111PM076|第111回 看護師国家試験 過去問
平成27年(2015年)時点での世界の三大感染症に入るのはどれか。
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正解: 2
正答
2.マラリア malaria
この問題のポイント
国際社会が重点的に対策を進めてきた「世界の三大感染症」を知っているかを問う問題です。三大感染症はHIV感染症/エイズ、結核、マラリアの3つで、選択肢のなかで該当するのはマラリアだけです。残りの3つは、根絶された感染症(天然痘)や、ワクチンで根絶・排除を目指している感染症(ポリオ、麻疹)です。三大感染症と区別して整理しておきましょう。
解説
三大感染症とは
世界の三大感染症は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症・後天性免疫不全症候群(エイズ)、結核、マラリアの3つです。いずれも主に低・中所得国で多くの患者と死者を出しています。働き手や子どもの命を奪うため、貧困や教育・経済の停滞とも深く結びついてきました。
国際社会はこの3疾患を重点課題としてきました。2002年には、対策の資金を集めて配分する**世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)**が設立されています。設立のきっかけの一つは、日本が議長国を務めた2000年の九州・沖縄サミットで、感染症対策が主要議題として取り上げられたことです。
「2015年時点」の意味
問題文の「平成27年(2015年)時点」という条件にも意味があります。2015年は、2000年に定められた**ミレニアム開発目標(MDGs)の達成期限の年です。同年9月の国連サミットでは、その後継となる持続可能な開発目標(SDGs)**が採択されました。
- MDGsの目標6は「HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止」でした。
- SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.3では、2030年までにエイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病の流行を終わらせることが掲げられています。
つまり2015年の時点でも、3疾患は国際目標のなかで名指しされる課題でした。時点が明示されているのは、その後の新型コロナウイルス感染症の世界的流行などで状況が変わりうるため、判断の基準を固定したものと考えられます。
また、3疾患には「有効なワクチンで制圧できていない」という共通点があります。
- HIVには予防ワクチンがありません。
- 結核のBCGは乳幼児の重症結核を防ぐことが主な目的で、成人の肺結核を防ぐ効果は限られます。
- マラリアは、2021年になってWHOが初めて流行地の小児へのワクチン使用を推奨しました。
このため、診断・治療・蚊帳の配布などの予防体制を整えることに、国際的な資金が必要とされてきました。
マラリアの基礎知識
マラリアは、**ハマダラカ(雌)**の吸血によって媒介されるマラリア原虫の感染症です。原虫は肝細胞で増えたあと赤血球に入り込んで増殖し、赤血球が壊れるたびに発熱発作が起こります。あわせて貧血や脾腫もみられます。
ヒトに感染する主な種は熱帯熱、三日熱、四日熱、卵形の4種です。発熱の周期は、三日熱と卵形がおよそ48時間ごと、四日熱がおよそ72時間ごとで、熱帯熱は不規則です。特に熱帯熱マラリアは重症化しやすく、脳マラリア(意識障害)、重症貧血、腎不全などを起こして短期間で死に至ることがあります。患者と死亡の大部分はサハラ以南のアフリカに集中しており、5歳未満の子どもが多く犠牲になっています。
日本では土着のマラリアはみられなくなっており、流行地から帰国・入国した人が発症する輸入感染症として問題になります。感染症法では四類感染症に分類され、診断した医師は直ちに届け出ます。臨床や渡航外来では、発熱患者に渡航歴(行き先・時期)を必ず確認することが早期診断と救命につながります。
選択肢の確認
1.ポリオ〈急性灰白髄炎〉 poliomyelitis:ポリオウイルスが経口感染し、感染者のごく一部で脊髄前角の運動神経細胞が障害されて弛緩性麻痺を起こす感染症です。三大感染症には含まれません。WHOなどによる世界ポリオ根絶計画で患者は激減し、2015年時点で野生株の常在国はパキスタンやアフガニスタンなどごく一部に限られていました。日本では1980年を最後に野生株による患者は出ていません。現在は、不活化ポリオワクチンを含む混合ワクチンが定期接種で使われています。感染症法では二類感染症です。「根絶に近づいている感染症」として三大感染症と区別します。
2.マラリア malaria:正答。HIV感染症/エイズ、結核とともに世界の三大感染症の一つです。ハマダラカが媒介する原虫感染症で、サハラ以南のアフリカを中心に多くの死亡を出しており、MDGsでもSDGsでも対策目標に掲げられています。日本では主に輸入感染症として発生し、感染症法の四類感染症に分類されます。
3.天然痘 smallpox:痘瘡ウイルスによる感染症で、種痘の普及とWHOの世界天然痘根絶計画によって1980年に根絶が宣言されました。そのため2015年時点で自然界での流行はありません。人類が根絶に成功した唯一のヒトの感染症であり、試験では「三大感染症」ではなく「根絶された感染症」として問われます。生物テロへの備えから、現在も感染症法では一類感染症(痘そう)に位置づけられています。
4.麻疹 measles:麻疹ウイルスによる感染症で、空気感染(飛沫核感染)により非常に強い感染力をもちます。肺炎や脳炎を合併することもあり、世界ではいまも乳幼児の重要な死亡原因ですが、三大感染症には含まれません。日本はMRワクチン2回接種の徹底により、2015年3月にWHO西太平洋地域事務局から麻疹の排除状態にあると認定されました。感染症法では五類感染症(全数把握)です。結核・水痘とともに、空気感染予防策が必要な疾患としても覚えておきましょう。
覚えるポイント
- 世界の三大感染症はHIV感染症/エイズ・結核・マラリアです。国際的な資金の枠組みとして、2002年にグローバルファンドが設立されました。
- 2015年はMDGsの期限年で、SDGsが採択された年です。SDGsのターゲット3.3では、2030年までにエイズ・結核・マラリアなどの流行を終わらせることが掲げられています。
- 天然痘は1980年に根絶宣言が出された唯一のヒト感染症、ポリオは根絶が目前、麻疹は日本で2015年に排除認定、と区別して覚えます。
- 感染症法の分類は、痘そうが一類、結核と急性灰白髄炎が二類、マラリアが四類、HIV/エイズと麻しんが五類(全数把握)です。
- 媒介する蚊は、マラリアがハマダラカ、デング熱・ジカウイルス感染症がヤブカ属(ネッタイシマカ・ヒトスジシマカ)、日本脳炎がコガタアカイエカです。
- 発熱患者では渡航歴を確認します。熱帯熱マラリアは急速に重症化するため、早期の診断と治療が生死を分けます。
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