112PM020|第112回 看護師国家試験 過去問
入浴の援助で正しいのはどれか。
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正解: 3
正答
3.脱衣室と浴室の温度差を小さくする。
この問題のポイント
入浴が血圧や心臓に与える影響を理解し、安全な入浴援助の基本を判断できるかを問う問題です。判断の鍵は次の4点です。
- 温度変化による急激な血圧変動(ヒートショック)を防ぐこと
- 適切な湯温
- かけ湯で体を慣らしてから浴槽に入る手順
- 発汗による脱水を防ぐこと
いずれも「身体に急な負荷をかけない」という一つの原則から判断できます。
解説
入浴の効果と身体への負担
入浴には次のような利点があります。
- 皮膚を清潔に保つ
- 温熱作用で血行を促す
- 筋緊張をやわらげる
- 爽快感やリラックス効果をもたらす
一方で入浴は、温度変化・静水圧・発汗によって循環器系に大きな負荷をかけます。援助者には、効果を引き出しながら負荷を最小限にする工夫が求められます。
温度差による血圧変動(ヒートショック)
暖かい居室から寒い脱衣室に移動して衣服を脱ぐと、寒冷刺激で末梢血管が収縮し、血圧が上がります。熱い湯に浸かると、はじめは熱刺激でさらに血圧が上がります。体が温まると末梢血管が広がり、今度は血圧が急に下がります。
このように短時間で血圧が大きく変動することをヒートショックと呼びます。脳出血・脳梗塞、心筋梗塞、不整脈、失神の誘因となり、浴槽内で意識を失えば溺水につながります。高齢者は血圧を調節する機能や温度を感じる力が低下しているため、特に危険です。家庭の浴槽での溺死は、冬季の高齢者に多いことが知られています。
予防の基本は、脱衣室と浴室をあらかじめ暖め、居室との温度差を小さくすることです。具体的には次のような方法があります。
- 暖房器具で脱衣室を暖めておく
- 入浴前に浴槽のふたを開ける
- シャワーで湯を出して浴室を暖める
湯温と入浴の手順
38〜41℃程度のぬるめの湯は副交感神経を優位にし、リラックス効果をもたらします。42℃を超える高温浴は交感神経を刺激し、血圧と心拍数を上げます。さらに発汗で脱水が進み、血液が粘稠になります。そのため、心疾患や高血圧のある人、高齢者には負担が大きくなります。
入浴時には次の点に配慮します。
- 入浴前にバイタルサインと体調を確認し、排泄を済ませておきます。
- 食直後・空腹時・飲酒後の入浴は避けます。
- 浴室に入ったら、足先など心臓から遠い部位からかけ湯をして体を湯温に慣らし、それから浴槽に入ります。
- 肩まで深く浸かると、静水圧で心臓に戻る血液が増え、心臓の負担が増します。心疾患のある人には半身浴を勧めます。
- 湯に浸かる時間は長くしすぎず、10分程度までにとどめます。
- 浴槽から出るときは、起立性低血圧に注意してゆっくり立ち上がります。
- 入浴前後には水分補給を促します。
これらは病棟での入浴介助だけでなく、在宅療養者や高齢者世帯への生活指導でもそのまま使える知識です。
選択肢の確認
1.入浴前後は水分制限をする。:入浴中は発汗によって体内の水分が失われます。脱水や血液粘稠度の上昇から、脳梗塞・心筋梗塞などの血栓症を招くおそれがあります。そのため入浴前後には、制限ではなく水分補給を促します。心不全や腎不全などで医師から1日の水分摂取量を制限されている人もいますが、その場合も指示の範囲内で配分を調整します。入浴を理由に水分を控えさせるわけではありません。
2.入浴時の湯温は45 ℃とする。:45℃は高温浴にあたり、交感神経を強く刺激して血圧と心拍数を急上昇させます。発汗による脱水も起こしやすく、皮膚の弱い高齢者では熱傷の危険もあります。適温は40℃前後のぬるめの湯です。高齢者は温度感覚が鈍くなり、熱い湯を好む傾向があります。本人の感覚に任せず、湯温計で確認することが大切です。
3.脱衣室と浴室の温度差を小さくする。:正答。居室・脱衣室・浴室の温度差が大きいと、寒冷刺激による血圧上昇と、温熱による血管拡張での血圧低下が短時間に起こります。これが脳血管障害、心筋梗塞、失神、溺水の原因になります(ヒートショック)。あらかじめ脱衣室と浴室を暖めて温度差を小さくすることが、安全な入浴援助の基本です。
4.浴室に入り、始めに浴槽に浸かるように促す。:いきなり全身を湯に沈めると、温熱刺激と静水圧が一度に加わります。その結果、急激な血圧変動と心臓への負担が生じます。まず足先など心臓から遠い部位からかけ湯をし、体を湯温に慣らしてから浴槽に入るよう促します。かけ湯には、体表の汚れを落として浴槽の湯を清潔に保つ目的もあります。
覚えるポイント
- 入浴援助の大原則は「急な温度変化・急な負荷を避ける」ことです。脱衣室と浴室を暖め、居室との温度差を小さくします。
- 湯温は40℃前後のぬるめにします。42℃を超える高温浴は交感神経を優位にし、血圧・心拍数の上昇と脱水を招きます。湯温は湯温計で確認します。
- 浴槽に入る前に、心臓から遠い部位(足先)からかけ湯をして体を慣らします。
- 入浴前後は水分を制限せず、補給を促します。食直後・空腹時・飲酒後の入浴は避けます。
- 心疾患のある人には半身浴を勧め、静水圧による心臓の負担を軽くします。浴槽から出るときは、起立性低血圧に注意してゆっくり立ち上がります。
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