111PM062|第111回 看護師国家試験 過去問
性周期とホルモンについて正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.排卵直前に黄体形成ホルモン〈LH〉値が高くなる。
この問題のポイント
性周期を、下垂体ホルモン・卵巣の変化・子宮内膜の変化・基礎体温の4つの軸で対応づけて理解しているかを問う問題です。判断の鍵は2点あります。1つは排卵の引き金がLHの急上昇(LHサージ)であることです。もう1つは、子宮内膜を増殖させるのがエストロゲン、内膜を分泌期に変えて基礎体温を上げるのがプロゲステロンであることです。
解説
4つの選択肢は、いずれも「どの時期に」「どのホルモンが」「何を起こすか」の組み合わせを述べています。時期・ホルモン・作用を正しく対応づけられれば、誤った組み合わせを見抜けます。
性周期は、視床下部・下垂体前葉・卵巣の連携で調節されています。
- 視床下部から性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されます。
- GnRHを受けて、下垂体前葉から卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌されます。
- FSHとLHの作用で、卵巣からエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。
卵巣の周期は卵胞期・排卵期・黄体期に分かれます。子宮内膜の周期は月経期・増殖期・分泌期に分かれます。月経期と増殖期が卵胞期に、分泌期が黄体期に対応します。
周期の前半(卵胞期:月経期・増殖期)
月経が始まるころからFSHの作用で卵胞が発育し、発育卵胞がエストロゲンを分泌します。エストロゲンには次の作用があります。
- 子宮内膜を増殖させて厚くします。
- 頸管粘液を増やし、透明で糸を引く(牽糸性の高い)性状にして、精子を通りやすくします。
この時期はプロゲステロンがほとんど分泌されないため、基礎体温は低温相です。
排卵(LHサージ)
エストロゲンはふだん、視床下部と下垂体前葉に抑制的に働きます(負のフィードバック)。ところが成熟卵胞からのエストロゲンが高い濃度で一定時間続くと、LHの分泌を強く促す正のフィードバックに切り替わります。その結果、LHが短時間に大量に放出されます。これがLHサージで、FSHも小さなピークを示します。
LHサージが始まってからおよそ36時間後に、成熟卵胞が破れて卵子が放出されます。つまりLHは排卵の直前に最も高くなり、選択肢4はこの事実を述べています。LHは排卵を起こすだけでなく、排卵後の卵胞を黄体に変える(黄体化)働きももちます。これが「黄体形成ホルモン」という名称の由来です。
周期の後半(黄体期:分泌期)
排卵後の卵胞は黄体になり、プロゲステロンとエストロゲンを分泌します。プロゲステロンには次の作用があります。
- エストロゲンで厚くなった内膜を、腺の分泌が盛んで受精卵が着床しやすい分泌期内膜に変えます。
- 子宮筋の収縮を抑えます。
- 頸管粘液を粘稠にし、精子を通りにくくします。
- 視床下部の体温調節中枢に作用して基礎体温を上げます。
このため黄体期は高温相となり、低温相との差は0.3〜0.5℃程度です。
黄体の寿命は約14日です。妊娠が成立しなければ黄体は退縮し、エストロゲンとプロゲステロンが急に減ります。すると内膜の機能層が剝がれ落ちて月経になり、FSHが再び上昇して次の卵胞が育ち始めます。妊娠が成立した場合は、絨毛から分泌されるhCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が黄体を維持するため、高温相が続きます。
実践での活用
- 市販の排卵日予測検査薬は、尿中のLHの上昇をとらえて排卵が近いことを知らせます。
- 基礎体温表が低温相と高温相の二相性を示せば、排卵があったと推定できます。一相性なら無排卵を疑います。
- 月経周期の長さの個人差は、主に卵胞期の長さの違いによります。黄体期はほぼ14日で一定のため、周期が規則的な人では「次回月経予定日の約14日前」が排卵の目安になります。
選択肢の確認
1.増殖期は基礎体温が上昇する。:増殖期は卵巣の周期でいえば卵胞期に含まれ、プロゲステロンがほとんど分泌されないため基礎体温は低温相です。基礎体温が上昇して高温相になるのは、排卵後に黄体からプロゲステロンが分泌される分泌期(黄体期)です。増殖期にはエストロゲンが増えますが、エストロゲンには基礎体温を上げる作用はありません。体温を上げるのは視床下部の体温調節中枢に作用するプロゲステロンであり、両者を取り違えないようにします。
2.プロラクチンによって排卵が起こる。:排卵を直接引き起こすのは、下垂体前葉から分泌されるLHの急上昇(LHサージ)であり、プロラクチンではありません。プロラクチンも下垂体前葉から分泌されますが、乳腺に働いて乳汁の産生を促すホルモンです。プロラクチンが高値になるとGnRHの分泌が抑えられ、排卵はむしろ抑制されます。授乳中に月経が戻りにくいのはこのためです。病的な高プロラクチン血症では無月経や乳汁漏出が起こります。原因には、プロラクチン産生下垂体腺腫のほか、抗精神病薬などドパミンの働きを遮る薬の副作用があります。主語が「LH(黄体形成ホルモン)」であれば正しい記述になります。
3.プロゲステロンは子宮内膜の増殖を促進する。:子宮内膜を増殖させて厚くするのは、エストロゲン(卵胞ホルモン)の作用です。プロゲステロン(黄体ホルモン)は内膜の増殖をそれ以上進ませず、増殖した内膜を着床に適した分泌期内膜に変化させます。主語が「エストロゲン」であれば正しい記述になります。プロゲステロンが内膜の過剰な増殖を抑える働きは、治療にも利用されています。子宮のある女性にエストロゲンを補充する場合は、子宮内膜増殖症や子宮体癌を防ぐために黄体ホルモン製剤を併用します。
4.排卵直前に黄体形成ホルモン〈LH〉値が高くなる。:正答。成熟卵胞から分泌される高濃度のエストロゲンが正のフィードバックを起こし、下垂体前葉からLHが急激に大量分泌されます(LHサージ)。サージ開始からおよそ36時間後に排卵が起こるため、LHは排卵の直前に最も高い値を示します。
覚えるポイント
- 増殖期(卵胞期)はエストロゲン優位で低温相、分泌期(黄体期)はプロゲステロン優位で高温相です。基礎体温を上げるのはプロゲステロンで、エストロゲンではありません。
- 内膜を増殖させるのはエストロゲンです。増殖した内膜を着床に適した分泌期内膜に変えるのはプロゲステロンです。
- 排卵の引き金は、エストロゲンの正のフィードバックによるLHサージです。サージ開始からおよそ36時間後に排卵します。
- プロラクチン(下垂体前葉)は乳汁産生、オキシトシン(下垂体後葉)は射乳と子宮収縮を担います。高プロラクチン血症はGnRHを抑えて排卵を妨げ、無月経や乳汁漏出を起こします。
- 黄体期はほぼ14日で一定です。基礎体温の二相性は排卵ありを示し、妊娠が成立するとhCGが黄体を維持して高温相が続きます。
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