111PM075|第111回 看護師国家試験 過去問
災害拠点病院の説明で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.広域搬送の体制を備えている。
この問題のポイント
災害拠点病院の制度について、「誰が指定するか」「いつ指定するか」「どんな機能を持つか」「どの単位で何か所置くか」を問う問題です。押さえる点は、指定するのは都道府県であること、指定は平時に行うこと、基幹は都道府県単位で地域は二次医療圏単位であることです。この3点が分かれば、機能として広域搬送体制を挙げた選択肢3が正答として残ります。
解説
制度の成り立ちと位置づけ
1995年の阪神・淡路大震災では、被災地内の病院が建物の損壊やライフラインの途絶で機能を失いました。重症患者を被災地外へ運ぶ仕組みも整っていませんでした。そのため、平時の医療なら救えたはずの命、いわゆる「防ぎえた災害死」が多く生じました。この反省から、1996年に厚生省(当時)の通知によって災害拠点病院の整備が始まりました。
医療法に基づく医療計画では、「災害時における医療」が5事業の一つに位置づけられています。都道府県は医療計画の中で災害拠点病院を指定し、整備します。国は通知で指定要件を示す立場で、個々の病院を指定するのは都道府県です。
指定は平時に行う
災害拠点病院は、災害が起きる前にあらかじめ指定されます。耐震化、自家発電、備蓄、職員の訓練は、災害が起きてからでは間に合いません。平時から要件を満たし、維持しておくことが制度の前提です。
主な指定要件
- 24時間緊急対応でき、災害時に被災地内の傷病者の受入れと搬出を行える体制
- ヘリコプターで被災地内外の病院間を結び、傷病者や医療物資を往復搬送できる機能。原則として病院敷地内にヘリポートを持つ
- DMAT(災害派遣医療チーム)を保有し、派遣できる体制と緊急車両
- 救命救急センターまたは第二次救急医療機関であること
- 診療機能を持つ施設の耐震構造、自家発電設備と3日分程度の燃料、診療に必要な水の確保
- 食料・飲料水・医薬品などの3日分程度の備蓄
- 衛星電話などの通信手段と、広域災害救急医療情報システム(EMIS)への参加
- 業務継続計画(BCP)の整備と、それに基づく訓練
広域搬送との関係
大規模災害では、被災地内の医療機関だけでは重症患者を治療しきれません。そこで、被災地内でトリアージと安定化処置を行った重症患者を、被災地外の医療機関へ運んで治療します。災害拠点病院は、被災地内では患者を搬出する拠点となり、被災地外では患者を受け入れる拠点となります。
さらに規模の大きい広域医療搬送では、空港などに航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)を設けます。そこを経由し、自衛隊機などで全国へ患者を運び、DMATがこの活動を担います。災害医療の基本原則CSCATTTの最後のT(Transport:搬送)を支える仕組みといえます。
設置の単位
- 基幹災害拠点病院:原則として各都道府県に1か所。地域災害拠点病院の機能に加え、災害医療に関する研修機能を持ち、県内の中心となります。
- 地域災害拠点病院:原則として二次医療圏ごとに1か所。
看護実践とのつながり
災害拠点病院の看護師には、平時から次の役割が求められます。
- 多数傷病者受入れ訓練への参加
- 資器材や備蓄品の点検
- BCPの理解
- トリアージの習熟
搬出時には、ライン類やドレーンの固定、搬送中の急変に備えた準備、搬送先への情報伝達も看護の重要な役割です。
選択肢の確認
1.国が指定する。:災害拠点病院を指定するのは国ではなく都道府県です。国(厚生労働省)は通知で指定要件を示し、DMATの養成などを担いますが、個々の病院の指定は医療計画を策定する都道府県が行います。ほかの病院類型の指定・承認主体と混同しやすい点に注意します。特定機能病院は厚生労働大臣の承認、がん診療連携拠点病院は都道府県の推薦に基づき厚生労働大臣が指定します。一方、地域医療支援病院は都道府県知事の承認です。「拠点病院」という名称だけで国の指定と判断しないようにしましょう。
2.災害発生時に指定される。:災害拠点病院は平時にあらかじめ指定され、要件を満たす体制を維持しておくものです。災害が起きてから指定されるものではありません。耐震化、自家発電、3日分程度の備蓄、訓練、BCPの整備は、事前の準備があって初めて機能します。災害発生後に行われるのは、災害救助法の適用や救護所・SCUの開設などです。これらと混同しないようにします。
3.広域搬送の体制を備えている。:正答。災害拠点病院には、災害時に傷病者を受け入れるだけでなく、被災地外へ搬出できる体制が求められます。原則として敷地内にヘリポートを持ち、ヘリコプターで傷病者や医療物資を往復搬送できる機能が指定要件に含まれます。DMATの保有と派遣体制、緊急車両の保有もあわせて、広域搬送を支える中核の役割を担います。
4.地域災害拠点病院は各都道府県に1か所設置される。:原則として各都道府県に1か所置かれるのは基幹災害拠点病院で、地域災害拠点病院は原則として二次医療圏ごとに1か所です。二次医療圏は複数の市町村からなり、一般的な入院医療を完結させる単位で、1つの都道府県に通常複数あります。そのため、地域災害拠点病院も各都道府県に複数存在します。この選択肢は、基幹と地域の設置単位を入れ替えた引っかけです。
覚えるポイント
- 災害拠点病院は、都道府県が平時に指定します。阪神・淡路大震災の教訓から1996年に整備が始まりました。
- 設置単位は、基幹災害拠点病院が各都道府県に原則1か所(研修機能を持つ)、地域災害拠点病院が二次医療圏ごとに原則1か所です。
- 要件のキーワードは、24時間対応、受入れと搬出、ヘリポート、DMAT、耐震構造、自家発電と3日分程度の燃料、水の確保、3日分程度の備蓄、EMIS、BCPです。
- 広域医療搬送は、被災地内で対応しきれない重症患者を被災地外へ運ぶ仕組みです。空港などに設けるSCUを経由し、DMATが担います。
- 指定・承認の主体を区別しましょう。特定機能病院は厚生労働大臣の承認、地域医療支援病院は都道府県知事の承認、がん診療連携拠点病院は厚生労働大臣の指定、災害拠点病院は都道府県の指定です。
- 医療計画の「災害時における医療」は、出題当時は5事業の一つでした。現在は、2024年度からの第8次医療計画で新興感染症への対応が加わり、6事業となっています。
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