35Q69|第35回 介護福祉士国家試験 過去問
Bさん(82歳、女性、要介護2)は、若いときに夫を亡くし、家で仕事をしながら子どもを一人で育てた。夫や子どもと過ごした家の手入れは毎日欠かさず行っていた。数年前に、アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)と診断され、認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)に入居した。夕方になると、「私、家に帰らないといけない」と介護福祉職に何度も訴えている。 Bさんに対する介護福祉職の声かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 4
正答
4.「家のことが気になるんですね」
この問題のポイント
認知症の人が「家に帰らないといけない」と訴えるときは、言葉の事実関係を訂正する前に、その言葉に込められた不安、役割、生活史を理解することが大切です。
この問題では、本人の訴えを否定せず、感情を受け止める声かけを選びます。
解説
Bさんは、若いときに夫を亡くし、自宅で仕事をしながら子どもを育て、家の手入れを毎日欠かさず行ってきました。Bさんにとって「家」は、単なる建物ではなく、家族との思い出、自分の役割、長年守ってきた生活そのものです。
夕方に「家に帰らないといけない」と繰り返す背景には、「家を守らなければならない」「仕事や家事をしなければならない」という役割意識、不安、寂しさ、周囲がわからない混乱などが考えられます。介護福祉職は、事実をすぐに訂正するのではなく、「家のことが気になるんですね」と感情や関心を言葉にして返します。
このような受容的・共感的な声かけにより、Bさんは「自分の気持ちをわかってもらえた」と感じやすくなります。その後に、何が気になっているのかを尋ねたり、家事に関係する活動を一緒に行ったり、写真を見ながら思い出を語ったりする支援につなげます。
「ここが家です」「仕事はありません」と強く訂正すると、本人の体験を否定されたと感じ、不安や怒りが強まることがあります。散歩への誘いは気分転換になる場合がありますが、本人の気持ちを受け止めないまま話題を変える最初の対応としては不十分です。
また、子どもの言葉を使って本人を従わせようとすることは、本人の自己決定を損ない、家族への不信につながる可能性があります。
介護実践でのポイント
「帰りたい」という言葉を行動だけで捉えず、時間帯、痛み、空腹、排泄、疲れ、周囲の騒がしさ、生活史や役割などを確認します。本人にとっての意味を探ることがケアにつながります。
選択肢の確認
1.「仕事はないですよ」
適切ではありません。
Bさんが大切にしてきた仕事や役割を否定する言葉です。事実を訂正するだけでは、不安や責任感に応答できません。
2.「ここが家ですよ」
適切ではありません。
現実を一方的に訂正すると、本人の混乱や不安を強めることがあります。まず、帰りたい気持ちの背景を受け止めます。
3.「外に散歩に行きますか」
最初の声かけとしては適切ではありません。
散歩が気分転換になることはありますが、Bさんの「家が気になる」という感情を受け止めずに話題を変えています。まず気持ちを確認します。
4.「家のことが気になるんですね」
正答。最も適切です。
Bさんの言葉の背景にある不安や役割意識を否定せずに受け止めています。本人の気持ちをさらに聴くための声かけになります。
5.「子どもさんが『ここにいてください』と言っていますよ」
適切ではありません。
子どもの言葉を権威として使い、Bさんの希望を抑えようとしています。本人の意思と感情を尊重した対応ではありません。
覚えるポイント
認知症の人の訴えは、生活史や役割と結びつけて理解します。
事実の訂正より先に、本人の感情を受け止めます。
「帰りたい」の背景には、不安、役割意識、寂しさ、身体的不調などが隠れていることがあります。
共感した後に、本人に合った活動や環境調整を考えます。