111PM012|第111回 看護師国家試験 過去問
内分泌器官はどれか。
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正解: 3
正答
3.甲状腺
この問題のポイント
内分泌腺と外分泌腺の区別を問う基本問題です。判断の鍵は、分泌物が導管を通って体表や管腔へ出るのか、導管を通らずに血液中へ出るのか、という1点です。選択肢のうち、ホルモンを血中に放出するのは甲状腺だけです。残りの3つは、いずれも導管をもつ外分泌腺です。
解説
内分泌と外分泌の違い
腺とは、分泌を専門とする上皮細胞の集まりです。分泌物の出し方によって、次の2つに分けられます。
- 外分泌腺:導管(排出管)をもちます。分泌物を皮膚の表面や、消化管・気道などの管腔へ出します。分泌物は汗、涙、唾液、乳汁、消化液、皮脂など、出された場所で働くものです。
- 内分泌腺:導管をもちません。分泌物であるホルモンを周囲の毛細血管へ直接放出します。ホルモンは血流に乗って全身に運ばれ、受容体をもつ標的細胞だけに作用します。内分泌腺が血管に富んでいるのはこのためです。
「内」「外」は、体の内側か外側かという意味ではありません。「血液中(内部環境)へ出すか、外界につながる面へ導管で出すか」と理解してください。たとえば消化管の内腔は外界とつながった空間です。そのため、胃液や膵液の分泌は外分泌にあたります。
甲状腺のはたらき
甲状腺は頸部の前面にあり、甲状軟骨(のどぼとけ)の下方で気管の前に位置します。左右の葉と、それをつなぐ峡部からなります。
- 濾胞上皮細胞:ヨウ素を材料に甲状腺ホルモンを合成し、血中へ放出します。甲状腺ホルモンにはサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があります。
- T4とT3の関係:T4は末梢組織で、より作用の強いT3に変換されます。
- 甲状腺ホルモンの作用:基礎代謝を高めて熱産生を増やします。小児では成長や脳神経系の発達に欠かせません。
- 分泌の調節:視床下部のTRHと下垂体前葉のTSHが分泌を促します。血中の甲状腺ホルモンが増えるとTRHとTSHが抑えられ、分泌が減ります(負のフィードバック)。
- 傍濾胞細胞(C細胞):カルシトニンを分泌します。カルシトニンは骨吸収を抑え、血中カルシウム濃度を下げます。
甲状腺の背面には副甲状腺があります。副甲状腺はパラトルモン(PTH)を分泌して血中カルシウム濃度を上げる、別の内分泌腺です。カルシトニンとPTHは逆向きに働きます。
臨床では、次のような場面に結びつく知識です。
- 機能亢進症(バセドウ病):頻脈、発汗、体重減少
- 機能低下症:徐脈、寒がり、便秘、むくみ
- 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症):新生児マススクリーニングの対象
ほかの内分泌器官と注意点
代表的な内分泌腺は、下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵島(ランゲルハンス島)、卵巣、精巣です。
膵臓は、外分泌部と内分泌部の両方をもつ混合腺です。
- 外分泌部:腺房細胞が膵液をつくり、膵管から十二指腸へ出します。
- 内分泌部:ランゲルハンス島がインスリンやグルカゴンを血中へ出します。
また、腺として分類されない臓器もホルモンを分泌します。腎臓(エリスロポエチン、レニン)、心臓(心房性ナトリウム利尿ペプチド)、消化管(ガストリン、セクレチン)、脂肪組織(レプチン)、胎盤(hCG)などです。
注意したいのは、「ホルモンの作用を受けること」と「ホルモンを分泌すること」は別だという点です。乳腺は、下垂体前葉のプロラクチンで乳汁をつくり、下垂体後葉のオキシトシンで射乳を起こします。しかし乳腺自体が出すのは乳汁であり、乳管を通して体外へ出す外分泌腺です。
選択肢の確認
1.乳腺:乳汁を乳管から乳頭へ送り、体外へ分泌する外分泌腺です。発生の上では、皮膚の汗腺(アポクリン腺)が特殊化したものとされます。乳汁の産生にはプロラクチン、射乳にはオキシトシンが関わります。ただし、これらは下垂体から分泌されてこの腺に作用するホルモンです。この腺自身がホルモンを血中へ出すわけではありません。妊娠・授乳でホルモンと深く関わる印象から、内分泌腺と取り違えやすいので注意します。
2.涙腺:眼窩の上外側にある外分泌腺で、涙を導管から結膜嚢へ分泌します。涙は眼球の表面を潤し、角膜の乾燥を防ぎます。また、リゾチームなどの抗菌物質を含み、感染を防ぐ役割もあります。分泌された涙は、涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管を経て、下鼻道へ排出されます。泣くと鼻水が出るのはこのためです。
3.甲状腺:正答。導管を介さずにホルモンを血液中へ放出する内分泌器官です。濾胞上皮細胞はサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)を分泌し、全身の代謝を高めます。傍濾胞細胞はカルシトニンを分泌し、血中カルシウム濃度を下げます。T4とT3の分泌は、下垂体前葉のTSHによって調節されています。
4.唾液腺:耳下腺・顎下腺・舌下腺の3つの大きな腺と、口腔粘膜に散在する小さな腺からなる外分泌腺です。唾液は導管を通って口腔内へ分泌されます。唾液には、でんぷんを分解するアミラーゼ(プチアリン)、抗菌作用をもつリゾチーム、IgAが含まれます。唾液は消化、嚥下、口腔の自浄作用を担います。耳下腺管は、上顎第二大臼歯に向かい合う頬粘膜に開口します。消化器系の腺という点で膵臓と同じ仲間に見えますが、膵臓のようにホルモンを出す内分泌部はもたず、唾液を口腔へ出す外分泌だけを担います。
覚えるポイント
- 外分泌腺は導管があり、体表や管腔へ分泌します。例は汗腺、皮脂腺、涙腺、唾液腺、乳腺、膵臓の外分泌部、肝臓(胆汁)です。
- 内分泌腺は導管がなく、ホルモンを血中へ放出して標的細胞に作用させます。代表は下垂体、松果体、甲状腺、副甲状腺、副腎、膵島、卵巣、精巣です。
- 膵臓は、外分泌(膵液)と内分泌(インスリン、グルカゴン)の両方をもつ混合腺です。
- 甲状腺の分泌物は、T4・T3(代謝を高め、成長・発達を支える)とカルシトニン(血中カルシウムを下げる)です。副甲状腺のPTHは血中カルシウムを上げます。
- 「ホルモンの標的器官」と「ホルモンを分泌する器官」を混同しないようにします。乳腺はプロラクチンとオキシトシンの標的ですが、外分泌腺です。
- 腺以外にもホルモンを分泌する臓器があります。腎臓(エリスロポエチン、レニン)、心臓(ANP)、消化管、脂肪組織、胎盤です。
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