111AM089|第111回 看護師国家試験 過去問
自閉症スペクトラム障害 autism spectrum disorder にみられるのはどれか。2つ選べ。
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正解: 4・5
正答
4.習慣へのかたくななこだわりがある。
5.非言語的コミュニケーションの障害がある。
この問題のポイント
自閉症スペクトラム障害(ASD)の中核症状を、ほかの神経発達症の症状と区別できるかを問う問題です。ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションと対人相互反応の障害」と「限定された反復的な行動・興味・活動」の2つの領域からなるため、この2つに当てはまる選択肢を選びます。不注意は注意欠如・多動症(ADHD)、計算の困難は限局性学習症、運動性チックはチック症の症状です。この対応を整理しておくことが判断の鍵になります。
解説
ASDの位置づけ
ASDは神経発達症(発達障害)の一つです。生まれつきの脳機能の特性によって、発達の早い時期から対人関係や行動面に特徴が現れます。DSM-5(2013年)では、それまでの自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害が、ひとつの連続体(スペクトラム)としてまとめられました。日本語では自閉スペクトラム症とも呼ばれます。男児に多く、知的障害を伴う場合も伴わない場合もあります。発達障害者支援法では、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などが発達障害として定義されています。
中核症状の2領域
1つ目の領域は社会的コミュニケーションおよび対人相互反応の持続的な障害です。次の3つのすべてに困難がみられることが求められます。
- 相互の対人的・情緒的関係の障害:会話のやりとりが一方的になる、興味や感情を他者と分かち合いにくい
- 非言語的コミュニケーション行動の障害:視線が合いにくい、表情や身ぶりが乏しい、相手の表情・身ぶり・声の調子の意味を読み取りにくい、指さしで関心を共有しにくい
- 人間関係を発展・維持・理解することの障害:状況に合わせて行動を調整しにくい、年齢相応の友人関係を築きにくい
2つ目の領域は限定された反復的な行動・興味・活動です。次のうち2つ以上がみられることが求められます。
- 常同的・反復的な運動、物の使い方、話し方:手をひらひらさせる、物を一列に並べる、反響言語(おうむ返し)など
- 同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり:同じ道順・手順・食べ物に固執し、小さな変化にも強い苦痛を示す
- 強さや対象が極端に限られた、固執した興味
- 感覚刺激への過敏さまたは鈍感さ:特定の音や肌触りを極端に嫌う、痛みに鈍いなど
いずれの症状も発達早期から存在し、社会生活に明らかな支障をきたしていることが診断の条件です。また、知的障害だけでは説明できないことも条件になります。
本問の判断
選択肢4は2つ目の領域の「同一性への固執」に、選択肢5は1つ目の領域の「非言語的コミュニケーション行動の障害」に、それぞれそのまま対応します。残りの選択肢は、ほかの神経発達症の中核症状です。神経発達症どうしは併存しやすく、DSM-5ではASDとADHDの併存診断も認められるようになりました。しかし「ASDにみられるもの」と問われた場合は、ASDの診断基準の中核に当たるものを選ぶのが原則です。
看護への生かし方
ASDの特性を理解すると、関わり方の工夫が見えてきます。
- 見通しが立たないと不安や混乱が強まるため、検査や処置の手順、日課の変更は前もって伝えます。伝えるときは、絵カードやスケジュール表など目で見てわかる手がかりを使います。
- 比喩や遠回しな表現、表情や雰囲気だけで伝える方法は理解されにくいため、具体的で短い言葉で伝えます。
- 感覚過敏がある場合は、音・光・触れ方など周囲の刺激を調整します。
- 地域では、1歳6か月児健康診査や3歳児健康診査で、視線や指さし、言葉の遅れなどから早期に気づき、支援につなげることが大切です。
選択肢の確認
1.運動性チックが出現する。:運動性チックとは、まばたき、首振り、肩すくめなどの突発的で素早く、リズムのない動きが、本人の意思と関係なく繰り返されるもので、チック症の症状です。運動性チックと音声チック(咳払い、発声など)の両方が1年以上続くものはトゥレット症と呼ばれます。ASDでみられる常同運動は、手をひらひらさせる、体を揺らすなど同じ動作を律動的に繰り返すもので、チックの突発的で不規則な動きとは性質が異なります。ASDにチックが併存することはありますが、中核症状ではありません。
2.計算の習得が困難である。:全般的な知的発達に遅れがないのに、読む、書く、計算するなど特定の能力の習得と使用に著しい困難がある状態は、限局性学習症(学習障害)の特徴です。計算の困難は算数障害とも呼ばれ、読字の障害(ディスレクシア)、書字表出の障害と並ぶ代表的な型です。ASDの中核は学習領域の偏りではなく、社会的コミュニケーションの障害とこだわりです。知的障害を伴うASDで学習全般が遅れることはありますが、計算の困難はASDの診断の要件ではありません。
3.不注意による間違いが多い。:不注意による間違い(ケアレスミス)、忘れ物やなくし物、注意の持続の難しさは、ADHDの不注意症状の典型です。ADHDは不注意と多動性・衝動性を中核とし、症状が12歳以前からみられ、家庭と学校など2つ以上の場面で現れることが診断の条件です。ASDと併存することはありますが、ASDそのものの中核症状ではありません。
4.習慣へのかたくななこだわりがある。:正答。同じ道順・手順・日課・物の配置などに固執し、わずかな変化にも強い苦痛を示すことは、「限定された反復的な行動・興味・活動」の領域に含まれる同一性への固執で、ASDの中核症状です。予定の急な変更でパニックを起こすことがあるため、変更は事前に、目で見てわかる形で伝えるなどの配慮が必要です。
5.非言語的コミュニケーションの障害がある。:正答。視線を合わせにくい、表情や身ぶりが乏しい、他者の表情や身ぶりの意味を読み取りにくいといった非言語的コミュニケーション行動の障害は、「社会的コミュニケーションおよび対人相互反応の障害」の領域に含まれる、ASDの中核症状です。言葉の発達に遅れがなくても、冗談や比喩、場の雰囲気を理解しにくいことがあります。
覚えるポイント
- ASDの中核症状は、「社会的コミュニケーション・対人相互反応の障害」と「限定された反復的な行動・興味・活動(こだわり)」の2領域です。いずれも発達早期から存在します。
- こだわりの領域には、常同運動、同一性への固執、限られた興味に加えて、感覚の過敏・鈍感も含まれます。
- 神経発達症ごとの中核症状は次のとおりです。ADHDは不注意・多動性・衝動性(12歳以前から、2つ以上の場面)、限局性学習症は読む・書く・計算するなど特定の学習の困難、チック症は突発的な反復運動・発声です。運動性と音声の両方のチックが1年以上続けばトゥレット症です。
- 神経発達症どうしは併存しやすいですが、「〜にみられるのはどれか」と問われたら、その障害の中核症状を選びます。
- ASDの支援の基本は、見通しを示す(事前の予告、スケジュール)、目で見てわかる形で伝える、具体的で短い言葉を使う、感覚刺激を調整する、の4点です。
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