111PM068|第111回 看護師国家試験 過去問

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉において、精神科病院で隔離中の患者に対し、治療上で必要な場合に制限できるのはどれか。

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正解: 1

正答

1.家族との面会

この問題のポイント

精神保健福祉法に基づく入院中の行動制限について、「医療・保護上必要なら制限できるもの」と「どんな場合でも制限できないもの」を区別できるかを問う問題です。判断の鍵は、患者が外部に助けを求める手段は隔離中でも保障されるという原則です。この手段には、信書、人権擁護に関する行政機関や弁護士への連絡、退院請求が含まれます。家族や知人との面会・電話は原則自由ですが、治療上の合理的な理由があれば必要最小限の範囲で制限できます。

解説

行動制限の法的な枠組み

精神科病院の管理者は、入院中の者の医療または保護に欠くことのできない限度で、その行動に必要な制限を行うことができます(第36条)。一方で同条は、次の2点も定めています。

  • 信書の発受の制限や行政機関の職員との面会の制限など、厚生労働大臣が定める制限は行えない
  • 隔離など一定の制限は、精神保健指定医が必要と認めなければ行えない

具体的な内容は厚生労働大臣の告示で定められています。試験対策としては、次の3区分で整理すると解きやすくなります。

  • いかなる場合も行えない制限:信書の発受の制限、都道府県・地方法務局その他の人権擁護に関する行政機関の職員との電話・面会の制限、患者の代理人である弁護士との電話・面会の制限(代理人になろうとする弁護士との面会も含みます)
  • 精神保健指定医の判断が必要な制限:12時間を超える隔離、身体的拘束
  • 医師の判断で行える制限:12時間を超えない隔離、家族・知人などとの電話・面会の制限、任意入院者の開放処遇の制限(開始後おおむね72時間以内に指定医が診察します)

通信・面会の基本的な考え方

処遇の基準では、通信・面会は原則として自由に行われるべきものとされています。患者が家族や地域社会との接触を保つことは、治療や社会復帰の面でも重要だからです。制限できるのは、病状の悪化を招く、治療効果を妨げるなど、医療・保護上の合理的な理由がある場合に限られます。その場合も、方法と範囲は合理的なものでなければなりません。制限したときは理由を診療録に記載し、適切な時点で、制限したことと理由を患者や家族等に知らせます。

なぜ一部の行動は絶対に制限できないのか

隔離中の患者は閉鎖的な環境に置かれるため、処遇の不当さを外部に訴える手段を失いやすい状態です。信書、人権擁護機関・弁護士への連絡、退院請求は、不当な入院や処遇から患者を守る「外部への窓口」です。これを病院側が遮断できてしまうと、権利救済のしくみが働かなくなります。そのため、これらは病状にかかわらず保障されます。

これに対して家族との面会は、制限が合理的となる場面がありえます。たとえば、特定の家族と会うと興奮が強まり、自傷や他害のおそれが高まる場合です。問題文の「治療上で必要な場合に制限できる」に当てはまるのは、この家族との面会だけです。

臨床での看護の視点

隔離は、医師の判断のもとで理由と開始・解除の日時を診療録に記載して行います。本人の意思で閉鎖的な部屋に入る場合は隔離に当たりません。隔離中は次の点が求められます。

  • 定期的な会話などによる注意深い観察と、洗面・入浴・掃除などの衛生面への配慮
  • 医師による原則として少なくとも毎日1回の診察

看護師は、面会制限が医師の指示によるものか、理由が記録され本人に説明されているかを確認します。そのうえで、制限が漫然と続かないよう病状を観察し、医師に報告します。面会を制限する場合も、一律に禁止するのではありません。面会時間を短くする、職員が同席するなど、病状に応じた最小限の方法を検討します。

選択肢の確認

1.家族との面会:正答。家族や知人との面会は原則自由ですが、面会によって病状が悪化する、治療効果が妨げられるなどの合理的な理由があれば、医師の判断で必要最小限の範囲で制限できます。隔離中の患者で、特定の家族との接触が強い興奮を招く場合などが典型例です。制限した場合は理由を診療録に記載し、適切な時点で患者と家族に伝えます。

2.患者からの信書の発信:信書の発受(発信・受信の両方)は、告示で行うことのできない行動制限として定められており、隔離中であっても制限できません。受信した封書に刃物や薬物などの異物が同封されていると判断される場合は、患者自身に開封させ、異物を取り出してから信書を渡すことが認められています。ただし、これは信書そのものを制限するものではありません。家族からの手紙が治療に悪影響を及ぼすおそれがある場合も、病院が患者から手紙を取り上げるのではなく、家族と連絡を取り合って送付を控えてもらうなどの方法をとります。

3.患者からの退院の請求:入院中の者やその家族等は、都道府県知事に対して退院や処遇改善を請求でき(第38条の4)、請求の内容は精神医療審査会で審査されます。これは法律で定められた権利救済の手続きなので、病院が「隔離中だから」「病状が不安定だから」という理由で制限することはできません。入院時には、退院等の請求ができることを書面で告知することも定められています。

4.人権擁護に関する行政機関の職員との電話:都道府県や地方法務局など人権擁護に関する行政機関の職員との電話・面会は、代理人である弁護士との電話・面会とともに、いかなる場合も制限できない行動です。病院は、閉鎖病棟内にも公衆電話などを設置し、都道府県の精神保健福祉主管部局や地方法務局の人権擁護主管部局などの電話番号を見やすい場所に掲示することとされています。家族や知人との電話は制限できる場合があるため、「電話」という手段ではなく「誰との電話か」で判断することが取り違えを防ぐポイントです。

覚えるポイント

  • 絶対に制限できないのは、信書の発受、人権擁護に関する行政機関(都道府県・地方法務局など)の職員との電話・面会、代理人である弁護士との電話・面会の3つです。
  • 家族・知人との電話・面会は原則自由ですが、医療・保護上の合理的な理由があれば医師の判断で最小限の制限ができます。理由を診療録に記載し、本人と家族に知らせます。
  • 退院請求・処遇改善請求は、入院者本人と家族等が都道府県知事に対して行う権利で、精神医療審査会が審査します。病院は制限できません。
  • 隔離は、12時間以内なら医師、12時間を超える場合は精神保健指定医の判断が必要です。身体的拘束は時間にかかわらず指定医の判断が必要です。
  • 判定のコツは、電話・面会は「相手」で判断することです(家族・知人は制限可、行政機関・弁護士は制限不可)。信書は相手を問わず制限できません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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