111PM009|第111回 看護師国家試験 過去問

世界保健機関〈WHO〉が平成12年(2000年)に提唱した「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」はどれか。

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正解: 1

正答

1.健康寿命

この問題のポイント

寿命と余命に関する、よく似た4つの指標を区別できるかを問う問題です。鍵は「日常生活が制限されることなく」という条件です。生きている期間の長さだけでなく、健康な状態で自立して暮らせる期間を表す指標を選びます。「WHOが2000年に提唱」という手がかりも、健康寿命を指しています。

解説

生存期間の長さを表す指標:平均余命と平均寿命

平均余命は、ある年齢の人がその後平均して何年生きられるかという期待値です。年齢別の死亡率をもとに作成する生命表から算出します。生命表には次の2種類があり、いずれも厚生労働省が公表しています。

  • 毎年作成される簡易生命表
  • 国勢調査の年(5年ごと)の人口をもとに作成される完全生命表

平均寿命は0歳の平均余命のことです。ある年の死亡状況がこの先も変わらないと仮定したとき、生まれたばかりの子が平均して何年生きるかを表します。すべての年齢の死亡状況を1つの数値にまとめたものなので、保健福祉の水準を総合的に示す指標として国際比較にも使われます。

平均寿命は「その年に亡くなった人の平均年齢」ではありません。ここは試験でよく狙われる誤解です。

健康の質を加えた指標:健康寿命

医療の進歩で寿命は延びました。一方で、病気や障害を抱えながら暮らす期間も長くなりました。そこで、生存期間に「健康であるかどうか」という質の要素を加えた指標として、WHOが2000年に提唱したのが健康寿命です。定義は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」で、問題文はこの定義をそのまま使っています。

日本では、国民生活基礎調査(3年ごとの大規模調査)の「現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という質問への回答と、生命表を組み合わせて算出します。主な指標は「日常生活に制限のない期間の平均」です。

平均寿命と健康寿命の差は、日常生活に制限のある期間、つまり何らかの支援や介護を必要とする可能性が高い「不健康な期間」を意味します。厚生労働省の研究班が算定した2019年の値では、この差は男性で約9年、女性で約12年でした。女性のほうが平均寿命が長く、その分この期間も長くなっています。

政策とのつながり

2000年に始まった健康日本21でも、目的の一つに健康寿命の延伸が掲げられました。出題当時に実施されていた**健康日本21(第二次)**では、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が最上位の目標とされました。具体的には「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目指しました。健康格差とは、都道府県の間の差などを指します。2024年度からの健康日本21(第三次)でも、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が引き続き全体の目標です。

看護実践での意味

次の取り組みは、いずれも「不健康な期間」を短くし、健康寿命を延ばすことにつながります。

  • 介護予防、フレイル対策、ロコモティブシンドロームの予防
  • 転倒予防
  • 生活習慣病の発症予防と重症化予防
  • 入院中の廃用症候群の予防と、退院後の生活を見すえた支援

看護師が日常生活動作の維持を重視する根拠の一つとして、この指標を理解しておくとよいでしょう。

健康余命について

健康余命は、ある年齢の人がその後、健康な状態で過ごせると期待される年数を表す用語です。平均余命に健康の要素を加えた考え方で、健康寿命と関連する概念です。ただし、WHOが2000年に提唱し、日本の健康政策の目標として定着している名称は健康寿命です。

選択肢の確認

1.健康寿命:正答。WHOが2000年に提唱した指標で、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を表します。日本では国民生活基礎調査の結果と生命表から、「日常生活に制限のない期間の平均」として算出します。健康日本21(第二次)では、その延伸が最上位の目標とされました。

2.健康余命:ある年齢の人がその後、健康な状態で過ごせると期待される年数を表す用語で、選択肢4に健康の要素を加えた考え方です。選択肢1と関連する概念ではあります。しかし、WHOが2000年に提唱し、問題文の定義に対応する名称として国の統計や政策で用いられているのは選択肢1です。名称が似ているため、取り違えないよう注意が必要です。

3.平均寿命:0歳の人がこの先平均して何年生きられるかという期待値で、0歳時点の余命にあたります。生命表から求める生存期間の長さのみの指標で、日常生活が制限されているかどうかという健康の質は含みません。この値から選択肢1の値を引くと、日常生活に制限のある期間になります。

4.平均余命:ある年齢の人がその後平均して何年生きられるかという期待値で、年齢別の死亡率をもとにした生命表から算出します。生存年数だけを示し、健康状態は考慮しません。0歳時点の値が選択肢3にあたり、健康の要素を加えた考え方が選択肢2です。

覚えるポイント

  • 平均余命は「x歳の人があと平均何年生きられるか」の期待値で、生命表から算出します。平均寿命は0歳の平均余命であり、死亡した人の平均年齢ではありません。
  • 健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」です。WHOが2000年に提唱し、日本では国民生活基礎調査をもとに算出します。
  • 平均寿命から健康寿命を引いた差は、日常生活に制限のある期間を表し、女性のほうが長くなっています。この差を縮めることが健康政策の課題です。
  • 健康日本21(第二次)と(第三次)の全体目標は「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」です。
  • 生命表は、簡易生命表が毎年、完全生命表が国勢調査の年に5年ごとに作成されます。

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