112AM088|第112回 看護師国家試験 過去問
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉に基づく入院形態で正しいのはどれか。2つ選べ。
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正解: 1・3
正答
1.応急入院は72時間以内に限られている。
3.措置入院中の患者は精神医療審査会へ退院請求を申し出ることができる。
この問題のポイント
精神保健福祉法に定める入院形態について、誰の同意・権限で入院するか、精神保健指定医(以下、指定医)が何名必要か、期間の上限があるか、退院がどう決まるかを区別できるかを問う問題です。判断の鍵は2点あります。「72時間」という上限がどの入院形態に付くのかと、退院請求が入院形態を問わず保障された権利であることです。措置入院と医療保護入院では必要な指定医の人数が違い、任意入院と緊急措置入院では退院の決まり方が違います。この違いも、誤りの選択肢を見抜く手がかりになります。
解説
入院形態を整理する軸
精神科の入院は、本人の同意に基づく任意入院が原則です。本人の同意によらない非自発的入院は身体の自由を制限するため、要件・判定者・手続きが法律で細かく定められ、それを満たすときに限って認められます。次のように整理すると混同しにくくなります。
- 任意入院:本人の同意による入院で、入院の際に指定医の診察は要件ではありません。本人が退院を申し出れば退院させるのが原則です。ただし、指定医が診察して入院継続が必要と認めた場合は、72時間に限り退院を制限できます。
- 医療保護入院:指定医1名が診察し、医療と保護のために入院が必要で、かつ任意入院が行われる状態にないと判定した場合の入院です。家族等のうちいずれかの者の同意を得て、精神科病院の管理者の権限で入院させます。
- 措置入院:2名以上の指定医が診察し、入院させなければ自傷他害のおそれがあると一致して判定した場合の入院です。都道府県知事(指定都市では市長)の権限で、国や都道府県等が設置した精神科病院または指定病院に入院させます。
- 緊急措置入院:自傷他害のおそれが著しく急速を要し、措置入院の正規の手続きがとれない場合の入院です。指定医1名の診察で、知事の権限により入院させます。期間は72時間以内です。
- 応急入院:急速を要し、家族等の同意を得ることができない場合の入院です。指定医1名の診察で、知事が指定した応急入院指定病院の管理者の権限により入院させます。期間は72時間以内です。
緊急その他やむを得ない理由があるときは、一定の要件を満たす特定医師が指定医に代わって診察できます。この場合、任意入院の退院制限・医療保護入院・応急入院は12時間に限られます。措置入院と緊急措置入院には、この特例はありません。
なぜ72時間の上限があるのか
緊急措置入院と応急入院は、本来必要な手続き(2名以上の指定医による判定、家族等の同意)を満たせない緊急時の特例です。そのため短い上限が設けられています。この時間内に措置入院や医療保護入院などの正式な入院形態へ移行し、どの要件も満たさなければ退院となります。任意入院の退院制限も、医療保護入院などへの移行を検討するための一時的な措置なので、72時間に限られています。
退院請求・処遇改善請求と精神医療審査会
精神科病院に入院中の者とその家族等は、都道府県知事に対して退院請求や処遇改善請求ができます。知事は精神医療審査会に審査を求め、その結果に基づいて患者を退院させたり、病院の管理者に退院や処遇改善を命じたりします。この権利は、任意入院・医療保護入院・措置入院など、入院形態に関係なく保障されています。
精神医療審査会は都道府県等に置かれる機関で、次の3分野の学識経験者で構成されます。
- 精神障害者の医療(指定医)
- 法律
- 精神障害者の保健・福祉
入院の必要性や処遇の妥当性を第三者の立場で審査するのが役割です。退院請求等のほか、医療保護入院の入院届や措置入院者の定期病状報告も審査します。
臨床では次の点が大切です。
- 入院時には、退院請求などの権利を書面で告知しなければなりません。
- 次の3つは制限できません(精神保健福祉法第36条第2項に基づく厚生労働大臣の告示)。
- 1つ目は信書の発受です。
- 2つ目は、都道府県や地方法務局など、人権擁護に関する行政機関の職員との電話・面会です。
