測定できない場合はふくらはぎ周囲長)は、このMNA-SFの項目の一つです。広い意味のCGAでは栄養も評価対象になり得ますが、簡易版のCGA7では扱いません。
2.意欲:正答。CGA7の最初の項目です。外来では、診察時に自分から挨拶をするかを観察します。入院・施設では、自ら定時に起床するか、リハビリテーションへの取り組みが積極的かで判断します。問題があればVitality Indexで詳しく評価します。自発性の低下はうつや認知症の手がかりになり、放置すると廃用や閉じこもりにもつながるため重視されます。
3.職業歴:これまでの職業は、生活背景や価値観、家庭・社会での役割を理解する手がかりになり、回想法などのケアにも生かせる情報ですが、CGA7の項目ではありません。CGA7は機能をふるい分けるための道具です。生活歴は、アセスメントの情報収集の中で別途聴取するものと整理します。
4.新機器の利用:携帯電話やATM、パソコンのメールなどを使えるかは、JST版活動能力指標の「新機器利用」という領域で評価するもので、CGA7の項目ではありません。CGA7の手段的ADLで確認するのは、バスや電車、自家用車を使って自分で外出できるかです。「IADL」から連想して選ばないよう注意します。
5.日常生活動作〈ADL〉:正答。CGA7では、次の3項目で生活機能を評価します。交通機関などを使った外出(手段的ADL)、入浴の自立(基本的ADL)、排泄の自立(基本的ADL)です。排泄は、失禁がない場合、または尿器などの集尿器を使って自分で処理できる場合に自立と判定します。尿器を自分で使えていれば、問題所見ではありません。入浴と排泄の両方が自立していなければ、要介護状態の可能性が高いと判断します。問題があれば、手段的ADLはLawtonの尺度、基本的ADLはBarthel Indexで詳しく評価します。
覚えるポイント
- CGAは、身体機能・精神心理機能・社会環境面を多面的に評価し、生活機能を支える方針を立てるための方法です。
- CGA7の評価領域は、意欲、認知機能(復唱・遅延再生)、手段的ADL、基本的ADL(入浴・排泄)、情緒・気分の5つです。
- 判定の目安は次のとおりです。復唱できない→中等度の認知症の疑い、遅延再生できない→軽度の認知症の疑い、入浴・排泄の両方が自立していない→要介護状態の可能性が高い。排泄は、失禁がないか、集尿器を使って自分で処理できていれば正と判定します。
- 詳細評価の尺度との対応は、意欲→Vitality Index、認知機能→HDS-R・MMSE、IADL→Lawtonの尺度、基本的ADL→Barthel Index、抑うつ→GDS-15です。
- 栄養(BMI、MNA-SF)、職業歴などの生活歴、新機器の操作はCGA7の項目ではありません。
- 活動能力の指標も区別します。老研式活動能力指標は、手段的自立・知的能動性・社会的役割の3領域から成ります。JST版活動能力指標は、新機器利用・情報収集・生活マネジメント・社会参加の4領域から成ります。
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