111PM044|第111回 看護師国家試験 過去問
中心静脈栄養法を受けている患者の看護について適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.カテーテルの固定位置を毎日確認する。
この問題のポイント
中心静脈栄養法(TPN)を受けている患者について、中心静脈カテーテルを留置している間の管理を問う問題です。留置中に特に注意すべき合併症は、カテーテル関連血流感染とカテーテルの位置のずれ・事故抜去です。これらを防ぐために看護師が毎日何を観察し、何をしてはいけないかを考えると、正答を選べます。あわせて、刺入部は「観察できるように」覆うこと、消毒は「ドレッシング交換時に」行うこと、抗菌薬は「予防には使わない」ことも押さえます。
解説
問題文には具体的な場面の設定がなく、中心静脈カテーテル留置中の標準的な管理を問うています。起こりやすい合併症と、それぞれの予防策を整理して判断します。
中心静脈栄養法とは
鎖骨下静脈・内頸静脈・大腿静脈、または上腕の静脈(PICC:末梢挿入型中心静脈カテーテル)からカテーテルを入れ、先端を上大静脈などの中心静脈に置きます。そこから、高濃度のブドウ糖・アミノ酸などを含む高カロリー輸液を投与する方法です。
末梢静脈から投与できる輸液の浸透圧比は、おおむね3程度までとされています。それより高張な輸液は静脈炎を起こしやすいため、血流が多く輸液がすぐに薄まる中心静脈を使います。対象は、消化管が使えない患者や、経口・経腸栄養だけでは必要量をとれない状態が長く続く患者です。
挿入時には気胸や動脈穿刺などが起こることがあります。そのため挿入後は、胸部エックス線撮影で先端の位置と気胸の有無を確認します。
留置中に注意する合併症
- カテーテル関連血流感染:主に、刺入部の皮膚の細菌がカテーテルの外側を伝って、または接続部から内腔を通って侵入して起こります。発熱や悪寒戦慄がみられ、刺入部の発赤・腫脹・圧痛・排膿を伴うこともあります。ただし、刺入部に所見がないことも少なくありません。留置中に原因のわからない発熱があれば、まずこれを疑います。
- 位置のずれ・事故抜去:体動、固定のゆるみ、せん妄や認知機能低下による自己抜去などで起こります。抜けかけて浅くなると、先端が血流の少ない末梢側の静脈や血管外に移り、静脈炎・血栓・輸液の血管外漏出の原因になります。完全に抜けると、出血や空気塞栓の危険があります。逆に深く入り込むと、先端が右心房を刺激して不整脈を起こすことがあります。
- 閉塞・血栓:閉塞は輸液の滴下不良として、血栓は挿入側の腕や頸部などの腫脹として現れることがあります。
- 代謝性合併症:開始初期の高血糖、急な中止による低血糖、ビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスがあります。長く低栄養だった患者では、リフィーディング症候群にも注意します。
固定位置の確認が重要な理由
カテーテルの先端位置は挿入時に確認されていますが、その後の体動やテープのはがれで変わり得ます。
一般的な中心静脈カテーテルには、先端からの長さを示す目盛りがあります。そのため、刺入部の位置で読む値は、体内に入っている長さ(挿入長)です。挿入時にはこの値を「○cm固定」のように記録します。毎日次の点を確認し、記録と比べます。
- 刺入部の位置にあるカテーテルの目盛り(挿入長)が、記録した値と変わっていないか
- 固定テープや縫合糸にゆるみ・はがれがないか、体外部分のカテーテルが引っ張られたり折れ曲がったりしていないか
PICCなどでは、刺入部からハブまでの長さ(体外長)を測って比べる方法もあります。これは目盛りで読む挿入長とは別の指標なので、混同しないようにします。
ずれを見つけても、自己判断で押し戻してはいけません。体外に出ていた部分は清潔ではなく、押し込むと汚染された部分を血管内に入れることになるためです。医師に報告し、先端位置の確認(胸部エックス線など)や対応について指示を受けます。
感染予防の基本
- 刺入部:透明な滅菌フィルムドレッシングで覆い、毎日観察します。交換の目安は、透明フィルムで週1回程度、ガーゼで2日ごとです。汚染・湿潤・はがれがあれば、その都度交換します。消毒は交換時に、クロルヘキシジンアルコールやポビドンヨードなどで行います。