- 3つ目は、患者の代理人である弁護士との電話・面会です。面会については、代理人となろうとする弁護士も含みます。
- 患者から「退院したい」「処遇に納得できない」と訴えがあったときは、看護師は請求の方法を伝え、権利の行使を妨げないよう支援します。
出題後の改正
出題当時、医療保護入院には法律上の入院期間の定めがありませんでした。2024年4月施行の改正で入院期間が定められ、期間ごとに要件を確認して更新する仕組みになりました。また、家族等が同意・不同意の意思表示をしない場合も、市町村長の同意で入院できるようになりました。一方で、次の点は改正後も変わっていません。医療保護入院に指定医1名の診察が必要な点、正答となった応急入院の72時間の上限、措置入院の患者が退院請求できる仕組みです。
選択肢の確認
1.応急入院は72時間以内に限られている。:正答。応急入院は、急速を要し家族等の同意を得られない場合に、指定医の診察に基づいて応急入院指定病院に入院させる制度です。期間は72時間以内で、特定医師の診察による場合は12時間以内です。期限内に医療保護入院や任意入院へ切り替え、どの要件も満たさなければ退院となります。医療保護入院とは家族等の同意がない点で、緊急措置入院とは知事ではなく病院の管理者の権限による点で区別します。
2.緊急措置入院中の患者は本人と家族が希望すれば退院できる。:緊急措置入院は都道府県知事の行政処分として行われる非自発的入院です。そのため、本人と家族がそろって希望しても、それだけで退院が決まることはありません。72時間以内に2名以上の指定医が診察します。自傷他害のおそれが一致して認められれば措置入院に移行し、認められなければ緊急措置入院は終了します。本人の申し出による退院が原則となるのは任意入院なので、取り違えないようにします。退院を望む場合は、退院請求の制度を利用できます。
3.措置入院中の患者は精神医療審査会へ退院請求を申し出ることができる。:正答。退院請求は入院形態を問わず、入院中の者とその家族等に認められた権利で、措置入院の患者も対象です。請求先は都道府県知事で、その内容を審査するのが精神医療審査会です。選択肢の表現は、この審査会による審査を求められる仕組みを指しています。審査会が入院は不要と判断すれば、知事が措置を解除して退院させます。
4.精神保健指定医は任意入院中の患者について入院継続を必要と判断しても、退院を制限できない。:任意入院でも、指定医が診察して医療と保護のために入院継続が必要と認めたときは、72時間に限り退院を制限できます。特定医師の診察による場合は12時間です。その間に医療保護入院などへの切り替えを検討します。退院を制限する場合は、その旨や退院請求の権利などを本人に書面で知らせます。「制限できない」とする記述は規定と一致しません。
5.医療保護入院のためには入院の必要性に関する2名の精神保健指定医の一致した判断が必要である。:医療保護入院に必要なのは、指定医1名の診察と家族等のうちいずれかの者の同意です。2名以上の指定医の一致した判定が必要なのは措置入院だけなので、両者を取り違えないようにします。家族等とは配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人のことです。家族等がいない場合などは、市町村長が同意します。
覚えるポイント
- 72時間の上限があるのは、応急入院、緊急措置入院、任意入院の退院制限の3つです。特定医師の診察による12時間の特例は、任意入院の退院制限・医療保護入院・応急入院に限られ、緊急措置入院にはありません。
- 2名以上の指定医の一致した判定が必要なのは措置入院だけです。医療保護入院・緊急措置入院・応急入院は指定医1名の診察によります。任意入院は入院に指定医の診察を要せず、退院を制限するときに指定医1名の診察が必要です。
- 入院の権限は、措置入院と緊急措置入院が都道府県知事(指定都市では市長)、医療保護入院と応急入院が精神科病院の管理者です。
- 医療保護入院には家族等の同意が必要です。急速を要するのに家族等の同意が得られない場合は応急入院です。
- 退院請求と処遇改善請求は、すべての入院形態の患者とその家族等が都道府県知事に行えます。審査するのは精神医療審査会です。
- 2024年4月施行の改正で医療保護入院に入院期間が設けられましたが、指定医1名の診察という要件は変わっていません。
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