111PM083|第111回 看護師国家試験 過去問

Alzheimer〈アルツハイマー〉病 Alzheimer disease で正しいのはどれか。

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正解: 2

正答

2.アミロイドβ タンパクが蓄積する。

この問題のポイント

アルツハイマー病について、脳に何が蓄積するか(病理)、初期症状、画像所見(MRIと脳血流シンチグラフィ)を問う問題です。血管性認知症や前頭側頭型認知症の特徴と取り違えないことが判断の鍵です。障害がどの部位から始まるかを押さえると、症状と画像所見を一続きに理解できます。

解説

病理:2つのタンパク質の蓄積

アルツハイマー病は認知症の原因疾患として最も多く、ゆっくり進行する神経変性疾患です。脳内では次の2種類のタンパク質が異常に蓄積します。

  • アミロイドβタンパク:神経細胞の外に沈着し、老人斑を形成します。
  • リン酸化タウタンパク:過剰にリン酸化されたタウが神経細胞の中にたまり、神経原線維変化を形成します。

この結果、シナプスと神経細胞が失われ、脳が萎縮します。アミロイドβの蓄積は、症状が現れるよりかなり前から始まると考えられています。

障害部位と症状の進み方

変化は、海馬を含む側頭葉内側から始まり、側頭葉・頭頂葉の連合野へ広がります。海馬は新しい情報を記憶として定着させる働きをもつため、初期症状は**記銘力障害(近時記憶障害)**です。たとえば、同じことを何度も尋ねる、物をしまった場所を忘れる、約束を忘れる、といった形で現れます。出来事の一部ではなく体験そのものを忘れるのが特徴です。一方、昔の出来事(遠隔記憶)は比較的保たれます。

進行すると、見当識障害(時間→場所→人の順に障害されやすい)、実行機能障害、失語・失行・失認、視空間認知障害(頭頂葉の障害)が加わります。できないことを取り繕う反応(取り繕い反応)や、物盗られ妄想もよくみられます。

画像所見

  • MRI:海馬・側頭葉内側の萎縮と、それに伴う側脳室下角の拡大が特徴です。
  • 脳血流シンチグラフィ(SPECT):頭頂葉・側頭葉、後部帯状回、楔前部で血流が低下します。後部帯状回や楔前部の血流低下は早期から現れやすい所見です。神経変性で神経活動が落ちた部位では血流が低下するのが原則です。

他の認知症との区別

  • 血管性認知症:高血圧症、糖尿病、脂質異常症、心房細動などを背景とする脳梗塞・脳出血が原因です。階段状に悪化し、麻痺などの局所神経症状や感情失禁を伴います。障害される能力とされない能力が混在する「まだら認知症」を示します。
  • 前頭側頭型認知症:前頭葉と側頭葉前部が萎縮します。人格変化、脱抑制、常同行動が目立ち、初期には記憶は比較的保たれます。
  • レビー小体型認知症:αシヌクレインが蓄積してレビー小体を形成します。幻視、パーキンソニズム、認知機能の変動、レム睡眠行動障害が特徴で、脳血流シンチグラフィでは後頭葉の血流が低下します。

看護への応用と治療

記憶障害による言動を責めたり強く訂正したりせず、本人の体験を尊重して関わります。カレンダーやメモの活用、生活環境をなるべく変えないこと、日時や場所をさりげなく伝える声かけが有効です。

出題当時の薬物療法は、進行を緩やかにする目的の対症療法でした。コリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン)とNMDA受容体拮抗薬(メマンチン)が用いられていました。現在は、アミロイドβを標的とする抗体薬(レカネマブなど)も承認され、軽度認知障害から軽度認知症の段階を対象に使われています。アミロイドβの蓄積が病態の中心であることは、治療の面からも重要です。

選択肢の確認

1.基礎疾患として高血圧症 hypertension が多い。:高血圧症、糖尿病、心房細動などが基礎疾患として多いのは、脳血管障害を原因とする血管性認知症です。中年期の高血圧はアルツハイマー病の危険因子の一つともされています。ただし、脳血管病変を背景とする病型として特徴づけられるのは血管性認知症であり、アルツハイマー病の特徴を問うこの設問では当てはまりません。

2.アミロイドβ タンパクが蓄積する。:正答。アミロイドβタンパクが神経細胞の外に沈着して老人斑を形成します。これに、リン酸化タウによる神経原線維変化が加わることが、アルツハイマー病の病理学的な特徴です。

3.初期には記銘力障害はみられない。:病変は記憶の定着を担う海馬から始まるため、記銘力障害(近時記憶障害)はむしろ最も早く現れる中核症状です。初期に記憶が比較的保たれるのは前頭側頭型認知症の特徴なので、両者を混同しないようにします。

4.MRI 所見では前頭葉の萎縮が特徴的である。:アルツハイマー病のMRIで特徴的なのは、海馬と側頭葉内側の萎縮、およびそれに伴う側脳室下角の拡大です。前頭葉(と側頭葉前部)の萎縮が目立つのは前頭側頭型認知症で、人格変化や脱抑制を伴います。

5.脳血流シンチグラフィ所見では頭頂葉の血流増加がある。:神経変性で活動が低下した頭頂葉・側頭葉、後部帯状回、楔前部では、血流は増加ではなく低下します。部位は合っていても変化の向きが逆です。後頭葉の血流低下であればレビー小体型認知症を示唆します。

覚えるポイント

  • アルツハイマー病の病理は、アミロイドβによる老人斑と、リン酸化タウによる神経原線維変化です。レビー小体型認知症はαシヌクレインで、区別して覚えます。
  • 障害は海馬・側頭葉内側から始まるため、初発症状は**記銘力障害(近時記憶障害)**です。遠隔記憶は比較的保たれます。
  • MRIでは海馬の萎縮、脳血流シンチグラフィでは頭頂葉・側頭葉、後部帯状回、楔前部の血流低下がみられます。
  • 前頭葉萎縮と人格変化・脱抑制・常同行動は前頭側頭型認知症、後頭葉の血流低下と幻視はレビー小体型認知症の特徴です。
  • 高血圧・糖尿病などの基礎疾患、階段状の悪化、まだら認知症、局所神経症状、感情失禁は血管性認知症の特徴です。アルツハイマー病は緩やかに進行します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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