34Q29|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題29、問題30について答えなさい。 〔事 例〕 Jさん(75歳、男性)は先天性の全盲である。これまで自宅で自立した生活をしてきたが、最近、心身機能の衰えを感じて、有料老人ホームに入居した。 施設での生活にまだ慣れていないので、移動は介護福祉職に誘導してもらっている。 ある日、介護福祉職がJさんを自室まで誘導したときに、「いつも手伝ってもらってすみません。なかなか場所を覚えられなくて。私はここでやっていけるでしょうか」と話してきた。 Jさんの発言への介護福祉職の共感的理解を示す対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 4
正答
4.Jさんの立場に立って感情を推し測り、言葉で表現して伝える。
この問題のポイント
共感的理解とは、相手の立場から、その人がどのように感じているのかを理解しようとし、その理解を相手に伝えることです。
うなずき、沈黙、要約、励ましも会話で用いられますが、本問が尋ねる「共感的理解」を最も直接的に表すのは、Jさんの感情を推し測って言葉にして返す対応です。
解説
Jさんは、先天性の全盲でありながら、これまで自宅で自立した生活を続けてきました。施設へ入居したばかりで場所を覚えられず、介助を受けることへの申し訳なさと、「ここで生活していけるだろうか」という不安を表しています。
共感的理解では、介護福祉職が自分の価値観で評価したり、すぐに励ましたりするのではなく、Jさんの経験をJさんの立場から理解しようとします。例えば、「これまでご自分で生活してこられたので、場所がまだわからず手伝いを受けることを不安に感じているのですね」のように、言葉の背景にある感情を確かめながら返します。
感情は推測で決めつけず、「そのように感じておられますか」と確認できる形で伝えることが大切です。理解が違っていれば、Jさんが訂正できます。このやり取りを通じて、介護福祉職はJさんの不安の内容をより具体的に把握し、必要な支援へつなげられます。
うなずきは、話を聴いていることを示す非言語的な応答です。沈黙は、相手が考えたり感情を整理したりする時間になります。要約は、話の内容を整理して確認する技法です。いずれも重要ですが、それだけでは相手の感情を理解して伝えたとは限りません。
励ましは、タイミングによっては支えになりますが、不安を十分に聴く前に「大丈夫です」と前向きにさせようとすると、Jさんが「不安を理解してもらえなかった」と感じる可能性があります。まず共感し、その後、本人と一緒に不安を軽減する具体的な方法を考えます。
ひっかけポイント
共感は同情ではありません。「かわいそう」と支援者の感情を向けることではなく、相手の内面を相手の枠組みから理解し、確認しながら言葉にして返すことです。
介護実践でのポイント
感情を反映するときは、「不安なのですね」と断定するより、「場所がまだわからず、不安に感じておられるのでしょうか」と確かめる表現を用いると、決めつけを避けられます。
選択肢の確認
1.Jさんの発言にうなずく。
適切ではありません。
うなずきは、話を聴いていることを示す大切な態度ですが、それだけではJさんの立場から感情を理解し、その理解を伝えたことまでは示せません。
2.Jさんの発言のあと沈黙する。
適切ではありません。
沈黙は、Jさんが考えたり話を続けたりする時間として役立つことがあります。しかし、本問で求められる共感的理解を明確に表すには、感じ取った感情を言葉で返すことが必要です。
3.Jさんの話の内容を短くまとめて伝える。
適切ではありません。
内容の要約は、話を整理して相互理解を確認する技法です。ただし、出来事をまとめるだけでは、Jさんの不安や申し訳なさという感情を理解して返したことにはなりません。
4.Jさんの立場に立って感情を推し測り、言葉で表現して伝える。
正答。最も適切です。
相手の立場から感情を理解しようとし、その理解を確認できる形で言葉にして返すことは、共感的理解の中心となる対応です。
5.Jさんの気持ちが前向きになるように、励ましの言葉を伝える。
適切ではありません。
励ますことを急ぐと、Jさんの不安が十分に受け止められないまま終わる可能性があります。まず不安や申し訳なさを共感的に理解し、その後に具体的な支援を一緒に考えます。
覚えるポイント
共感的理解は、相手の立場から感情を理解し、その理解を相手へ返すことです。
うなずきは傾聴の態度、沈黙は考える時間、要約は内容の整理です。
励ましを急ぐ前に、相手が感じている不安や悲しみを受け止めます。
感情を決めつけず、確認できる言葉で伝えます。