34Q121|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題120から問題122までについて答えなさい。 〔事 例〕 Eさん(35歳、男性)は、1年前に筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)と診断された。当初の症状としては、ろれつが回らず、食べ物の飲み込みが悪くなり、体重の減少がみられた。 その後、Eさんの症状は進行し、同居している両親から介護を受けて生活をしていたが、両親の介護負担が大きくなったため、障害福祉サービスを利用することになった。障害支援区分の認定を受けたところ、障害支援区分3になった。Eさんは訪問介護員(ホームヘルパー)から食事や入浴の介護を受けて自宅で生活をしている。 ある日、Eさんの自宅を訪問した訪問介護員(ホームヘルパー)は、Eさんの両親から、「これまでEは話をするのが難しく、筆談で意思を聞いてきたが、ペンを持つのが難しくなってきた」と聞いた。確かにEさんは、発話や字を書くことは困難な様子だが、目はよく動いている。 次のうち、今後、Eさんが家族とコミュニケーションをとるときに使うことのできる道具として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.透明文字盤
この問題のポイント
発話と書字が困難になっても、よく動く目を利用すれば意思を表せます。失われた機能だけでなく、保たれている機能に合うコミュニケーション手段を選ぶ問題です。
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンが進行性に障害される疾患で、構音障害、嚥下障害、四肢の筋力低下、呼吸筋の障害などが生じます。Eさんは発話に加えてペンを持つことも難しくなっていますが、「目はよく動いている」とあります。この眼球運動を生かせる透明文字盤が最も適切です。
透明文字盤には50音や「はい・いいえ」などが記され、本人と支援者が文字盤を挟んで向かい合い、本人の視線が示す文字を一文字ずつ確認します。手で指したり声を出したりできなくても、視線やまばたきによって具体的な言葉を伝えられます。
ALSでは運動機能が低下しても、本人の理解力や意思まで失われたと決めつけてはいけません。コミュニケーションに時間がかかっても、本人への説明と意思確認を続けます。疲労や眼球運動の変化に応じて、文字盤の大きさ・位置・コントラストを調整し、視線入力式の意思伝達装置なども早めに検討します。
ひっかけポイント
絵や写真も補助的な意思表示には使えますが、表せる内容が用意した項目に限られます。この事例では、言葉を考えられるEさんが保たれた眼球運動で自由度の高い意思表示をするため、透明文字盤が最適です。
介護実践でのポイント
最初に「はい・いいえ」の合図を決め、選んだ文字と完成した言葉を復唱して確認します。目の疲れ、姿勢、照明、文字盤との距離に配慮し、急かさず休憩を入れます。家族・多職種間で合図と使い方を統一します。
選択肢の確認
1.ホワイトボード
誤りです。
ホワイトボードによる筆談には、ペンを持って文字を書く運動機能が必要です。Eさんは書字が困難になっているため、今後の主な手段には適しません。
2.絵や写真
誤りです。
絵や写真は選択肢を示す補助的手段としては利用できますが、伝えられる内容があらかじめ用意した範囲に限られます。よく動く目を利用して具体的な言葉を綴れる透明文字盤のほうが適切です。
3.透明文字盤
正しいです。
発話や書字ができなくても、保たれている眼球運動やまばたきを使って文字を選び、本人の意思を具体的に伝えられます。
4.拡声器
誤りです。
拡声器は出ている声を大きくする道具です。Eさんは単に声量が小さいのではなく、発話そのものが困難なため適しません。
5.補聴器
誤りです。
補聴器は聴力低下を補う道具です。Eさんに聴覚障害は示されておらず、本人から意思を発信する手段にもなりません。
覚えるポイント
- ALSでは構音・嚥下・四肢運動・呼吸などが障害されやすい。
- 発話と書字が困難でも、保たれた眼球運動を透明文字盤に利用できる。
- 運動反応が乏しいことを、理解力や意思がないことと混同しない。
- 合図、文字、完成した言葉を本人と繰り返し確認する。