111AM086|第111回 看護師国家試験 過去問

ヘモグロビン A1c〈HbA1c〉について正しいのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 2・5

正答

2.赤血球の寿命によって測定値は変動する。
5.ヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質のことである。

この問題のポイント

HbA1cについて、何を測っているのか、どのくらいの期間の血糖を反映するのか、どのような条件で値が実際の血糖とずれるのかを問う問題です。鍵になるのは「赤血球の中のヘモグロビンが糖化されたもの」という点です。ここから、赤血球の寿命(約120日)を手がかりに、反映期間と誤差が生じる理由の両方を説明できます。反映期間が短いグリコアルブミンとの違いもあわせて整理します。

解説

HbA1cの成り立ち

血液中のブドウ糖は、酵素を介さずに蛋白質と結合します。これを**糖化(グリケーション)**といいます。赤血球内のヘモグロビン(β鎖のN末端)にブドウ糖が結合し、安定した形になったものがHbA1cです。値は、全ヘモグロビンのうちHbA1cが占める割合(%)で表します。

糖化の量は、蛋白質がさらされた血糖の高さと、さらされた時間の長さによって決まります。安定した形になった後は、赤血球が脾臓などで壊されるまで元に戻りません。

反映する期間

赤血球の寿命は約120日です。血液中には、作られたばかりの赤血球から寿命間近の赤血球までが混ざっています。そのため、HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖値を反映し、直近の期間ほど値への影響が大きくなります。

採血直前の食事の影響をほとんど受けないので、空腹時でなくても測定できます。この性質から、外来での長期的な血糖コントロールの評価に広く使われています。

糖化蛋白質には、ほかにも反映期間の異なる指標があります。

  • グリコアルブミン:糖化されたアルブミンです。アルブミンの半減期は赤血球の寿命より短いため、おおよそ過去2週間程度の血糖を反映します。
  • 1,5-アンヒドログルシトール(1,5-AG):糖化蛋白質ではありません。高血糖で尿糖が出ると値が低下する指標で、数日間の変化を鋭敏に反映します。

反映する期間は、長い順に「HbA1c > グリコアルブミン > 1,5-AG」です。

値が実際の血糖とずれる場合

HbA1cは赤血球の中でゆっくり作られるため、赤血球の寿命や若い赤血球の割合が変わると、血糖が同じでも値が変わります。

  • 低く出やすい状態(赤血球の寿命が短い、または若い赤血球が多い):溶血性貧血、大量出血の後、輸血の後、鉄欠乏性貧血の治療中(鉄剤で若い赤血球が急増する)、腎性貧血に対するエリスロポエチン製剤の使用中、肝硬変、透析患者など
  • 高く出やすい状態(古い赤血球の割合が多い):未治療の鉄欠乏状態など
  • どちらにもずれうる状態:異常ヘモグロビン症では測定法によって値が上下します

このような場合は、赤血球の影響を受けないグリコアルブミンを参考にします。ただし、グリコアルブミンはアルブミンの代謝の影響を受けます。ネフローゼ症候群や甲状腺機能亢進症では低く出やすく、肝硬変では高く出やすい点に注意が必要です。

臨床での活用

日本糖尿病学会の基準では、HbA1c 6.5%以上は「糖尿病型」です。ただし、HbA1cだけを繰り返し測っても糖尿病とは診断できず、血糖値も糖尿病型であることが必要です。血糖コントロールの目標は、合併症予防のためには7.0%未満です。

HbA1cは平均値なので、低血糖や血糖の変動幅はわかりません。低血糖を繰り返していても、HbA1cは「良好」に見えることがあります。看護師が結果を説明したり評価したりするときは、次の点を意識すると役立ちます。

  • 貧血、出血、輸血、透析の有無を確認して、値の信頼性を考える
  • 治療を変更した効果は、HbA1cでは1〜2か月後に現れることを伝える
  • 低血糖症状の有無や自己血糖測定の記録もあわせて評価する

選択肢の確認

1.測定値の上限は10%である。:HbA1cに10%という上限は設けられていません。血糖コントロールが著しく悪い患者では、10%を超える値も普通に測定されます。臨床で目安になる数値は、糖尿病型の6.5%以上や、合併症予防の目標である7.0%未満などです。「上限」という表現は、こうした判断の区切りの値と混同させるものです。

2.赤血球の寿命によって測定値は変動する。:正答。HbA1cは赤血球内で糖化が蓄積してできるため、赤血球が血液中にとどまる期間に左右されます。溶血性貧血、出血後、輸血後、鉄欠乏性貧血の治療中などでは糖化を受ける時間が短い赤血球が多くなり、実際の血糖より低い値になります。逆に、未治療の鉄欠乏状態では高めに出ることがあります。

3.過去1、2週間の血糖値管理の指標である。:HbA1cは赤血球の寿命(約120日)を反映するため、指標となるのは過去1〜2か月の平均血糖です。過去1〜2週間程度を反映するのは、グリコアルブミン(やフルクトサミン)です。「週」と「か月」を入れ替えた、典型的なひっかけです。

4.グリコアルブミンより短期間の血糖値管理の指標である。:関係が逆です。グリコアルブミンは過去約2週間、HbA1cは過去1〜2か月を反映するので、HbA1cのほうが長期間の指標です。グリコアルブミンは短期の変化をとらえられるため、治療変更直後の効果判定や、HbA1cが当てにならない貧血・透析患者などで用いられます。

5.ヘモグロビンにブドウ糖が結合した糖化蛋白質のことである。:正答。赤血球中のヘモグロビンに、ブドウ糖が酵素を介さずに結合して安定化した糖化蛋白質です。全ヘモグロビンに対する割合(%)で表します。同じ糖化蛋白質の仲間に、アルブミンが糖化したグリコアルブミンがあります。

覚えるポイント

  • HbA1cはヘモグロビンにブドウ糖が非酵素的に結合した糖化蛋白質で、全ヘモグロビンに対する割合(%)で表します。
  • 反映期間はHbA1cが過去1〜2か月、グリコアルブミンが約2週間、1,5-AGが数日です。長い順に「HbA1c > グリコアルブミン > 1,5-AG」と覚えます。
  • 赤血球の寿命が短い、または若い赤血球が多い状態(溶血、出血、輸血、鉄欠乏性貧血の治療中、エリスロポエチン製剤使用、透析)では低く出ます。未治療の鉄欠乏状態では高めに出ることがあります。
  • HbA1cが当てにならないときはグリコアルブミンを参考にします。ただし、グリコアルブミンはネフローゼ症候群などアルブミン代謝の異常で値がずれます。
  • HbA1c 6.5%以上は糖尿病型で、合併症予防の目標は7.0%未満です。HbA1cだけの反復では診断できず、血糖値の確認が必要です。
  • HbA1cは食事の影響を受けず空腹時採血は不要ですが、低血糖や血糖の変動幅は反映しません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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