112AM089|第112回 看護師国家試験 過去問

クリニカルパスについて正しいのはどれか。2つ選べ。

2つ選択
解答・解説を見る

正解: 2・5

正答

2.医療者と患者が治療計画を共有できる。
5.一定の質を保った治療と看護ケアの提供につながる。

この問題のポイント

クリニカルパスの定義と目的、バリアンスの扱い方、適用範囲を問う問題です。「標準化による質の確保」と「患者・多職種との計画の共有」という2つの柱を押さえていれば正答できます。誤りの選択肢は、適用範囲や役割を「できない」「不要になる」と狭く言い切るものと、バリアンスを判断する時期をずらしたものです。

解説

クリニカルパスとは

クリニカルパス(クリティカルパスとも呼ばれます)は、特定の疾患・手術・検査について、入院から退院までに行う内容を時間軸に沿って一覧にした標準的な診療計画です。時間軸は、入院日、手術前日、術後1日目のように区切られます。一覧にする内容は、検査・処置・投薬・食事・安静度・観察項目・患者指導などです。各時点で患者が到達すべき状態をアウトカム(達成目標)として設定し、その達成を日々評価しながら進めていく点が特徴です。もとは工業分野の工程管理の手法を医療に応用したもので、日本では1990年代以降に広く普及しました。

目的と利点

  • 医療の標準化と質の確保:根拠に基づく標準的な手順を定めるので、担当者が変わっても一定水準の治療と看護を提供できます。ケアの抜け落ちや重複が減るため、医療安全にも役立ちます。
  • 効率化:不要な検査や処置が減り、在院日数の短縮や医療資源の適正な使用につながります。
  • チーム医療の推進:医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・医療ソーシャルワーカーなどが共同で作成し、同じ計画を共有します。そのため、職種間の役割分担と情報交換が明確になります。
  • 患者との計画共有:医療者用パスとは別に、イラストや平易な言葉で示した患者用パスを用いて説明します。患者・家族は「いつ・何が行われ・いつ頃退院できるか」を具体的に理解できます。その結果、インフォームドコンセントの充実、不安の軽減、早期離床やセルフケアへの主体的な参加につながります。
  • 教育:新人や異動してきた職員が、標準的な経過を学ぶ手がかりにもなります。

一方で、標準化には画一的なケアに陥る危険もあります。これを補うのがバリアンスの考え方です。

バリアンス

バリアンスとは、パスで設定したアウトカムが達成されない状態、あるいは予定された経過から外れた状態をいいます。主な分類は次のとおりです。

  • 経過の方向による分類:予定より早く回復する「正のバリアンス」と、合併症などで遅れる「負のバリアンス」があります。
  • パスを続けられるかによる分類:パスを続けながら対応できる「変動」と、パスを中止せざるを得ない「逸脱」に分けることもあります。
  • 原因による分類:患者要因、医療者要因、システム(病院の体制)要因、社会的要因(退院先の調整など)に分けられます。

バリアンスは、アウトカムを評価する各時点(多くは日ごと)で判断します。見つけたらその場で原因を考え、個別の対応を加えます。さらに、集めたバリアンスを分析してパスを見直し、医療の質を継続的に改善していきます。つまりパスは「決まった手順をこなす表」ではありません。標準から外れた患者を早く見つけ、個別性に応じたケアにつなげる道具でもあります。看護師は日々のアウトカム評価を担うことが多く、バリアンスを早期に発見する重要な立場にあります。

適用範囲の広がり

パスは病院の入院診療から始まりました。現在は、急性期病院から回復期リハビリテーション病院、かかりつけ医、在宅療養までを一つの計画でつなぐ地域連携クリニカルパスも用いられています。大腿骨頸部骨折や脳卒中、がんなどで普及しており、診療報酬上も評価されています。病院と地域が切れ目なく連携するための仕組みとして、退院支援や在宅移行の場面で活用されています。

正答に至る判断

クリニカルパスの本質は、「標準化による質の確保」と「計画の共有」です。この2点に合致するのは選択肢2と選択肢5です。残りの選択肢は、適用範囲を限定する、バリアンスの判断を遅らせる、多職種連携を否定する、という点でパスの仕組みと矛盾します。

選択肢の確認

1.在宅療養には適用できない。:地域連携クリニカルパスとして、急性期病院から回復期病院、かかりつけ医、訪問看護を含む在宅療養までを一連の計画で共有する形で用いられています。入院中だけの道具ではなく、退院支援や在宅移行の場面でも活用されます。「入院診療から始まった」という歴史を「入院にしか使えない」という限定と取り違えないよう注意が必要です。

2.医療者と患者が治療計画を共有できる。:正答。患者用パスを用いて、入院中の検査・処置・食事・安静度・退院の目安などを時間の流れに沿って説明します。これにより、患者・家族は治療の見通しを理解できます。インフォームドコンセントの充実、不安の軽減、回復への主体的な参加につながる、パスの重要な目的の一つです。

3.バリアンス発生の判断は退院日に行う。:バリアンスは、日ごとなどに設定したアウトカムを評価する各時点で判断し、見つけた時点で原因を分析して対応します。退院日まで待っていては、合併症などへの対処が遅れ、患者の安全を損ないます。蓄積したバリアンスを後で集計・分析してパスを改訂することは行いますが、これは発生の判断とは別の段階の活動です。

4.多職種間のコミュニケーションが不要になる。:パスは多職種が共同で作成・運用する共通の計画であり、職種間の情報共有とコミュニケーションを促進する道具です。バリアンスが生じた際には、各職種が協議して対応を決める必要があります。話し合いが不要になることはありません。「標準化されているから個別の相談はいらない」という考え方が、この選択肢の誤りの核心です。

5.一定の質を保った治療と看護ケアの提供につながる。:正答。根拠に基づく標準的な診療手順を時間軸に沿って定めることで、担当者や経験年数による差が小さくなり、ケアの抜け落ちや重複も防げます。医療の標準化と質の保証は、パスの中心的な目的です。

覚えるポイント

  • クリニカルパスは、特定の疾患・治療の標準的な診療計画を時間軸で示したものです。各時点のアウトカム(達成目標)を評価しながら進めます。
  • 目的・利点は、医療の標準化と質の保証、チーム医療の推進、患者用パスによる計画共有とインフォームドコンセント、在院日数の短縮と効率化、職員教育です。
  • バリアンスはアウトカムの未達成や予定からの逸脱で、各評価時点(多くは日ごと)で判断します。原因を分析して個別に対応し、蓄積したデータはパスの改善に生かします。
  • バリアンスの分類として、正のバリアンスと負のバリアンス、変動と逸脱、原因別の分類(患者・医療者・システム・社会的要因)を押さえておきます。
  • 地域連携クリニカルパスにより、急性期から回復期・在宅まで適用されます(大腿骨頸部骨折、脳卒中、がんなど)。
  • パスは個別性を否定するものではなく、バリアンスへの対応で個別性を補います。「不要になる」「適用できない」と言い切る選択肢には注意が必要です。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。

関連問題

← 112AM088112AM090 →
学習アプリでこの問題を解く(記録・メモ・カード化)