112PM021|第112回 看護師国家試験 過去問
成人の気道の異物除去を目的とするのはどれか。
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正解: 4
正答
4.腹部圧迫法〈Heimlich〈ハイムリック〉法〉
この問題のポイント
一次救命処置で使う4つの手技について、それぞれの目的を区別できるかを問う問題です。手がかりは問題文の「成人」と「気道の異物除去」の2語です。異物を物理的に押し出す手技は腹部圧迫法です。胸骨圧迫は循環、人工呼吸は換気、頭部後屈顎先挙上法は舌根沈下による気道閉塞の解除がそれぞれの目的だと整理しておけば、迷わず選べます。
解説
手技を目的で整理する
一次救命処置の手技は、「何を補うためのものか」で分けると覚えやすくなります。
- 循環を補う:胸骨圧迫
- 換気(酸素の取り込みと二酸化炭素の排出)を補う:人工呼吸
- 気道を開く(舌根沈下の解除):頭部後屈顎先挙上法、下顎挙上法
- 気道内の異物を取り除く:背部叩打法、腹部圧迫法(腹部突き上げ法)、胸部突き上げ法
この問題は「異物除去」を目的とする手技を問うているので、最後のグループから選びます。選択肢の中で該当するのは腹部圧迫法だけです。
腹部圧迫法の機序と方法
救助者は窒息している人の背後に立ち、両腕を腰に回します。片手で握りこぶしを作り、親指側を臍の少し上(みぞおちより十分下)に当てます。もう一方の手でそのこぶしを包み、手前上方へすばやく突き上げます。
上腹部を急に圧迫すると横隔膜が押し上げられ、肺の中の空気の圧が急に高まります。このときに生じる呼気の勢いが「人工的な咳」の役割を果たし、気道に詰まった異物を押し出します。日本の蘇生ガイドラインでは「腹部突き上げ法」と呼ばれており、同じ手技を指します。
窒息への対応の流れ
- 気づく:窒息のサインは、喉を手でつかむ仕草(チョークサイン)、声が出ない、有効な咳ができない、顔色が急に悪くなる、などです。
- 咳ができる場合:強い咳は最も有効な異物除去の手段です。咳を続けるよう促し、状態の変化を注意深く観察します。
- 咳ができず、反応がある場合:周囲に119番通報とAEDの手配を依頼します。そのうえで背部叩打法と腹部圧迫法を組み合わせ、異物が取れるか、反応がなくなるまで繰り返します。
- 反応がなくなった場合:ただちに心停止に準じて、胸骨圧迫から心肺蘇生を始めます。気道確保のときに口の中に異物が見えれば取り除きますが、見えないのに指を入れて探ることはしません。
腹部圧迫法を用いない対象
- 妊婦(腹部が大きい場合)、高度の肥満者:腹部に腕を回せないことや、子宮・胎児への影響があることから、胸部突き上げ法を用います。
- 乳児(1歳未満):腹部臓器を損傷しやすいため、背部叩打法と胸部突き上げ法を行います。
実施後の注意と臨床での意義
腹部圧迫法は、腹部の内臓を損傷するおそれがあります。そのため、異物が取れて回復した場合でも医師の診察を受けるよう勧めます。救急隊に引き継ぐときは、腹部圧迫法を行ったことを伝えます。
病棟や高齢者施設では、嚥下機能が低下した高齢者の食事中の窒息に出会う機会が少なくありません。まず咳ができるかを確かめ、できなければ応援を呼びながら異物除去の手技を始めます。同時に、吸引器や救急カートの準備を並行して進める判断が求められます。
選択肢の確認
1.胸骨圧迫:心停止の傷病者に対して、胸骨の下半分を約5cmの深さ(6cmを超えない)で、1分間に100〜120回のテンポで圧迫し、脳や心臓への血流を生み出す手技です。目的は循環の維持です。窒息から反応がなくなった場合は胸骨圧迫から心肺蘇生を始め、その圧迫で異物が押し出されることもあります。しかしそれは副次的な効果であり、異物除去を目的とした手技ではありません。反応がある窒息者に行う手技でもありません。
2.人工呼吸:口対口や、医療現場ではバッグ・バルブ・マスクを使って肺に空気を送り込み、酸素化と換気を補う手技です。1回約1秒かけ、胸が上がる程度に吹き込みます。気道が異物でふさがれていれば空気は入らず、異物を取り除く効果はありません。吹き込んでも胸が上がらないことが、気道閉塞に気づく手がかりになる場合があります。
3.頭部後屈顎先挙上法:意識のない人では舌根が沈下して咽頭をふさぎやすくなります。この手技は、額を押さえて頭を後ろに傾け、下顎の先を持ち上げることで舌根を前方に引き上げ、気道を開通させるものです。あくまで気道の「確保」であり、気道内の異物を取り除くものではありません。頸椎損傷が疑われる場合は、頭部を後屈させない下顎挙上法を用いることも併せて問われやすい知識です。
4.腹部圧迫法〈Heimlich〈ハイムリック〉法〉:正答。背後から臍の少し上を手前上方へすばやく突き上げて横隔膜を押し上げ、肺内の空気圧を急に高めます。その呼気の勢いで気道内の異物を押し出す手技であり、まさに成人の気道異物除去を目的としています。適応は、反応があり、咳ができない・声が出ないといった重度の気道閉塞がある場合です。
覚えるポイント
- 手技の目的:胸骨圧迫=循環、人工呼吸=換気、頭部後屈顎先挙上法・下顎挙上法=気道確保(舌根沈下の解除)、背部叩打法・腹部圧迫法=異物除去。
- 窒息のサインはチョークサイン、声が出ない、咳ができないこと。咳ができるうちは咳を促して見守る。
- 咳ができず反応がある成人には、背部叩打法と腹部圧迫法を、異物が取れるか反応がなくなるまで繰り返す。
- 妊婦・高度肥満者は胸部突き上げ法、乳児は背部叩打法と胸部突き上げ法で対応し、腹部圧迫法は用いない。
- 反応がなくなったら、ただちに胸骨圧迫から心肺蘇生を始める。異物は見えれば取り除き、見えないのに指で探らない。
- 腹部圧迫法の後は内臓損傷の可能性があるため、回復しても医師の診察を勧める。
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