38Q119|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題117から問題119までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(85歳、女性、要介護1)は、B住居型有料老人ホームで暮らしている。子どもはなく、親族もいない。Aさんは現在、外部の事業所から訪問介護サービスを週2回利用している。Aさんは駐車場を経営していて、毎月その収入がある。 最近、C訪問介護員(ホームヘルパー)は、Aさんの居室内の冷蔵庫の中に同じ食材がたくさん入っていることが多く、気になっていた。ある日、C訪問介護員(ホームヘルパー)がAさんに尋ねると、「近所のスーパーに買い物に行くのが楽しみだが、冷蔵庫の中に何があるのか忘れてしまい、同じものばかり買ってしまう」と答えた。また、「今は、毎月振り込まれる駐車場収入の管理ができているが、今後管理できなくなることが不安だ」と話した。その後、Aさんは、初期のアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimer’s type)の診断を受けた。 D介護付き有料老人ホームに転居してから3年が経過した。Aさんの認知症(dementia)の症状は、さらに進行してきた。D介護付き有料老人ホームでは、施設の方針として、新たにパーソン・センタード・ケアを取り入れることになった。 次の記述のうち、E介護福祉職が介護計画を見直すときの方向性として、最も適切なものを1つ選びなさい。
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正解: 3
正答
3.認知症(dementia)の人のその人らしさを支える。
この問題のポイント
パーソン・センタード・ケアの中心的な考え方を問う問題です。
認知症という病気や症状だけに着目するのではなく、本人を独自の価値観、個性、思い、生活歴、人間関係をもつ一人の人として尊重し、その人らしい生活を支えることが基本です。
解説
パーソン・センタード・ケアは、トム・キットウッド(Kitwood, T.)が提唱した、認知症のある人を中心に据えるケアの考え方です。
認知機能の低下やできなくなったことだけを見るのではなく、本人の価値観、個性、感情、生活歴、習慣、役割、人とのつながり、現在も保たれている力に目を向けます。そして、本人の立場から体験を理解し、本人の意思と尊厳が保たれる生活を支えます。
Aさんには、買い物を楽しみにしていたこと、駐車場を経営してきたこと、将来の財産管理について自分の考えをもっていたことなど、その人を理解するための大切な生活歴があります。介護計画を見直すときは、これらを単なる過去の情報として扱うのではなく、現在のAさんの言葉、表情、しぐさ、反応から改めて意思や好みを確認します。そのうえで、本人が選べる場面や役割、楽しみ、なじみのある生活をできるだけ保てるように支援します。
認知症が進行しても、本人の意思がなくなるわけではありません。言葉で表現しにくい場合には、表情、視線、身ぶり、普段の反応なども手がかりにして意思や選好を丁寧に確認します。支援者の都合や安全だけを理由に生活を一方的に決めず、本人の自由と安全のバランスを個別に考えることが重要です。
行動・心理症状(BPSD)は、単に消すべき問題行動として扱いません。痛み、不安、疲労、環境からの刺激、本人の希望が伝わっていないことなどが影響している可能性を考え、本人の体験やニーズを理解する手がかりとして捉えます。
ひっかけポイント
「認知症の症状をなくすこと」ではなく、「認知症があっても、その人として尊重され、その人らしく暮らせること」が中心です。
介護実践でのポイント
介護計画は、施設の標準的な手順だけで決めず、本人との対話や観察、生活歴、家族や関係者から得た情報を組み合わせて見直します。本人ができることを奪わず、選択できる方法で説明し、意思を確認します。
選択肢の確認
1.認知症(dementia)の人の共通点に着目したケアマニュアルをつくる。
誤りです。 安全確保などの共通手順は必要ですが、共通点だけに基づく一律のマニュアルでは、一人ひとりの価値観、生活歴、能力、希望を反映できません。パーソン・センタード・ケアでは、個別性に着目します。
2.認知症(dementia)を治療する。
誤りです。 必要な医療を受けることは重要ですが、パーソン・センタード・ケアは、認知症を治療することそのものを目的とする考え方ではありません。介護計画では、認知症があっても本人らしい生活を続けられるように支援します。
3.認知症(dementia)の人のその人らしさを支える。
正しいです。 本人を、価値観、個性、思い、生活歴、人間関係をもつ一人の人として尊重し、その人らしい生活と自己決定を支える方向性は、パーソン・センタード・ケアの考え方に合致します。
4.認知症(dementia)の人を特別な存在として保護する。
誤りです。 本人を一方的に保護される対象として扱うと、選択する機会や役割、自由を奪うおそれがあります。必要な安全や権利を守りながらも、一人の生活者として対等に尊重し、本人の意思を支えることが基本です。
5.行動・心理症状(BPSD)をなくす。
誤りです。 BPSDをなくすことだけを目標にすると、本人の不安、苦痛、希望、環境との関係を見落とす可能性があります。背景要因や本人の体験を理解し、苦痛を軽減して安心できる生活を整えることが重要です。
覚えるポイント
- パーソン・センタード・ケアは、認知症ではなく「その人」を中心に考える。
- 本人の価値観、個性、思い、生活歴、人間関係、保たれている力を尊重する。
- 本人の言葉だけでなく、表情、視線、身ぶり、反応からも意思や選好を確認する。
- BPSDは、本人の不安やニーズ、環境との関係を理解する手がかりとして捉える。
- 本人の自由と安全のバランスを個別に考え、自己決定と尊厳を支える。