112AM087|第112回 看護師国家試験 過去問

高齢者に脱水が起こりやすくなる要因はどれか。2つ選べ。

2つ選択
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正解: 2・3

正答

2.筋肉量の減少
3.細胞内液量の減少

この問題のポイント

加齢による体液量の変化と、水分を補給・保持する調節機構の変化を問う問題です。鍵は、体内の水分の多くが筋肉の細胞の中(細胞内液)に蓄えられているという点です。もう一つの鍵は、渇中枢や抗利尿ホルモンに関する変化が、加齢では「亢進」ではなく「低下」の向きであると見抜くことです。

解説

体液の構成と加齢変化

体重に占める水分の割合は、新生児で約80%、成人で約60%、高齢者で約50%と、年齢とともに低下します。成人の体液の内訳は次のとおりで、体液の約3分の2は細胞内液です。

  • 細胞内液:体重の約40%
  • 細胞外液:体重の約20%(間質液が約15%、血漿が約5%)

細胞内液を最も多く抱えている組織は骨格筋です。筋組織は重量の約4分の3が水分で、体の「水の貯蔵庫」といえます。一方、脂肪組織は水分をあまり含みません。加齢で骨格筋が減り(サルコペニア)、相対的に脂肪の割合が増えると、筋細胞に蓄えられていた水が失われます。その結果、主に細胞内液が減少します。細胞外液量は加齢による変化が比較的小さいため、高齢者の体水分量の低下は細胞内液の減少が中心だと理解しておきましょう。

予備の水分が少ないと、発熱・発汗・下痢・嘔吐・食事量の低下などで同じ量の水を失っても、体液全体に対する喪失の割合が大きくなります。そのため、すぐに脱水に傾きます。これが選択肢2と3が正答となる理由です。両者は「筋肉が減る → 筋細胞内の水が減る」という一続きの変化としてつながっています。

水分を「摂る」「逃さない」仕組みの低下

脱水を防ぐには、水分を摂る仕組みと、体外に逃さない仕組みの両方が必要です。高齢者ではどちらも弱まります。

  • 摂る仕組み:視床下部の渇中枢は、血漿浸透圧の上昇を感知して口渇を起こします。高齢者ではこの感受性が低下するため、体が水を必要としていても喉の渇きを自覚しにくくなります。
  • 逃さない仕組み:抗利尿ホルモン(バソプレシン)は視床下部で産生されて下垂体後葉から分泌され、腎の集合管で水の再吸収を促します。高齢者では分泌はむしろ保たれますが、腎の反応性が低下して尿の濃縮力が落ちます。そのため、水分が不足していても尿として水が出ていきやすくなります。

どちらも脱水の要因ですが、選択肢4・5は「亢進」となっており、実際の変化とは向きが逆です。飲水不足が主体の脱水では、水が相対的に多く失われて血清ナトリウム値が上がる高張性(水欠乏性)脱水になりやすい点も押さえておきましょう。

生活面の要因と看護への活用

生活面では、次のような要因も重なります。

  • 食事量の低下(食物からも1日およそ1,000 mL前後の水分を得ています)
  • 嚥下障害やADLの低下による飲水の困難
  • 認知機能の低下
  • 利尿薬の使用
  • 頻尿や失禁を気にした自主的な飲水制限

高齢者は口渇を訴えにくいため、「喉が渇いたら飲む」では補給が遅れます。時間を決めた声かけ、ゼリーや汁物など摂りやすい形の工夫、飲水量・尿量・尿の色の記録が大切です。脱水の徴候には、口腔粘膜や腋窩の乾燥、尿量減少と濃縮尿、頻脈、起立時のふらつき、微熱、せん妄などの意識状態の変化があります。高齢者はもともと皮膚の弾力が低下しているため、皮膚の張りだけで判断せず、複数の所見を組み合わせて評価します。

選択肢の確認

1.骨量の減少:骨量が減るのは加齢や閉経後のエストロゲン低下による変化で、骨粗鬆症や骨折リスクの上昇に関わります。骨組織はもともと水分の含有率が低く、体水分の貯蔵庫ではありません。そのため、骨量が減っても脱水のなりやすさには直接結びつきません。高齢者の加齢変化としては正しいものの、脱水の要因ではないため誤りです。筋肉と同じ「高齢者で減るもの」として紛らわしく作られた選択肢です。

2.筋肉量の減少:正答。骨格筋は重量の約4分の3が水分で、体内の水の最大の貯蔵場所です。加齢で筋肉が減ると蓄えられる水分量そのものが減り、わずかな水分喪失でも脱水に陥りやすくなります。「筋肉は水分が多く、脂肪は水分が少ない」と対比して覚えておきましょう。

3.細胞内液量の減少:正答。体液の約3分の2は細胞内液で、高齢者の体水分量の低下は主に筋細胞の減少に伴う細胞内液の減少によるものです。細胞内液は、細胞外液が失われたときに水を補う予備としても働きます。そのため、これが少ないと脱水への余裕が小さくなります。

4.渇中枢の感受性の亢進:渇中枢は視床下部にあり、血漿浸透圧の上昇を感知して口渇を起こしますが、高齢者ではその感受性は低下します。仮に感受性が高まれば、早く口渇を感じて飲水が促され、むしろ脱水を防ぐ方向に働きます。変化の向きが逆のため誤りです。「感受性の低下」であれば、脱水の要因として正しい記述になります。

5.抗利尿ホルモンの反応性の亢進:抗利尿ホルモンは腎の集合管で水の再吸収を促すホルモンで、高齢者では分泌は保たれる一方、腎の反応性が低下して尿の濃縮力が落ちます。反応性が高まれば水を体内に保持しやすくなり、脱水を防ぐ方向に働くため誤りです。「反応性の低下」であれば正しい記述です。分泌量の変化と腎の反応性の変化を混同しないよう注意が必要です。

覚えるポイント

  • 体重に占める水分の割合は、新生児約80%、成人約60%、高齢者約50%です。成人では細胞内液が約40%、細胞外液が約20%を占めます。
  • 高齢者の体水分量の減少は、筋肉量の減少に伴う細胞内液の減少が中心です。筋肉は水分が多く、脂肪は水分が少ない組織です。
  • 高齢者では渇中枢の感受性が低下し、口渇を感じにくくなります。抗利尿ホルモンは分泌が保たれますが、腎の反応性が低下して尿濃縮力が落ちます。選択肢の「亢進/低下」の向きに注意しましょう。
  • 食事量の低下、嚥下障害、認知機能の低下、利尿薬、失禁を気にした飲水制限も、脱水の要因として重なります。
  • 観察では、口腔・腋窩の乾燥、尿量と尿の色、脈拍、意識状態を組み合わせます。口渇の訴えを待たず、計画的に水分摂取を促します。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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