112AM024|第112回 看護師国家試験 過去問
CO2 ナルコーシスの症状で正しいのはどれか。
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正解: 4
正答
4.意識障害
この問題のポイント
CO2ナルコーシスは、体内に二酸化炭素が過剰にたまり、中枢神経が抑えられる病態です。「ナルコーシス」は麻酔にかかったような昏睡状態を意味する語で、中心となる症状は意識障害です。この問題では、次の二つを区別できるかが問われています。
- 高二酸化炭素血症そのものによる症状(交感神経刺激による頻脈、血管拡張による頭痛・紅潮)
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)自体の症状や合併症(咳嗽、浮腫)
解説
病態
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の基準値は35〜45Torrです。
- 換気が不十分になると、CO2が排出されずにPaCO2が上昇します(高二酸化炭素血症)。
- 水素イオンが増えてpHが下がり、呼吸性アシドーシスになります。
- CO2は血液脳関門を通りやすいため、脳血管を拡張させ、脳脊髄液のpHも下げます。その結果、中枢神経の働きが抑えられ、傾眠から昏睡へと意識レベルが下がります。
この状態がCO2ナルコーシスです。三徴として、意識障害・高度の呼吸性アシドーシス・自発呼吸の減弱がよく挙げられます。呼吸中枢まで抑制されると換気がさらに減り、CO2が一層たまるという悪循環に陥ります。放置すれば呼吸停止に至ります。
高二酸化炭素血症で見られる症状
- 中枢神経症状:頭痛(脳血管の拡張による)、傾眠、見当識障害、羽ばたき振戦、昏睡
- 循環・皮膚症状:顔面紅潮、皮膚の温感、発汗(末梢血管の拡張による)、頻脈・血圧上昇(交感神経の刺激による)
- 呼吸:進行すると呼吸が浅く遅くなる
起こりやすい患者と誘因
代表は、COPDなどで慢性的にPaCO2が高いⅡ型呼吸不全(PaO2 60Torr以下かつPaCO2 45Torr超)の患者です。
- 健常者では、延髄の中枢化学受容体がPaCO2の上昇(髄液pHの低下)を感知して呼吸を促します。
- 慢性的な高二酸化炭素状態では、この反応が鈍くなります。代わりに、頸動脈小体などの末梢化学受容体が感知する「低酸素血症」が主な呼吸の刺激になっています。
- ここに高濃度の酸素を投与すると、低酸素の刺激が消えて換気が減り、CO2がさらにたまります。
実際には換気血流比の悪化なども関わるとされます。ただ、試験対策としては「高濃度酸素で低酸素刺激が失われる」と理解しておけば十分です。そのほかの誘因には、COPDの増悪(気道感染など)や、鎮静薬・睡眠薬など呼吸を抑える薬剤があります。
看護での活かし方
Ⅱ型呼吸不全の患者への酸素療法は、医師の指示のもとで低流量から始め、SpO2を上げすぎないようにします(88〜92%程度を目安とすることが多い)。
特に注意したいのは、SpO2はCO2の蓄積を反映しないことです。酸素投与中にSpO2が良好でも、次のような変化があればCO2ナルコーシスを疑います。
- 呼びかけへの反応が鈍い、傾眠がちになる
- 呼吸が浅く遅い
- 頭痛、発汗、顔面紅潮、羽ばたき振戦が現れる
その場合はただちに医師へ報告し、動脈血ガス分析で確認します。発症時に自己判断で酸素を止めると、重い低酸素血症を招きます。治療の中心は、酸素濃度の調整とあわせて、非侵襲的陽圧換気(NPPV)や気管挿管による人工呼吸でCO2を排出させる換気補助です。
選択肢の確認
1.咳嗽:咳は気道内の分泌物や異物を外へ出すための防御反射で、COPDや気道感染そのものの症状です。CO2の蓄積によって起こる症状ではありません。むしろCO2ナルコーシスで意識レベルが下がると咳の反射が弱まります。その結果、痰を出しにくくなり、換気がさらに悪くなる点に注意が必要です。
2.徐脈:高二酸化炭素血症の初期には交感神経が刺激されるため、典型的には頻脈や血圧上昇がみられます。脈拍が遅くなるのは、重い低酸素血症やアシドーシスが進んで心停止が近い段階や、頭蓋内圧亢進によるクッシング現象などの場合です。CO2ナルコーシスを示す症状として覚えるものではありません。
3.浮腫:むくみは、COPDの経過で肺高血圧から右心不全(肺性心)を合併したときに現れる症状です。下腿のむくみや頸静脈の怒張を伴います。COPDの合併症として問われることはありますが、CO2の蓄積による中枢神経の抑制とは別の病態なので、取り違えないようにします。
4.意識障害:正答。CO2の蓄積と呼吸性アシドーシスによって中枢神経が抑えられ、傾眠や見当識障害から昏睡へと進みます。CO2ナルコーシスの三徴の一つであり、病態の名前の由来にもなっている中心的な症状です。
覚えるポイント
- CO2ナルコーシスの三徴は、意識障害、高度の呼吸性アシドーシス、自発呼吸の減弱です。
- 高二酸化炭素血症の症状は、頭痛、発汗、顔面紅潮、頻脈・血圧上昇、羽ばたき振戦、傾眠から昏睡です。羽ばたき振戦は肝性脳症や尿毒症でもみられます。
- ハイリスクはCOPDなどのⅡ型呼吸不全(PaO2 60Torr以下かつPaCO2 45Torr超)です。誘因は高濃度酸素の投与、COPDの増悪、鎮静薬です。
- 酸素は低流量から始め、SpO2を上げすぎないようにします。SpO2ではCO2を評価できないため、意識レベル、呼吸の数と深さ、動脈血ガスで観察します。
- 発症時は酸素を独断で中止せず、医師に報告して換気補助(NPPV・人工呼吸)で対応します。
- 浮腫は右心不全(肺性心)、咳嗽はCOPDの気道症状として、CO2ナルコーシスとは分けて整理します。
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