112PM018|第112回 看護師国家試験 過去問
グリセリン浣腸を準備する際の浣腸液の温度で適切なのはどれか。
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正解: 3
正答
3.40 ℃
この問題のポイント
グリセリン浣腸液を何℃に温めて準備するかを問う、基礎看護技術の問題です。判断の基準は「直腸温(およそ37〜38℃)より少し高い温度」です。低すぎると寒冷刺激で血管収縮や腹痛が起こり、高すぎると直腸粘膜を傷つけます。この両方の危険を避けられる温度として、40℃前後に絞り込めます。
解説
グリセリン浣腸は、50%グリセリン液を肛門から直腸内に注入して排便を促す処置です。グリセリンは腸管壁から水分を引き寄せて腸粘膜を刺激し、蠕動運動を高めます。また、便を軟らかくして滑りをよくします。便秘の解消のほか、検査・手術の前処置などにも用いられます。
液温が40℃前後である理由
直腸温は腋窩温よりやや高く、およそ37〜38℃です。浣腸液は、これより少し高い40℃前後(おおむね40〜41℃)に温めて使います。
- 温度が低い場合:冷たい液が直腸粘膜を刺激して末梢血管が収縮し、血圧上昇、悪寒、腹痛や不快感を招きます。温熱による刺激がないため腸蠕動が起こりにくく、効果も弱くなります。
- 温度が高い場合:直腸粘膜は熱に弱いため、炎症や熱傷などの粘膜損傷を起こす危険があります。
- 40℃前後の場合:粘膜を傷つけずに、適度な温熱刺激で蠕動を促せます。
つまり40℃は、「体温より低すぎず、粘膜を傷めるほど高くない」温度として選ばれています。
準備と温度確認の実際
ディスポーザブルの浣腸器は、包装のまま湯せんで温めるのが一般的です。電子レンジは加熱むらで一部が高温になるおそれがあるため避けます。使用直前に温度計で液温を確認するか、少量を前腕内側に垂らして熱すぎないことを確かめます。準備から実施まで時間があくと液温が下がるため、温めるのは実施の直前にします。
温度とあわせて問われる安全上の要点
グリセリン浣腸は、方法を誤ると直腸穿孔などの重大事故につながる処置です。
- 体位は左側臥位です。直腸からS状結腸は体の左側へ向かって走行するため、左側を下にすると解剖に沿って液が流れ込み、挿入も安全に行えます。
- 立位での実施は禁止です。立位ではチューブの先端が直腸前壁に当たり、穿孔を起こしやすくなります。穿孔部からグリセリンが血管内に入ると、溶血や腎不全を引き起こすことがあります。
- 挿入の長さは成人で約5cmとし、抵抗があれば無理に進めません。液はゆっくり注入し、注入後は3〜5分程度我慢してもらってから排便を促します。
- 実施中・実施後は、迷走神経反射による血圧低下や気分不快、腹痛、出血の有無を観察します。
- 腸管の穿孔やそのおそれがある場合、腸管内出血、急性腹症が疑われる状態、全身衰弱が強い場合、下部消化管の手術直後には行いません。
臨床では、便秘のある高齢者や検査前の患者に日常的に行う処置です。「温度」「体位」「挿入の長さ」は、いずれも患者の安全を守るための根拠ある基準です。数値だけを覚えるのではなく、それぞれ何を防ぐための基準かと結びつけて覚えると、応用問題にも対応できます。
選択肢の確認
1.20 ℃:室温程度の温度で、直腸温より15℃以上低くなります。冷たい液の寒冷刺激で末梢血管が収縮し、血圧上昇、悪寒、腹痛を招きます。温熱刺激が得られないため蠕動も起こりにくく、浣腸の効果も弱まります。「温めずにそのまま使用する」という誤りに対応する選択肢です。
2.30 ℃:手で触れると「ぬるい」程度の温度ですが、直腸温より7〜8℃低く、腸にとっては冷たい刺激になります。腹部の不快感や腹痛、血管収縮を起こしうるうえ、蠕動を促す効果も十分に得られません。「冷たくなければよい」のではなく、基準は直腸温より少し高い温度だと押さえましょう。
3.40 ℃:正答。直腸温より少し高く、粘膜を傷めずに温熱刺激で腸蠕動を促せる適温です。寒冷刺激による血圧上昇や腹痛も避けられます。石けん液などを用いる高圧浣腸でも、液温の目安は同じく40℃前後です。
4.50 ℃:直腸温より10℃以上高い温度で、熱に弱い直腸粘膜に炎症や熱傷などの損傷を起こす危険があります。全身清拭で準備する湯の温度(50〜55℃程度)と取り違えやすいので、注意が必要です。
覚えるポイント
- グリセリン浣腸液は、直腸温より少し高い40℃前後(40〜41℃)に温めて準備する。
- 低温では寒冷刺激による血管収縮・血圧上昇・腹痛が起こり、効果も弱まる。高温では直腸粘膜を損傷する。
- 体位は左側臥位。立位は禁止(直腸前壁の穿孔の危険があり、穿孔すると溶血や腎不全を起こしうる)。
- 挿入は成人で約5cm。ゆっくり注入し、注入後は3〜5分我慢してから排便を促す。
- 観察点は、迷走神経反射による血圧低下・気分不快、腹痛、出血。穿孔のおそれ・腸管内出血・急性腹症・全身衰弱・下部消化管の術直後には行わない。
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