- 接続部:操作前に手指衛生を行い、接続部をアルコール綿などで消毒します。閉鎖式の輸液回路を使い、回路を開放する回数を最小限にします。
- 挿入時:帽子・マスク・滅菌ガウン・滅菌手袋・大きな滅菌ドレープを用いるマキシマルバリアプリコーションで行います。
- 抜去の判断:カテーテルが必要かどうかを毎日評価し、不要になれば速やかに抜去します。
臨床では、清拭・更衣・体位変換のときにカテーテルを引っ張らないよう注意し、シャワー浴では刺入部を防水フィルムで保護します。自己抜去の危険がある患者では、固定方法や寝衣を工夫します。
選択肢の確認
1.カテーテルの刺入部は見えないように覆う。:刺入部は、発赤・腫脹・排膿などの感染徴候や、カテーテルの抜けかけがないかを毎日観察する必要があります。そのため、透明な滅菌フィルムドレッシングで覆い、はがさずに外から見えるようにするのが基本です。刺入部を隠してしまうと異常の発見が遅れるため、不適切です。出血・浸出液や発汗が多いときはガーゼを使うこともありますが、目的は隠すことではありません。その場合も2日ごとを目安に交換し、観察の機会を確保します。
2.カテーテル刺入部を定期的に消毒する。:刺入部の消毒は、決まった間隔ごとに単独で行う処置ではなく、ドレッシング交換のときに行うものです。透明フィルムの交換は週1回程度が目安なので、結果的に消毒も一定の間隔になります。しかし、「定期的に消毒すること」自体が管理の目的ではありません。汚染・湿潤・はがれがあれば、予定を待たずに交換・消毒します。反対に、異常がないのに消毒のためだけにドレッシングをはがすと、刺入部が外にさらされて汚染の危険が高まります。皮膚の損傷や事故抜去にもつながるため、適切とはいえません。
3.カテーテルの固定位置を毎日確認する。:正答。刺入部の位置にあるカテーテルの目盛り(挿入長)が、挿入時に記録した「○cm固定」の値と変わっていないかを毎日確認します。あわせて、固定テープや縫合糸にゆるみ・はがれがないかも確認します。抜けかけや入り込みを早く見つけることで、静脈炎・血管外漏出・不整脈・事故抜去などを防げます。ずれを見つけたら押し戻さず、医師に報告します。
4.予防的に抗菌薬の投与を行う。:抗菌薬を予防的に全身投与しても、カテーテル関連血流感染を防ぐ効果は示されていません。かえって耐性菌の出現やクロストリディオイデス・ディフィシル感染症などを招くおそれがあるため、推奨されていません。刺入部に抗菌薬軟膏を塗ることも、耐性菌や真菌感染を助長するおそれがあるため、原則として行いません。感染は、無菌操作、刺入部と接続部の管理、不要なカテーテルの早期抜去によって防ぎます。抗菌薬は、感染が疑われたときに血液培養を採取したうえで「治療」として使うものです。「予防」とは区別して覚えます。
覚えるポイント
- 中心静脈カテーテル留置中は、血流感染と位置のずれ・事故抜去に特に注意します。原因のわからない発熱では、まずカテーテル感染を疑います。挿入後は胸部エックス線で先端位置と気胸の有無を確認します。
- 刺入部は透明フィルムで覆い、毎日観察します。交換の目安は透明フィルムで週1回程度、ガーゼで2日ごとです。汚染・湿潤・はがれがあればその都度交換し、消毒は交換時に行います。
- 固定状態と刺入部の目盛り(挿入長)を毎日確認し、記録と比べます。一般的なカテーテルの目盛りは先端からの長さを示すので、刺入部で読む値は体内に入っている長さです。刺入部からハブまでの長さである体外長とは、別の指標として区別します。ずれていても押し戻さず、医師に報告します。
- 予防的な抗菌薬投与や、刺入部への抗菌薬軟膏は行いません。感染予防の柱は、挿入時のマキシマルバリアプリコーション、接続部の消毒と閉鎖式回路、不要なカテーテルの早期抜去です。
- 代謝性合併症として、開始時の高血糖、急な中止による低血糖、ビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシス、リフィーディング症候群を押さえておきます。
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