111PM082|第111回 看護師国家試験 過去問
舌癌 tongue cancer について正しいのはどれか。
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正解: 5
正答
5.扁平上皮癌が多い。
この問題のポイント
舌癌の疫学(頻度・年齢)、好発部位、組織型、進展の仕方を問う基本問題です。鍵になるのは「舌の粘膜は重層扁平上皮で覆われている」という組織学の知識です。癌の組織型は発生母地の上皮で決まると分かれば、正答を選べます。あわせて、舌縁に好発し、筋層への浸潤と頸部リンパ節転移を起こしやすいという臨床像も押さえておきましょう。
解説
組織型は発生母地の上皮で決まる
癌は上皮に由来する悪性腫瘍で、どの上皮から生じたかによって組織型がおおむね決まります。口腔(舌・歯肉・頬粘膜・口底・口蓋)の粘膜は、食物による摩擦に耐える重層扁平上皮で覆われています。そのため、舌癌を含む口腔癌の9割以上は扁平上皮癌です。
同じ考え方で、次のように整理できます。
- 重層扁平上皮に覆われる臓器(食道、子宮頸部など)では扁平上皮癌が多くなります。食道癌は、日本では扁平上皮癌が大半です。
- 円柱上皮や腺上皮に覆われる臓器(胃、大腸、子宮体部など)では腺癌が多くなります。
「粘膜の上皮の種類 → 癌の組織型」という対応で考えると、臓器ごとに丸暗記しなくても判断できます。
舌癌の疫学と好発部位
- 位置づけ:舌癌は口腔癌の中で最も多く、口腔癌の半数程度を占めます。ただし、口腔癌自体が全がんに占める割合は数%に満たない(1〜2%程度とされる)ため、舌癌は比較的まれな癌です。
- 年齢・性別:50歳代〜70歳代の中高年に多く、男性に多い傾向があります。
- 危険因子:喫煙、飲酒、口腔衛生の不良、歯の鋭縁や不適合な義歯による慢性的な機械的刺激が挙げられます。
- 前癌病変:白板症や紅板症が知られ、紅板症のほうが癌化しやすいとされます。
- 好発部位:大部分は舌縁(舌の側面)、とくに中央から後方寄りの側縁に生じます。歯と接して慢性的な刺激を受けやすい場所と一致します。
舌の区分にも注意が必要です。舌の前方約3分の2(可動部)は口腔に、後方約3分の1の舌根は中咽頭に分類されます。一般に「舌癌」は舌可動部の癌を指し、舌根の癌は中咽頭癌として扱われます。
症状と進展
初期症状
- 痛みの乏しい硬結、びらん、潰瘍、白斑・紅斑として現れます。
- 口内炎と誤認されやすいのが特徴です。2週間以上治らない潰瘍や、触れて硬いしこりは受診を勧めるサインです。
進行した場合
- 疼痛、出血、口臭、耳への放散痛が生じます。
- 舌の運動制限により構音障害や嚥下障害が起こります。
進展様式
- 深部の筋層へ浸潤し、顎下リンパ節や深頸リンパ節などの頸部リンパ節へ転移しやすくなります。
- 遠隔転移では肺が多くみられます。
- 病期分類では、腫瘍の大きさに加えて浸潤の深さ(深達度)も評価に用いられます。
治療と看護への結びつき
治療
- 早期は舌部分切除が行われます。進行例では舌半側切除以上の切除に、頸部郭清術と皮弁による再建を組み合わせます。
- 放射線治療(小線源治療を含む)や化学療法も併用されます。
看護の要点
- 術後の気道管理:口腔・咽頭の浮腫による気道閉塞のおそれがあるため、気管切開を置くことがあります。気道確保と吸引が最優先です。
- 再建部の観察:再建皮弁の色調や血流を観察します。
- 栄養と機能回復:経管栄養から段階的に経口摂取へ移行し、摂食嚥下訓練と構音訓練を進めます。筆談などのコミュニケーション手段も確保します。
- 頸部郭清後:副神経が障害されると僧帽筋の麻痺により肩が挙がりにくくなります。
- 放射線治療:口腔粘膜炎、口腔乾燥、味覚障害、顎骨壊死に注意します。治療前の歯科受診と口腔ケアが重要です。
- 心理的支援:容貌や発話の変化に対する支援も欠かせません。
選択肢の確認
1.癌全体に対する発症頻度は約10%である。:口腔癌を合わせても全がんに占める割合は数%に満たず、舌癌はその半数程度にすぎないため、約10%は明らかに過大です。全がんの1割前後を占めるのは、大腸・肺・胃など罹患数の多い主要ながんの規模です。舌癌は「口腔癌の中では最多」ですが、「癌全体の中で多い」わけではありません。この2つを取り違えないようにしましょう。
2.発症年齢は20歳代が多い。:舌癌の好発年齢は50歳代〜70歳代の中高年で、喫煙・飲酒・慢性刺激など長年の曝露が関係する癌です。近年は若年者の発症例も報告されていますが、20歳代が多数を占めるわけではありません。若年層での発症が問題になる子宮頸癌などと混同しないよう注意します。
3.好発部位は舌尖である。:舌癌の大部分は舌縁、とくに中央から後方寄りの側縁に生じます。歯の鋭縁や義歯が当たる場所と一致するため、慢性的な機械的刺激が関与すると考えられています。舌尖や舌背に生じることはまれです。
4.浸潤は起こさない。:舌癌は扁平上皮癌として上皮の基底膜を越え、深部の筋層へ浸潤します。さらに頸部リンパ節への転移を起こしやすく、進行例では肺などへの遠隔転移もみられます。浸潤がないといえるのは、基底膜を越えていない上皮内癌の段階に限られます。浸潤の有無が、上皮内癌と浸潤癌を分ける基準です。
5.扁平上皮癌が多い。:正答。舌を含む口腔粘膜は重層扁平上皮で覆われているため、そこから発生する舌癌の9割以上は扁平上皮癌です。舌癌の組織型として最も基本的な事項です。
覚えるポイント
- 癌の組織型は発生母地の上皮で決まります。重層扁平上皮(口腔・食道・子宮頸部など)は扁平上皮癌、腺上皮(胃・大腸・子宮体部など)は腺癌が多いと整理します。
- 舌癌の特徴は「口腔癌で最多」「50〜70歳代・男性に多い」「舌縁に好発」「扁平上皮癌」です。
- 危険因子は喫煙、飲酒、歯や義歯による慢性刺激、口腔衛生不良です。前癌病変として白板症・紅板症があります。
- 初期は痛みの乏しい潰瘍や硬結で、口内炎と誤認されやすい癌です。進行すると筋層へ浸潤し、頸部リンパ節に転移しやすくなります。
- 術後看護の要点は、気道確保、再建皮弁の観察、摂食嚥下・構音のリハビリテーション、頸部郭清後の肩の運動障害です。放射線治療では口腔粘膜炎・口腔乾燥・顎骨壊死に注意します。
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