111PM013|第111回 看護師国家試験 過去問

呼吸中枢があるのはどれか。

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正解: 4

正答

4.脳幹

この問題のポイント

呼吸のリズムを自動的に生み出す呼吸中枢がどこにあるかを問う、人体の構造と機能の基本問題です。眠っているときや意識がないときにも呼吸が続くことから、生命維持の中枢が集まる部位を考えると答えにたどり着けます。間脳・小脳・大脳・脳幹それぞれの主な機能を区別して覚えているかが鍵です。

解説

脳幹と呼吸中枢

脳幹は中脳・橋・延髄からなります。解剖学の分類によっては間脳を含めて広義の脳幹とすることもあります。この問題では間脳が別の選択肢になっているため、脳幹は中脳・橋・延髄を指すと考えます。

呼吸中枢の中心は延髄にあり、吸息と呼息を周期的に切り替えるリズムを生み出します。橋には呼吸調節中枢があり、延髄のリズムを調整して吸息から呼息への切り替えを滑らかにしています。延髄からの指令は脊髄を下り、横隔神経(第3〜5頸髄から出る)を通って横隔膜を、肋間神経を通って肋間筋を収縮させます。そのため高位の頸髄損傷では、横隔膜が麻痺して呼吸障害が起こることがあります。

呼吸中枢に届く情報

呼吸中枢は、次のような情報を受けて換気量を調節しています。

  • 中枢化学受容器:延髄の腹側表面付近にあります。動脈血の二酸化炭素分圧(PaCO2)が上がると、CO2が血液脳関門を通って脳脊髄液の水素イオン濃度を高めます。これを感知して換気を増やします。ふだんの呼吸調節で最も強く働くのは、このCO2への反応です。
  • 末梢化学受容器:頸動脈小体(舌咽神経)と大動脈小体(迷走神経)です。主に動脈血酸素分圧(PaO2)の低下を感知して呼吸を促します。
  • 肺の伸展受容器:肺が膨らむと迷走神経を介して吸息が抑えられます(ヘーリング・ブロイエル反射)。
  • 大脳皮質:意識して息を止めたり深呼吸したりできます。ただし息こらえを続けてCO2がたまると、自分の意思に反して呼吸が再開します。自動的な調節を担っているのは脳幹だからです。

臨床での意味

慢性的にPaCO2が高い患者(COPDなど)では、中枢化学受容器のCO2への反応が鈍くなっています。そのため、低酸素による末梢化学受容器からの刺激が呼吸の駆動に大きく関わります。この状態で高濃度の酸素を不用意に投与すると換気が抑えられ、CO2がさらにたまって意識障害などを起こすCO2ナルコーシスを招くおそれがあります。酸素は指示に従って低流量から始め、SpO2だけでなく意識状態や呼吸状態も観察します。

延髄には呼吸中枢のほか、循環中枢、嚥下中枢、嘔吐中枢、咳嗽中枢など生命維持に直結する中枢が集まっています。頭蓋内圧亢進から脳ヘルニアが進んで脳幹が圧迫されると、瞳孔不同、血圧上昇と徐脈(クッシング現象)、呼吸パターンの乱れが現れ、やがて呼吸が停止します。意識障害のある患者で呼吸の型や回数を注意深く観察するのは、脳幹の状態を知る重要な手がかりになるからです。脳死判定で脳幹反射の消失と自発呼吸の消失を確認するのも、呼吸中枢が脳幹にあるためです。

選択肢の確認

1.間脳:視床と視床下部からなる部位です。視床は嗅覚以外の感覚情報を皮質へ中継します。視床下部は体温調節、摂食・満腹、飲水(口渇)、自律神経の統合、下垂体を介した内分泌調節の中枢です。いずれも重要な恒常性維持の中枢ですが、呼吸のリズムを作る中枢はありません。「生命維持に関わる中枢」という共通点から体温調節中枢と混同しやすいので、呼吸中枢は延髄・橋と区別して覚えます。

2.小脳:運動の協調、身体の平衡、筋緊張の調節を担う部位です。障害されると運動失調、酩酊様歩行、企図振戦、構音障害などが現れます。呼吸のリズムを生み出す中枢はありません。平衡や運動に関する問題で問われる部位と整理しておきます。

3.大脳:随意運動、感覚の認知、言語、思考・判断などの高次機能を担う部位です。意識的に息を止めたり深呼吸したりできるのは皮質からの指令によるものです。しかし、睡眠中や意識障害時にも続く自動的な呼吸のリズムを作っているのはこの部位ではありません。「呼吸を意識的に変えられる」という点から取り違えやすい選択肢です。

4.脳幹:正答。中脳・橋・延髄からなり、延髄に呼吸のリズムを生み出す呼吸中枢、橋に呼吸調節中枢があります。延髄には循環中枢、嚥下中枢、嘔吐中枢、咳嗽中枢もあり、障害されると自発呼吸や循環の維持が困難になります。

覚えるポイント

  • 呼吸中枢は脳幹にあり、リズムを作るのは延髄、それを調整するのが橋の呼吸調節中枢です。
  • 延髄には呼吸・循環・嚥下・嘔吐・咳嗽の中枢があります。中脳は対光反射の中枢、橋には排尿中枢もあります。
  • 視床下部は体温・摂食と満腹・飲水・自律神経・内分泌の中枢、小脳は運動の協調・平衡・筋緊張の調節を担います。
  • 中枢化学受容器はPaCO2の上昇(脳脊髄液の水素イオン濃度の上昇)を感知します。末梢化学受容器(頸動脈小体・大動脈小体)は主にPaO2の低下を感知します。
  • 慢性高CO2血症の患者に高濃度酸素を投与すると、CO2ナルコーシスの危険があります。
  • 脳ヘルニアによる脳幹圧迫では、瞳孔不同、クッシング現象、呼吸パターンの異常を経て呼吸停止に至ります。

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