112AM086|第112回 看護師国家試験 過去問
緑内障 glaucoma について正しいのはどれか。2つ選べ。
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正解: 2・5
正答
2.視神経が萎縮する。
5.眼圧の上昇が原因となる。
この問題のポイント
緑内障の本態が視神経の障害であり、その主な原因が眼圧の上昇であることを理解しているかを問う問題です。「緑内障は、眼圧が視神経を傷めて視野が欠ける病気」と一文で捉えられれば、2つを選べます。残りの選択肢は、主に甲状腺眼症、硝子体出血、糖尿病網膜症など別の疾患の特徴となる所見です。眼のどの構造にどの病気が起こるかを整理しておくことが、見分ける鍵になります。
解説
房水の流れと眼圧
眼球の内圧(眼圧)は主に房水によって生じ、この圧によって眼球の形が保たれています。房水は次の順に流れます。
- 毛様体で産生されます。
- 後房から瞳孔を通って前房に入ります。
- 主に、角膜と虹彩の根元がつくる隅角の線維柱帯から、Schlemm〈シュレム〉管を経て眼外の静脈へ排出されます。
眼圧は、房水の産生と排出のバランスで決まります。正常値はおおむね10〜21 mmHgとされます。排出路が狭くなったり流れが滞ったりすると房水がたまり、眼圧が上がります。
緑内障の病態と病型
上昇した眼圧は視神経乳頭に負担をかけます。視神経乳頭は、網膜の神経線維が1か所に集まり、視神経となって眼球から出ていく部位です。視神経線維が徐々に失われると、眼底検査で視神経乳頭の陥凹が拡大してみえ、視神経は萎縮していきます。その結果として視野が欠けます。つまり緑内障は「眼圧の上昇(原因)→視神経の萎縮(病変)→視野欠損(症状)」という流れで理解でき、選択肢2と選択肢5がこれに当たります。
視野障害には次の特徴があります。
- 中心から少し外れた部位に見えにくい部分(暗点)が現れ、しだいに広がることが多いです。
- もう一方の眼が補うため、自覚されにくいです。
- 中心視力は末期まで保たれやすいです。
失われた視神経や視野は、治療しても回復しません。そのため、早期に発見し、眼圧を下げて進行を抑える治療を続けることが原則です。厚生労働省研究班の調査では、わが国の視覚障害(身体障害者手帳の新規交付)の原因疾患の第1位は緑内障となっています。
主な病型は次のとおりです。
- 原発開放隅角緑内障:隅角は開いていますが、線維柱帯で排出が滞って眼圧が上がり、ゆっくり進行する慢性型です。
- 正常眼圧緑内障:眼圧が正常範囲でも視神経障害が進む型で、広義の原発開放隅角緑内障に含まれます。日本緑内障学会の多治見スタディ(2000〜2001年)では、40歳以上の約20人に1人が緑内障と判定されました。その多くが正常眼圧緑内障で、大半はそれまで診断されていませんでした。その人の視神経にとっては眼圧が高すぎると考えられ、治療はやはり眼圧を下げることが基本です。
- 原発閉塞隅角緑内障:虹彩によって隅角がふさがる型です。急にふさがると急性緑内障発作となり、激しい眼痛と頭痛、悪心・嘔吐、眼の充血、角膜浮腫による霧視、光の周りに虹が見える虹視症、中等度の散瞳が起こります。頭痛や嘔吐から脳血管疾患や消化器疾患と間違われやすく、治療が遅れると短期間で失明するおそれがあります。縮瞳薬(ピロカルピン)の点眼や高浸透圧薬(D-マンニトール)の点滴静注などで緊急に眼圧を下げます。そのうえで、レーザー虹彩切開術などで房水の通り道を確保します。
- 続発緑内障:ほかの眼疾患や薬剤によって眼圧が上がる型です。ステロイドの使用、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症に伴う新生血管などが原因となります。
看護につながる知識
慢性の緑内障の治療は点眼薬が中心で、効果が不十分な場合はレーザー治療や手術を行います。
- プロスタグランジン関連薬:房水の排出を促し、第一選択として広く使われます。まつ毛が伸びる、まぶたが黒ずむなどの副作用があります。
- β遮断薬:房水の産生を抑えます。点眼でも全身に吸収されて気管支収縮や徐脈を起こすことがあるため、気管支喘息や心疾患の既往を確認します。点眼後に目を閉じて目頭(涙嚢部)を軽く押さえると、全身への吸収を減らせます。
