112AM109|第112回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(34歳、初産婦)は妊娠39週6日に3,000 gの女児を出産した。分娩後の母児の経過は順調である。出生後12時間、看護師がAさんの児の観察を行った。児は活気がありバイタルサインは安定しており、排便が認められた。直接授乳を開始している。出生後の排尿回数は4回、排便回数は3回である。便の写真(別冊No. 2)を別に示す。このときのAさんの児の便はどれか。

112AM109の問題画像
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正解: 2

正答

2.B

この問題のポイント

生まれてから12時間たった正期産児の便を、4枚の写真から選ぶ問題です。判断の鍵は「出生後12時間」という時期と、「直接授乳を始めたばかりで、飲めている量はまだごくわずか」という状況です。新生児の便は、日齢と哺乳量に応じて胎便→移行便→乳便と変わります。これを押さえていれば、この時期の便は黒緑色で粘り気の強い胎便だと判断できます。

解説

問題文の手がかり

  • 妊娠39週6日に3,000 gで生まれた正期産児です。活気があり、バイタルサインも安定しています。母児とも経過は順調で、異常を疑わせる情報はありません。
  • 観察したのは出生後12時間の時点です。直接授乳は始まっていますが、生後1日目の初乳の分泌量はわずかです。乳汁によって便の性状が変わり始めるのは、哺乳量が増える生後2〜3日ごろからです。
  • 排尿4回、排便3回と、尿も便も順調に出始めています。

「直接授乳を開始している」と書かれているため、黄色や緑色の便を選びたくなるかもしれません。しかし、この時点で選ぶべきなのは「哺乳の影響がまだ表れていない、生まれて間もない時期の正常な便」です。

新生児の便の移り変わり

  • 胎便:胎児のころから腸にたまっていた便です。胎児が飲み込んだ羊水の成分(うぶ毛、胎脂、皮膚から剝がれた細胞など)、消化管の分泌物、はがれ落ちた腸の上皮細胞、胆汁色素などからできています。黒緑色(暗緑色)で粘り気が強く、においはほとんどありません。正期産児の大部分は生後24時間以内に初めての胎便を出し、48時間以内にはほぼ全員が出します。胎便は生後2〜3日ごろまで続きます。
  • 移行便:哺乳量が増えてくる生後2〜3日ごろから、胎便に乳汁からできた便が混ざり、緑色〜黄緑色の泥状の便になります。
  • 乳便:生後4〜5日ごろ以降は、乳汁からできた便になります。母乳栄養児の便は濃い黄色で、泥状〜軟らかい便です。腸内ではビフィズス菌が優勢なため酸っぱいにおいがし、回数も多めです。人工乳栄養児の便は母乳栄養児より硬めで、色は淡黄色〜黄褐色です。においは強く、回数はやや少ない傾向があります。
  • 離乳食が始まると固形分が増え、便は形をもち、茶色っぽくなっていきます。

なお、子宮内で低酸素状態などにさらされた胎児は、胎便を羊水の中に出してしまうことがあります(羊水混濁)。この羊水を生まれる前後に吸い込むと、胎便吸引症候群の原因になります。

写真の読み取りと判断

写真はどれも、おむつに付いた便を写したもので、それぞれ性状の説明が添えられています。Bは黒に近い濃い緑色で、表面がつやつや光り、おむつにねっとり張り付くように広がっています。説明も「粘稠性がある黒緑色」で、胎便の特徴と一致します。

