112PM019|第112回 看護師国家試験 過去問
不活動状態が持続することで生じるのはどれか。
解答・解説を見る
正解: 1
正答
1.廃用症候群 disuse syndrome
この問題のポイント
「不活動状態が持続することで生じる」、つまり安静臥床や活動量の低下が続いた結果として起こる状態を選ぶ問題です。廃用症候群は「使わないこと」そのものが原因で全身の機能が低下する病態です。他の3つの症候群とは、何が原因で起こるのかという因果関係で区別できます。緊張病症候群は精神症状の集まり、慢性疲労症候群は原因不明の強い疲労、シックハウス症候群は室内の化学物質が原因です。
解説
廃用症候群は、心身を動かさない状態が続いた結果、心身のさまざまな機能が低下した状態の総称です。動かさなくなるきっかけには、疾病や治療のための安静、ギプスによる固定、意欲の低下などがあります。生活が不活発になることで起こる点を強調して「生活不活発病」とも呼ばれます。災害時の避難所生活で高齢者に生じやすいことでも知られています。問題文の「不活動状態が持続することで生じる」は、この定義そのものです。
症状は特定の臓器に限らず、全身に及びます。
- 筋・骨格系:筋萎縮と筋力低下が起こります。安静臥床では、1週間でおよそ10〜15%の筋力が低下するとされます。関節拘縮も起こり、臥床中は足関節が底屈位になりやすいため尖足が生じやすくなります。骨萎縮(廃用性骨粗鬆症)も進みます。
- 循環器系:起立性低血圧、心肺機能の低下がみられます。下肢の静脈血がうっ滞するため、深部静脈血栓症も起こりやすくなります。
- 呼吸器系:換気量が減り、痰を出しにくくなるため、無気肺や沈下性肺炎を起こします。
- 消化器系:食欲が低下し、腸蠕動の低下から便秘になります。
- 泌尿器系:骨から溶け出したカルシウムが尿中に増えるため尿路結石ができやすくなり、尿路感染症も起こりやすくなります。
- 皮膚:同じ部位が圧迫され続けるため、褥瘡が生じます。
- 精神・神経系:抑うつ、意欲低下、認知機能低下、せん妄がみられます。
これらの変化は互いに悪循環をつくります。筋力低下や起立性低血圧があると離床がつらくなり、臥床時間がさらに延びて機能低下が進みます。高齢者は予備力が小さいため、短期間の臥床でも急速に進行し、「寝たきり」の入口になりやすい点が重要です。
看護では、「起こってから治す」よりも「起こさない」ことが基本です。
- 病状が許す範囲で早期離床を図ります。
- ベッド上でも、関節可動域訓練、体位変換、良肢位の保持を行い、座位の時間を確保します。
- 食事・整容・排泄などを患者自身が行える場面を増やすことも、有効な予防策です。
- 離床を始めるときは、起立性低血圧によるふらつきや転倒に注意します。ヘッドアップ、端座位、立位、歩行と段階的に進め、各段階で血圧や自覚症状を確認します。
リハビリテーション領域には、廃用症候群のほかに、運動のしすぎで起こる「過用症候群」と、誤った方法で運動することで起こる「誤用症候群」があります。3つをセットで覚えると整理しやすくなります。
選択肢の確認
1.廃用症候群 disuse syndrome:正答。安静臥床などの不活動が続いた結果、筋・関節・骨・循環・呼吸・消化・皮膚・精神など全身の機能が低下した状態です。問題文の「不活動状態の持続で生じる」にそのまま当てはまります。
2.緊張病症候群 catatonia syndrome:昏迷、カタレプシー(他動的にとらされた姿勢を保ち続ける)、蝋屈症、拒絶症、無言症、常同症、反響言語などを特徴とする精神運動性の症候群です。統合失調症、うつ病や双極性障害、脳炎などの身体疾患に伴って起こります。昏迷状態では身体を動かさないため「不活動」と結びつけやすいのですが、因果関係は逆です。緊張病症候群は不活動を引き起こす側であり、不活動の結果として起こるものではありません。昏迷が続けば二次的に廃用症候群、褥瘡、深部静脈血栓症を生じうるため、看護では体位変換や栄養・水分の管理が重要になります。
3.慢性疲労症候群 chronic fatigue syndrome:原因の明らかでない強い疲労感が6か月以上続き、日常生活や社会生活が著しく障害される疾患です。筋痛性脳脊髄炎(ME/CFS)とも呼ばれます。感染症などをきっかけに発症することがあります。休息しても回復しないことと、わずかな活動の後に症状が悪化する労作後倦怠感が特徴です。疲労のために結果として活動量が落ちることはありますが、不活動が原因で発症する疾患ではありません。
4.シックハウス症候群 sick house syndrome:室内の空気が化学物質で汚染されることで生じる健康障害です。原因は、住宅の建材、内装材、家具、接着剤などから放散されるホルムアルデヒドやトルエンなどの揮発性有機化合物です。目・鼻・のどの刺激、頭痛、めまい、倦怠感などが起こります。原因は住環境の化学物質であり、身体活動が多いか少ないかとは関係しません。対策の基本は換気と原因物質の低減で、建築基準法でも建材の使用規制や換気設備の設置が定められています。
覚えるポイント
- 廃用症候群は、不活動(安静・不動)の持続による全身の機能低下です。「生活不活発病」とも呼ばれます。
- 主な症状は、筋萎縮・筋力低下、関節拘縮(尖足)、骨萎縮と尿路結石、起立性低血圧、深部静脈血栓症、沈下性肺炎、便秘、褥瘡、抑うつ・認知機能低下です。
- 予防の柱は、早期離床、関節可動域訓練、体位変換、日常生活動作の自立支援です。離床時は起立性低血圧と転倒に注意します。
- 廃用(使わない)・過用(使いすぎ)・誤用(誤った使い方)の3つを区別します。
- 緊張病症候群は昏迷・カタレプシー・拒絶などの精神症状で、不活動の「原因」になりうるものの「結果」ではありません。
- 慢性疲労症候群は原因不明の強い疲労が6か月以上続く疾患、シックハウス症候群は室内の化学物質が原因の健康障害です。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
問題文・正答・解説に誤りを見つけたら、この問題の誤りを報告する([email protected])までお知らせください。確認して修正します。