34Q30|第34回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題29、問題30について答えなさい。 〔事 例〕 Jさん(75歳、男性)は先天性の全盲である。これまで自宅で自立した生活をしてきたが、最近、心身機能の衰えを感じて、有料老人ホームに入居した。 施設での生活にまだ慣れていないので、移動は介護福祉職に誘導してもらっている。 ある日、介護福祉職がJさんを自室まで誘導したときに、「いつも手伝ってもらってすみません。なかなか場所を覚えられなくて。私はここでやっていけるでしょうか」と話してきた。 Jさんの不安な気持ちを軽くするための介護福祉職の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 4
正答
4.トイレや食堂などを、一緒に歩きながら確認する。
この問題のポイント
視覚障害のある人が新しい生活環境に慣れるためには、介護者がすべて移動させるのではなく、本人と一緒に実際の経路を歩き、位置関係、曲がり角、段差、手がかりを確認する支援が重要です。
Jさんは長く自立生活をしてきた人です。施設での移動を覚えられるように環境を理解する機会をつくることが、不安の軽減と自立支援につながります。
解説
全盲の人は、視覚以外の情報を用いて環境を把握します。足裏で感じる床材の変化、壁や手すり、音、におい、空気の流れ、歩数、曲がり角、ドアの位置などが、移動の手がかりになります。新しい施設では、これらの情報をまだ十分に結びつけられていないため、目的地までの経路を繰り返し一緒に確認することが有効です。
トイレや食堂など、日常的に利用する場所までJさんと歩き、「居室を出て右へ進みます」「手すりが終わったところで左に曲がります」「床材が変わると食堂の入口です」のように、具体的な方向と手がかりを説明します。歩く速さや休憩の希望を確認し、できる部分は本人に行ってもらいます。
誘導するときは、まず声をかけて自分の名前を名乗り、援助が必要か、どの方法を希望するかを尋ねます。本人に介助者の肘や肩を持ってもらい、介助者が半歩前を歩くのが基本です。いきなり身体へ触れると驚かせるため、触れる必要があるときは事前に説明して同意を得ます。
方向を伝えるときは、「こちら」「あちら」など視覚を前提とする曖昧な言葉を避け、「右」「左」「前へ2歩」「3時の方向」など具体的に表現します。誘導中の声かけは移動の妨げではなく、安全と環境理解のために必要です。ただし、情報を一度に多く伝えず、本人のペースに合わせます。
食堂の座席について本人の好みを尋ねることは大切ですが、初めに毎回異なる席を選ぶと位置関係がつかみにくいことがあります。本人と相談し、わかりやすく安全な席を一定にするなど、予測可能な環境を整えたうえで選択を支えます。
ひっかけポイント
視覚障害者への説明では、「こちら」「そこ」「もう少し」といった指示語だけでは方向が伝わりません。左右、距離、段差、時計の文字盤などを用いて具体的に伝えます。
介護実践でのポイント
Jさんがこれまで身につけてきた移動方法や白杖の使い方を確認し、必要に応じて歩行訓練の専門職とも連携します。安全を理由に移動機会を奪わず、本人が自分で移動できる範囲を広げます。
選択肢の確認
1.いきなり声をかけると驚くので、肩にふれてから挨拶をする。
適切ではありません。
声をかけずに肩へ触れると、誰に何をされるのかわからず、かえって驚かせる可能性があります。まず自分から名乗って声をかけ、援助方法を確認してから、必要な接触への同意を得ます。
2.誘導時の声かけは歩行の妨げになるので、最小限にする。
適切ではありません。
段差、曲がり角、通路の幅、目的地などの具体的な声かけは、安全な移動と環境の理解に必要です。本人の希望を確認し、情報を整理して適切なタイミングで伝えます。
3.角を曲がるときには、「こちらに」と方向を伝える。
適切ではありません。
「こちらに」は、視覚情報がなければ方向を特定できない曖昧な表現です。「右に曲がります」「左へ90度向きを変えます」など、具体的に伝えます。
4.トイレや食堂などを、一緒に歩きながら確認する。
正答。最も適切です。
日常的に利用する場所まで実際に一緒に歩き、経路と手がかりを確認することで、Jさんが施設内の位置関係を理解しやすくなります。不安を軽減し、自分で移動する力を支える対応です。
5.食堂の座席は、Jさんの好きなところに座るように伝える。
適切ではありません。
本人の好みを尊重することは大切ですが、新しい環境で座席の位置や動線がわからないまま自由に選ぶよう求めるだけでは、不安の軽減になりません。まず一緒に環境を確認し、本人と相談してわかりやすく安全な席を選びます。
覚えるポイント
視覚障害のある人には、実際に経路を歩き、環境の手がかりを一緒に確認します。
誘導前に名乗り、援助の希望と方法を本人へ確認します。
身体へ触れる前に説明し、同意を得ます。
「こちら」ではなく、右・左、歩数、段差、時計の方向など具体的な言葉で伝えます。
本人の自立経験と残存能力を生かし、安全を確保しながら移動機会を広げます。