112AM025|第112回 看護師国家試験 過去問
母乳栄養の児に不足しやすいのはどれか。
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正解: 5
正答
5.ビタミンK
この問題のポイント
母乳の栄養学的な特徴のうち、「母乳だけでは不足しやすい成分」を問う問題です。母乳中の含有量が少ないうえに、新生児・乳児の体にも欠乏しやすい条件がそろっているビタミンを選べるかが鍵になります。ビタミンK欠乏による出血症と、予防のためのビタミンK2シロップ投与まで結びつけて理解しておくと、母性・小児の両分野の問題に対応できます。
解説
母乳の長所と、母乳だけでは不足しやすいもの
母乳は乳児にとって最適な栄養です。分泌型IgA、ラクトフェリン、リゾチームなどの感染防御因子を含み、消化吸収がよく、母子の愛着形成にも役立ちます。一方で、母乳だけでは不足しやすい成分として、試験ではビタミンK、ビタミンD、鉄の3つが繰り返し問われます。本問の選択肢でこれに当たるのはビタミンKです。
新生児・乳児がビタミンK欠乏に陥りやすい理由
- 胎盤を通過しにくいため、出生時の体内の貯蔵量が少ないです。
- 母乳中の含有量が少ないです。育児用ミルクには強化されています。
- 出生直後の腸管には細菌がほとんどいないため、腸内細菌による産生が期待できません。母乳栄養児の腸内ではビフィズス菌が優位になり、ビタミンKを産生する菌は少なくなります。
- 生まれて間もない時期は哺乳量が少なく、肝臓の機能も未熟です。
- 脂溶性ビタミンで、吸収には胆汁が必要です。胆道閉鎖症などで胆汁がうっ滞すると、吸収はさらに低下します。
欠乏すると何が起こるか
ビタミンKは、肝臓で凝固因子II(プロトロンビン)、VII、IX、Xを働ける形にするのに欠かせません。不足すると出血傾向となり、プロトロンビン時間が延長し、PIVKA-II(ビタミンK欠乏時に出る異常プロトロンビン)が上昇します。
- 新生児ビタミンK欠乏性出血症:主に生後1週間以内に吐血・下血などの消化管出血で発症し、新生児メレナとも呼ばれます。
- 乳児ビタミンK欠乏性出血症:生後1か月前後を中心とする乳児期早期に発症し、母乳栄養児に多くみられます。頭蓋内出血を起こしやすく、死亡や神経学的後遺症につながる重い病気です。
- 母体が抗てんかん薬など、ビタミンKの働きを妨げる薬剤を服用していると、出生後24時間以内に発症する早発型がみられることもあります。
予防と看護
予防には、ビタミンK2シロップを経口投与します。従来は、出生後に哺乳が確立したころ、生後1週(または産科退院時)、1か月健診時の3回投与(3回法)が基本でした。その後、2021年に関係学会の提言が改訂され、出生後から生後3か月まで週1回投与を続ける方法(3か月法)が推奨されるようになりました。出題当時は、すでにこの方法が勧められていた時期にあたります。
看護では、母乳育児を続けることを支えつつ、シロップを確実に投与することが大切です。具体的には、投与の意味と時期を保護者に説明し、退院後に家庭で飲ませる場合の方法や飲み忘れの防止を指導し、1か月健診で投与状況を確認します。「不足しやすいから母乳をやめる」のではなく、「不足しやすい成分を補いながら母乳育児を続ける」という考え方が基本です。
あわせて押さえる不足しやすい成分
- ビタミンD:母乳中の含有量が少なく、日光に当たる機会が少ない場合や母親自身がビタミンD不足の場合には、くる病の危険が高まります。
- 鉄:母乳中の鉄は含有量が少ないものの、吸収率は高いです。ただし出生時にもっていた貯蔵鉄が生後6か月ごろまでに減っていくため、離乳食で鉄を補う必要があります。
選択肢の確認
1.ビタミンA:母乳、とくに初乳には、このビタミンとその前駆体であるβカロテンが豊富に含まれており(初乳が黄色みを帯びるのはβカロテンによります)、通常の母乳栄養で不足することはまれです。欠乏すると夜盲症や眼球乾燥症が起こりますが、これは母子ともに低栄養の地域などで問題になるもので、母乳の特性として不足しやすいわけではありません。
2.ビタミンB:B群(B1、B2、B6、B12、葉酸など)は水溶性で母乳へ移行しやすく、母親が通常の食事をとっていれば、母乳栄養児に不足することはまれです。ただし、母親が肉・魚・卵・乳製品をとらない厳格な菜食主義であればB12が、極端に偏った食事であればB1が、母乳中でも少なくなります。その場合、児に欠乏症(B12欠乏による貧血や発達の遅れ、B1欠乏による乳児脚気)が起こることがあります。これは母親の栄養状態による例外であり、母乳そのものの特性として不足しやすいのは選択肢5です。
3.ビタミンC:母乳には乳児の必要量を満たす量が含まれており、母乳栄養児に壊血病が起こることはまれです。乳児の壊血病(メラー・バーロウ病)は、かつて加熱した牛乳など、このビタミンの乏しい乳で育てられた児に多くみられた病気で、母乳栄養とは結びつきません。水溶性のため、母親の摂取量が母乳中の濃度に反映されやすい点もあわせて覚えておきます。
4.ビタミンE:初乳にとくに多く含まれ、成熟乳にも正期産児の必要量が含まれているため、母乳栄養児で不足しやすいビタミンではありません。欠乏が問題になるのは主に低出生体重児・早産児で、体内の貯蔵が少なく脂肪の吸収も未熟なため、溶血性貧血を起こすことがあります。「脂溶性ビタミンだから母乳に少ない」わけではないので、選択肢5と混同しないようにします。
5.ビタミンK:正答。母乳中の含有量が少ないうえ、胎盤移行が乏しく、腸内細菌による産生も期待しにくいため、母乳栄養児は欠乏に陥りやすくなります。欠乏すると凝固因子II・VII・IX・Xが働かず、新生児期の消化管出血や、乳児期早期の頭蓋内出血を起こします。そのため、出生後からK2シロップの経口投与で予防します。
覚えるポイント
- 母乳だけでは不足しやすいのはビタミンK・ビタミンD・鉄です。鉄は生後6か月ごろから不足しやすくなり、離乳食で補います。
- 新生児がビタミンK欠乏に陥りやすい理由は、胎盤移行が少ない、母乳中に少ない、腸内細菌叢が未熟、肝機能が未熟、の4点です。
- ビタミンK依存性凝固因子はII・VII・IX・X(「肉納豆」=2・9・7・10)です。欠乏するとプロトロンビン時間が延長し、PIVKA-IIが上昇します。
- 新生児メレナは生後1週間以内の消化管出血です。乳児ビタミンK欠乏性出血症は生後1か月前後の母乳栄養児に多く、頭蓋内出血を起こします。
- 予防はビタミンK2シロップの経口投与です。従来の3回法(出生後・生後1週または退院時・1か月健診)に代わり、現在は生後3か月まで週1回投与する3か月法が推奨されています。
- 初乳は黄色みを帯び、分泌型IgA・ラクトフェリン・たんぱく質・βカロテン・ビタミンEが多いのが特徴です。
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