112PM111|第112回 看護師国家試験 過去問

次の文を読み109〜111の問いに答えよ。Aさん(58歳、男性)は、年金の給付を受けて生活している父親(82歳)と2人暮らしで、母親は2年前に亡くなっている。20歳のときに統合失調症 schizophrenia と診断された。20歳代で何回か仕事に就いたが長続きはしなかった。40歳からは無職で、デイケアへ通所していた。1年前にデイケアを中断してからは、ほとんどの時間を自宅で過ごしているが、月1回の外来通院は継続している。Aさんが飲まなかった薬がたくさん残っていることを父親が発見し、主治医に相談した。この相談をきっかけに、週1回の精神科訪問看護を導入することになった。初回訪問時にAさんは「薬は飲み忘れたんです。心配かけてごめんなさい」と父親と訪問看護師に話した。初回訪問から6か月、Aさんの状態は安定し、デイケアへ週3回程度は通所できるようになった。一方で、父親は「Aは食事も作れないし、家のことができないので、自分が死んだ後のことを考えると1人で生きていけるのかが心配だ。どうしたらよいか」と訪問看護師に相談した。それを聞いたAさんも「父が死んだ後の生活が心配だ」と話した。現時点でAさんと父親へ提案する社会資源で適切なのはどれか。

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正解: 3

正答

3.グループホーム

この問題のポイント

統合失調症をもつ58歳のAさんと82歳の父親が抱える「親亡き後」の不安に、どの社会資源を提案するかを問う問題です。判断の鍵は3つあります。1つ目は「食事も作れないし、家のことができない」という生活上の課題、2つ目は「父が死んだ後」という将来の住まいと支え手の問題、3つ目は状態が安定してデイケアに通えている「現時点」という時期です。障害者総合支援法のサービスや関連制度について、それぞれの対象と目的を区別できるかが問われています。

解説

設問が求めているのは、Aさんと父親がともに口にした「父が死んだ後の生活が心配だ」という不安に、いま何を提案すればこたえられるかです。判断に必要な情報を事例から整理すると、次のようになります。

  • Aさんは58歳、父親は82歳です。母親はすでに亡くなっており、ほかに頼れる家族の記載はありません。父親の支えがいつまでも続く状況ではありません。
  • 「食事も作れないし、家のことができない」とあります。1人暮らしになれば、食事や家事といった日常生活そのものが立ち行かなくなるおそれがあります。
  • 訪問看護の導入から6か月で状態は安定し、デイケアに週3回程度通所できています。服薬も含めて生活が落ち着き、新しい生活に向けた準備を始められる時期です。
  • 父親だけでなくAさん自身も将来の生活を心配しています。支援の必要性が、本人の思いとしても表明されています。
  • 生活は父親の年金で成り立っており、現時点で経済的に困窮しているという記載はありません。

つまり課題の中心は「お金」ではありません。「父親がいなくなった後の住まい」と「日常生活を支えてくれる人」です。この2つに同時にこたえられるのが、**共同生活援助(グループホーム)**です。

共同生活援助は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、自立支援給付のうち訓練等給付に位置づけられています。障害のある人が地域の住居で少人数の共同生活を送りながら、主に夜間や休日に、世話人や生活支援員から日常生活上の支援を受けます。支援の内容は、相談、食事の提供、家事や金銭管理の助言、服薬の確認、入浴・排泄などの介護です。事業の形態には、介護サービス包括型、外部サービス利用型、日中サービス支援型があります。

日中はデイケアや就労系サービスに通いながら住まいとして利用できるので、Aさんがいま続けているデイケアへの通所や生活リズムを保てます。利用には市町村への申請と支給決定が必要で、通常は相談支援専門員がサービス等利用計画を作成します。

「現時点で」提案することにも大きな意味があります。統合失調症では、生活環境の急な変化や強いストレスが再発の誘因になりえます。父親が亡くなってから慌てて住まいを探すと、親を失う喪失体験と生活の激変が重なり、病状が不安定になるおそれがあります。父親が元気なうちに見学や体験利用を重ね、Aさんが納得したうえで段階的に移行できれば、本人の負担は小さくなり、父親も安心して見守れます。状態が安定している今は、その準備を始めるのに適した時期です。

