111PM011|第111回 看護師国家試験 過去問
左心室から全身に血液を送り出す血管はどれか。
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正解: 2
正答
2.大動脈
この問題のポイント
心臓の4つの部屋と、それぞれに出入りする血管の対応を問う基礎問題です。手がかりは「左心室から」「全身に」「送り出す」の3語です。心臓から送り出す血管は動脈であり、全身へ向かう経路は体循環であると結び付ければ、大動脈に絞り込めます。動脈と静脈は、血液に含まれる酸素の量ではなく血流の向きで区別します。この定義を押さえておけば、肺動脈・肺静脈を含む問題にも対応できます。
解説
動脈と静脈の定義
動脈は心臓から出ていく血液を運ぶ血管、静脈は心臓へ戻る血液を運ぶ血管です。
一方、次の2つは血液の性状を表す言葉で、血管の名前とは別の基準です。
- 動脈血:酸素を多く含む血液
- 静脈血:酸素が少なく二酸化炭素を多く含む血液
体循環では動脈に動脈血が流れます。しかし肺循環では、血管の名称と流れる血液が逆になります。
体循環と肺循環の経路
循環は、血液を送り出す心室から始まり、血液を受け入れる心房で終わる経路として定義されます。
- 体循環(大循環):左心室 →(大動脈弁)→ 大動脈 → 全身の動脈 → 毛細血管 → 静脈 → 上大静脈・下大静脈 → 右心房
- 肺循環(小循環):右心室 →(肺動脈弁)→ 肺動脈 → 肺の毛細血管 → 肺静脈 → 左心房
2つの循環は心臓の中でつながっています。体循環を終えて右心房に戻った血液は、三尖弁を通って右心室へ入り、肺循環へ送り出されます。肺循環を終えて左心房に戻った血液は、僧帽弁を通って左心室へ入り、再び体循環へ送り出されます。
体循環では、全身の毛細血管で組織に酸素と栄養を渡し、二酸化炭素と老廃物を受け取ります。そのため動脈血は静脈血となって右心房へ戻ります。肺循環では、肺胞と毛細血管の間でガス交換が行われ、静脈血が動脈血になって左心房へ戻ります。したがって、肺動脈には静脈血、肺静脈には動脈血が流れます。
問題文への当てはめ
- 「送り出す」という条件から、心臓から出ていく血管、つまり動脈に絞られます。選択肢では大動脈と肺動脈が該当します。
- 「左心室から」という条件から、右心室から出る肺動脈は外れます。
- 「全身に」は体循環を示しています。左心室から出た血液が体循環で最初に通る血管が大動脈です。
以上から、正答は大動脈です。
左心室と大動脈の特徴
左心室は全身へ血液を送るため、高い圧を生み出す必要があります。収縮期の内圧は約120mmHgです。壁は心臓の中で最も厚く、右心室の壁の約3倍あります。右心室は血管抵抗の小さい肺へ送り出すため低圧で、収縮期の内圧は約25mmHgです。
大動脈は次の順に走行します。
- 上行大動脈:起始部から左右の冠動脈が分かれます。
- 大動脈弓:腕頭動脈・左総頸動脈・左鎖骨下動脈が分かれます。
- 下行大動脈:胸大動脈、腹大動脈と続き、第4腰椎付近で左右の総腸骨動脈に分かれます。
大動脈は弾性線維に富む弾性動脈です。収縮期に伸びて血液をため、拡張期に縮んで送り出すことで、血流を途切れにくくしています。左心室と大動脈の間には大動脈弁があり、拡張期に血液が左心室へ逆流するのを防いでいます。
臨床とのつながり
この経路を理解しておくと、症状がなぜ起こるのかを説明できます。
- 左心不全:左心室の拍出が落ちると、圧の上昇が左心房から肺静脈、肺の毛細血管へとさかのぼり、肺うっ血が起こります。そのため呼吸困難や起座呼吸が現れます。
- 右心不全:右心室の拍出が落ちると、右心房へ血液が戻りにくくなり、大静脈から全身の静脈に血液がうっ滞します。そのため頸静脈怒張、下肢の浮腫、肝腫大が現れます。
- 肺血栓塞栓症:下肢の深部静脈にできた血栓が、下大静脈 → 右心房 → 右心室と流れ、肺動脈に詰まります。
選択肢の確認
1.大静脈:上大静脈と下大静脈の総称で、全身から戻ってきた静脈血を右心房へ運ぶ血管です。つまり心臓へ「戻る」血管です。左心室とは直接つながっておらず、血液を送り出す血管ではありません。名前に「大」が付くため選択肢2と取り違えやすいので、「静脈=心臓へ戻る」と確認して判断します。なお、右心不全で血液がうっ滞するのは、この血管を含む全身の静脈側です。
2.大動脈:正答。左心室から大動脈弁を経て出る人体最大の動脈です。左心室から出た血液が体循環で最初に通る血管であり、全身へ動脈血を送り出します。起始部からは冠動脈が分かれ、心筋自体にも血液を送っています。
3.肺静脈:肺でガス交換を終えた動脈血を左心房へ戻す、心臓へ「戻る」血管です。通常は左右2本ずつ、計4本が左心房に入ります。静脈でありながら動脈血が流れるため、「酸素の多い血液を運ぶ血管=送り出す血管」と誤解しやすい選択肢です。「肺から左心房へ動脈血を運ぶ血管」と問われれば正答になります。
4.肺動脈:右心室から出て、全身から戻った静脈血を肺へ送る血管です。心臓から出ていく血管という点では条件の一部を満たします。しかし、起点は左心室ではなく右心室で、送り先も全身ではなく肺です。「右心室から肺へ血液を送り出す血管」と問われれば正答になります。「左」と「右」、「全身」と「肺」を取り違えないことが大切です。
覚えるポイント
- 動脈は心臓から出る血管、静脈は心臓へ戻る血管です。酸素の多さではなく、血流の向きで決まります。
- 体循環は左心室 → 大動脈 → 全身 → 上・下大静脈 → 右心房の順です。肺循環は右心室 → 肺動脈 → 肺 → 肺静脈 → 左心房の順です。どちらの循環も心室から始まり、心房で終わります。
- 肺循環では血管の名称と流れる血液が逆になり、肺動脈には静脈血、肺静脈には動脈血が流れます。
- 房室弁は、右が三尖弁、左が僧帽弁(二尖弁)です。右心室の出口には肺動脈弁、左心室の出口には大動脈弁があります。
- 左心室の壁は最も厚く、収縮期圧は約120mmHgです。右心室の収縮期圧は約25mmHgと低圧です。
- 同じ定義は胎児循環にも当てはまります。臍静脈は胎盤から胎児へ酸素の多い血液を運び、臍動脈は胎児から胎盤へ酸素の少ない血液を運びます。
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