111AM107|第111回 看護師国家試験 過去問
次の文を読み106〜108の問いに答えよ。Aさん(34歳、初産婦)は順調な妊娠経過であった。妊娠40週5日の午前8時、10分毎の規則的な子宮収縮を主訴に来院し、医師の診察の結果、入院となった。入院時の胎児心拍数基線は130 bpm、胎児の推定体重は3,300 gであった。午後0時、助産師が内診したところ、子宮口開大4cmであった。Aさんは陣痛発作時に腰痛を強く訴えている。Aさんの夫(37歳)は、夫婦で出産体験を共有したいと両親学級を受講しており、入院時からAさんに付き添っている。夫はAさんの陣痛発作時、心配そうにAさんの様子を見つめているが、陣痛間欠時にはうとうとしている。訪室した看護師に、夫から「妻が痛がっているのですが、どうすればよいでしょう」と質問があった。胎児心拍数基線は140 bpm であった。このときの看護師の夫への対応で最も適切なのはどれか。
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正解: 4
正答
4.産痛を緩和するためのマッサージの実施を促す。
この問題のポイント
分娩第1期に陣痛発作時の強い腰痛を訴える産婦と、「どうすればよいか」と尋ねる付き添いの夫への対応を問う問題です。胎児心拍数基線は140 bpmで、母児の経過は正常範囲にあります。夫は両親学級を受講し、出産体験の共有を望んでいます。そのため、産痛を和らげるケアを夫の役割として具体的に示すことが、Aさんの苦痛と夫の戸惑いの両方に応える対応になります。
解説
状況の整理
- 母体:Aさんは34歳の初産婦です。高年初産(35歳以上の初産婦)には当たりません。妊娠40週5日の正期産で、妊娠経過は順調です。分娩開始は、陣痛周期が10分以内(または1時間に6回以上)の規則的な陣痛となった時点です。Aさんは午前8時の来院時にすでにこの状態にあったため、分娩開始は午前8時かそれ以前です。午後0時の子宮口4cm開大は、分娩第1期の途中にあたります。
- 胎児:胎児心拍数基線は入院時130 bpm、現在140 bpmで、どちらも正常範囲(110〜160 bpm)です。推定体重3,300 gも標準的です。緊急の対応を要する情報はありません。
- 産婦の訴え:陣痛発作時の強い腰痛です。
- 夫:両親学級を受講し、「夫婦で出産体験を共有したい」と望んで付き添っています。発作時は心配そうに見つめるだけで、間欠時はうとうとしており、疲れもうかがえます。夫の質問は、妻のために何かしたいのに方法が分からない、という気持ちの表れと読み取れます。
分娩第1期の産痛の特徴
分娩第1期の痛みは、子宮収縮と子宮頸部の開大・伸展によって生じます。この痛みは、交感神経に伴走する内臓求心性線維を通って第10胸髄〜第1腰髄(T10〜L1)に入ります。そのため下腹部だけでなく、腰部・仙骨部にも関連痛として感じられます。児頭が下降すると、仙骨部への圧迫も加わります。
分娩第2期になると、産道や会陰の伸展による痛みが陰部神経(S2〜S4)を経て伝わり、会陰部・肛門部の痛みが加わります。Aさんの「陣痛発作時の腰痛」は、分娩第1期に典型的な産痛の現れ方です。
マッサージ・圧迫法が有効な理由
腰部や仙骨部をさする方法や、手のひら・握りこぶしで圧迫する方法があります。その効果はゲートコントロール説で説明されます。触覚・圧覚を伝える太い神経線維への刺激が、脊髄後角で痛みの伝達を抑えるという考え方です。
さらに、身近な人に触れてもらうことで安心感とリラクセーションが得られます。これにより「恐怖→緊張→痛み」の悪循環を断つ効果も期待できます。特別な器具や技術を必要としないため、付き添う家族が担うのに適した方法です。分娩が進んで肛門部の圧迫感や努責感が出てきたら、テニスボールなどで肛門部を圧迫する方法もあります。
夫への関わり方
両親学級を受講していても、実際の陣痛を前にすると夫は戸惑い、無力感を抱きやすいものです。看護師は次の点を、実際にやって見せながら伝えます。
- 圧迫する位置(腰部・仙骨部)
- 強さ
- 陣痛発作に合わせて行うこと
そのうえで、Aさんに心地よい場所や強さを尋ねながら調整するよう、夫に促します。夫が具体的な役割を得ることは、Aさんの産痛緩和と安心につながります。「出産体験を共有したい」という夫の希望もかないます。夫婦で出産を乗り越えた実感は、親としての自信や家族関係の形成にもよい影響を与えます。夫の疲労に対しては、間欠時にAさんのそばで休むことや、水分・食事をとることもあわせて勧めます。
なお、陣痛発作時の腰痛が非常に強い場合は、後方後頭位などの回旋異常が関係していることもあります。看護師は夫への支援と並行して、分娩の進行と胎児の状態を継続して観察します。
選択肢の確認
1.別室での休憩を促す。:間欠時にうとうとしている様子から、夫の疲労はうかがえます。しかし夫は出産体験の共有を望んで付き添い、妻を支える方法を尋ねています。別室へ離すことは夫の希望にも質問にも応えておらず、Aさんから身近な支え手を遠ざけることにもなります。分娩が長引いて夫が疲れきっている場合には、交代で休むことを提案する場面もあります。ただし、この時点で最初に行う対応ではありません。
2.分娩経過について説明する。:分娩の進み具合を伝えることは、夫の不安を和らげ、見通しを持ってもらううえで意味があります。しかし夫が尋ねているのは「痛がっている妻に何をすればよいか」です。経過の説明だけでは、夫が妻のためにできる行動は示されません。説明は、マッサージの指導と並行して補足的に行うものと位置づけられます。
3.Aさんと病棟内を歩行するように促す。:分娩第1期の歩行や上体を起こした体位は、重力で児頭の下降を助け、分娩の進行を促す目的で取り入れられることがあります。しかし、夫が今すぐ妻のそばでできる苦痛緩和の方法ではなく、夫の質問に直接応える対応ではありません。また、歩行を取り入れるかどうかは、破水の有無や胎児の状態、強い腰痛を訴えている産婦本人の希望を確認したうえで判断するものです。
4.産痛を緩和するためのマッサージの実施を促す。:正答。陣痛発作時の腰痛は分娩第1期の典型的な産痛で、腰部・仙骨部をさする、圧迫するといったマッサージで和らげることができます。特別な技術がいらず、付き添いの夫が担える方法です。看護師がやって見せて促すことで、次の3つを同時に図れます。Aさんの苦痛緩和、夫の戸惑いの解消、夫婦で出産体験を共有したいという希望の実現です。
覚えるポイント
- 分娩開始は、陣痛周期10分以内(または1時間に6回以上)の規則的な陣痛となった時点です。
- 胎児心拍数基線の正常範囲は110〜160 bpmです。
- 産痛の部位は、第1期が下腹部・腰部・仙骨部(T10〜L1)です。第2期はこれに会陰部・肛門部(陰部神経、S2〜S4)の痛みが加わります。
- 非薬物的な産痛緩和法には、マッサージ・圧迫法、温罨法、呼吸法、体位の工夫、リラクセーションがあります。マッサージの効果は、ゲートコントロール説と、安心感による緊張の緩和で説明できます。
- 付き添う家族への支援は、情報提供だけでなく「できる役割を具体的に示し、実際にやって見せる」ことが基本です。
- 「最も適切」を選ぶときは、まず母児の安全に問題がないことを確かめます。そのうえで、本人や家族の希望と訴えに直接応える対応を選びます。
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