訪問看護師は、Aさんと父親それぞれの思いを丁寧に聴きます。そのうえでAさんがどのような暮らしを望むかを確認し、主治医や相談支援事業所と連携して情報提供や見学の調整につなげます。生活技能を伸ばす自立訓練(生活訓練)や、必要に応じて金銭管理を支える日常生活自立支援事業・成年後見制度も、親亡き後に向けた備えとしてあわせて検討される資源です。

選択肢の確認

1.生活保護:生活に困窮する人に、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、最低限度の生活を保障する制度です。資産・能力・他の法律による給付などをすべて活用してもなお生活できない場合に適用され(補足性の原理)、保護の要否は原則として世帯単位で判断されます(世帯単位の原則)。Aさんの世帯は父親の年金で生活が成り立っており、困窮しているという情報はありません。また、この制度は最低生活費を保障するものであり、食事や家事ができないという生活上の課題や、父親亡き後の住まいの確保には直接こたえられません。将来、収入が不足した段階で検討されうる制度ですが、いま提案するものとしては適切ではありません。

2.地域移行支援:障害者総合支援法の地域相談支援の一つで、精神科病院に入院している人や、障害者支援施設・矯正施設などに入所している人が対象です。住居の確保、外出への同行、障害福祉サービスの体験利用などを通して、退院・退所して地域生活へ移ることを支援します。Aさんはすでに自宅で暮らしており、入院・入所していないので対象になりません。同じ地域相談支援でも、居宅で単身生活する人などに常時の連絡体制を確保し、緊急時に訪問や相談で対応する地域定着支援とは区別して覚えましょう。

3.グループホーム:正答。共同生活援助として、少人数の共同生活の場で、世話人や生活支援員から食事の提供、家事や金銭管理の助言、服薬の確認、相談などの支援を受けられます。「家のことができない」「父が死んだ後の生活が心配」という本人と父親の不安に、住まいと生活支援の両面から直接こたえる資源です。父親が元気なうちに見学や体験利用を始め、段階的に移行できる点でも、現時点の提案として適しています。

4.障害者権利擁護センター:障害者虐待防止法に基づいて都道府県に設置される機関です。使用者による障害者虐待の通報・届出の受理、市町村間の連絡調整や情報提供・助言、障害者や養護者への支援に関する相談などを担います。事例には、父親による虐待や職場での虐待をうかがわせる情報はありません。課題は親亡き後の住まいと生活支援なので、提案する資源として適切ではありません。名称の「権利擁護」から、社会福祉協議会などが行う金銭管理や成年後見の相談窓口と取り違えやすいので注意します。また、養護者による虐待の通報先が市町村(市町村障害者虐待防止センター)であることも区別しておきましょう。

覚えるポイント

  • 親亡き後の住まいと日常生活の支援には共同生活援助(グループホーム)を考えます。障害者総合支援法の訓練等給付で、世話人・生活支援員が食事・家事・金銭管理・服薬などを支えます。
  • 住まいの移行は、本人の状態が安定し、家族が元気なうちに、見学・体験利用から段階的に進めるのが望ましい考え方です。統合失調症では環境の急な変化が再発の誘因になりえます。
  • 地域移行支援は入院・入所中の人の退院・退所支援、地域定着支援は在宅で単身等の人への常時の連絡体制と緊急時支援です。
  • 生活保護には補足性の原理と世帯単位の原則があります。経済的困窮がなければ第一選択にはなりません。
  • 障害者虐待防止法では、市町村障害者虐待防止センター(養護者・施設従事者・使用者による虐待の通報受理)と、都道府県障害者権利擁護センター(使用者による虐待の通報受理、市町村間の連絡調整など)を区別して覚えます。
  • 社会資源は、「何に困っているか(課題)」と「制度の対象・目的」を照らし合わせて選びます。本人の意思を確認することも欠かせません。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。 情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。 本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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