アトロピンやブチルスコポラミンなどの抗コリン薬は散瞳を起こし、散瞳によって虹彩の周辺部が厚みを増して隅角を狭めます。そのため閉塞隅角緑内障では急性発作の誘因となり、投与は禁忌です。内視鏡検査の前処置や鎮痙薬の投与前に、緑内障の有無と病型を確認するのはこのためです。
慢性の緑内障は自覚症状に乏しい病気です。症状がなくても点眼を毎日続ける意味を、患者が理解できるよう支援することも看護の重要な役割です。
選択肢の確認
1.眼球が突出する。:眼球突出は、Basedow〈バセドウ〉病に伴う甲状腺眼症や眼窩腫瘍でみられます。眼窩内の外眼筋や脂肪が増大したり腫瘍ができたりして、眼球が前方へ押し出される病態です。緑内障は眼球内部の圧が視神経を傷める疾患であり、眼球が前に出る所見は伴いません。なお、乳幼児の先天緑内障では、眼圧によって柔らかい眼球が大きくなる「牛眼」がみられます。これは眼球の拡大であり、突出とは別のものです。
2.視神経が萎縮する。:正答。緑内障の本態は視神経の障害です。網膜神経節細胞の軸索である視神経線維が失われて視神経乳頭の陥凹が拡大します。こうして視神経の萎縮が進むことで、特徴的な視野欠損が生じます。
3.硝子体が混濁する。:硝子体の混濁は、増殖糖尿病網膜症や網膜裂孔に伴う硝子体出血、ぶどう膜炎などでみられ、飛蚊症や急な視力低下の原因となります。緑内障の病変の主体は視神経であり、硝子体の混濁は緑内障そのものの所見ではありません。急性緑内障発作では角膜浮腫によって角膜が濁ることがありますが、これは角膜の変化です。「眼の中が濁る病気」として取り違えやすい白内障は、硝子体ではなく水晶体が混濁する疾患です。
4.眼底に出血がみられる。:眼底出血を主な所見とするのは、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、高血圧性網膜症などです。いずれも網膜の血管が障害されて、網膜に出血が多発する病気です。緑内障の眼底の中心的な所見は視神経乳頭陥凹の拡大であり、緑内障は眼底出血を主な所見とする疾患ではありません。なお、緑内障では視神経乳頭の縁に小さな線状の出血(乳頭出血)がみられることがあります。乳頭出血は正常な眼ではまれで、特に正常眼圧緑内障で多くみられ、緑内障に特徴的な所見の一つとされます。緑内障が進行する危険因子でもあります。ただし、緑内障の人に常にみられるものではありません。一時的に現れて吸収される、乳頭の縁に限られた小さな出血です。網膜の血管の病気による眼底出血とは区別して理解しておきましょう。
5.眼圧の上昇が原因となる。:正答。房水の排出が妨げられて眼圧が上がると、視神経が障害されます。眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障もありますが、眼圧は緑内障の最大の危険因子です。眼圧を下げることが、効果が確かめられている治療の基本です。
覚えるポイント
- 緑内障は、眼圧による視神経の萎縮(視神経乳頭陥凹の拡大)と視野欠損が本態です。失われた視野は戻りません。
- 房水は、毛様体で産生→後房→瞳孔→前房→隅角(線維柱帯→シュレム管)で排出、の順に流れます。眼圧の正常値はおおむね10〜21 mmHgです。
- 日本では眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障が最も多く、自覚症状に乏しいため、定期的な眼科検診で早期発見することが大切です。緑内障は、わが国の視覚障害の原因疾患の第1位です。
- 急性緑内障発作では、激しい眼痛・頭痛、悪心・嘔吐、充血、霧視、虹視症、散瞳が起こります。緊急に眼圧を下げる必要があります。
- 抗コリン薬(アトロピン、ブチルスコポラミンなど)は散瞳により発作を誘発しうるため、投与前に緑内障の有無を確認します。閉塞隅角緑内障では禁忌です。
- 構造と疾患の対応を整理しておきます。水晶体の混濁は白内障、硝子体の混濁は硝子体出血や炎症、眼底出血は糖尿病網膜症など、眼球突出は甲状腺眼症などです。緑内障でみられる乳頭出血は、視神経乳頭の縁に限られた小さな出血です。
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