ほかの3枚は、いずれも乳汁や食べ物を消化してできた便で、生後12時間の新生児ではまだ見られません。

  • A:小さな塊が集まった黄土色の便
  • C:おむつに大きく広がった濃い黄色の泥状便
  • D:黄緑色の粒が混じる緑色の泥状便

したがって、この児の便はBです。

観察の実際と異常の見分け

  • 初めての胎便と初めての排尿の確認は、消化管や尿路に通過障害がないかを見るための大切な観察です。生後24時間を過ぎても胎便が出ない場合や、おなかの張り・嘔吐を伴う場合は、鎖肛(直腸肛門奇形)、ヒルシュスプルング病、腸閉鎖、胎便栓症候群などを疑って医師に報告します。
  • 胎便には多量のビリルビンが含まれています。胎便がなかなか出ないとビリルビンが腸から再び吸収され(腸肝循環)、黄疸を強める原因になります。初乳には胎便を出しやすくする緩下作用があるとされ、生まれて早い時期から何度も授乳することは、黄疸が強くなるのを防ぐことにもつながります。
  • 生後数日は、胎便や尿の排泄、不感蒸泄で失う水分に比べて飲める量が少ない時期です。そのため出生体重の5〜10%程度の生理的体重減少が起こり、多くは生後1〜2週ごろまでに出生体重に戻ります。便の色の変化は、飲める量が増えているかどうかの目安にもなります。生後4〜5日を過ぎても胎便のような便が続く場合は、哺乳量不足を考えます。
  • 灰白色〜淡いクリーム色の便は、胆道閉鎖症など胆汁がうまく流れない病気を疑うサインです。退院前に、母子健康手帳の便色カードを使って家庭でも便の色を確かめるよう保護者に伝えます。黒いタール状の便や血便は、消化管出血(新生児メレナなど)を疑うサインです。黒っぽい便をすべて胎便だと思い込まないことが大切です。

選択肢の確認

1.A:小さな塊がいくつも集まった、茶色がかった黄色(黄土色)の便です。新生児期の軟らかい便と違って形ができ始めており、固形分の多い便です。このような便は、母乳栄養児より便が硬めになる人工乳栄養児や、離乳食が始まって固形分が増えた乳児で見られます。まだほとんど飲めていない生後12時間の新生児の便ではありません。黄色っぽいので乳便と混同しやすいのですが、塊になって形がある点が違います。

2.B:正答。黒に近い濃い緑色で表面につやがあり、おむつにねっとり張り付いて広がる粘り気の強い便で、胎便の典型的な性状です。胎便の多くは生後24時間以内に初めて出て、生後2〜3日ごろまで続きます。出生後12時間で3回排便したこの児の便として矛盾がありません。まだ乳汁の影響を受けていないため、黄色みもありません。

3.C:おむつに大きく広がった濃い黄色の泥状の便で、母乳栄養児の乳便の特徴です。乳便は、飲める量が増えて胎便・移行便を経たあと、生後4〜5日ごろ以降に見られます。酸っぱいにおいがあり、回数も多くなります。「黄色い便=正常な新生児の便」と覚えていると選びがちですが、これは授乳が軌道に乗ってからの便で、生後12時間の時点ではまだ見られません。

4.D:黄緑色の粒が混じった緑色の泥状の便で、胎便から乳便へ移る途中の移行便にあたります。移行便は、飲める量が増えてくる生後2〜3日ごろから見られます。胎便に乳汁からできた便が混ざるため、色は黒緑色から緑色〜黄緑色へと明るくなっていきます。生後12時間の時点では、まだ早すぎます。なお、乳便の時期の母乳栄養児でも、便に含まれるビリルビンが空気に触れて酸化すると緑色になることがあります。緑色の便というだけで異常とは判断しません。

覚えるポイント

  • 新生児の便は、胎便(黒緑色・粘り気が強い・ほぼ無臭)→移行便(生後2〜3日ごろ〜、緑色〜黄緑色の泥状)→乳便(生後4〜5日ごろ〜、黄色)の順に変わります。
  • 初めての胎便と初めての排尿は、多くが生後24時間以内です。24時間を過ぎても胎便が出ない場合は、鎖肛、ヒルシュスプルング病、腸閉鎖などを疑います。
  • 母乳栄養児の便は濃い黄色の泥状〜軟便で、酸っぱいにおいがあり、回数が多めです。人工乳栄養児の便は硬めで淡黄色〜黄褐色、においが強めです。緑色の便は空気による酸化でも起こるため、それだけでは異常としません。
  • 灰白色の便は胆道閉鎖症など(母子健康手帳の便色カードで確認)を、黒いタール状の便や血便は消化管出血(新生児メレナなど)を疑います。
  • 胎便がなかなか出ないと、腸肝循環によって黄疸が強まります。早い時期から何度も授乳して、胎便を出しやすくします。

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