38Q120|第38回 介護福祉士国家試験 過去問
次の事例を読んで、問題120から問題122までについて答えなさい。 〔事 例〕 Aさん(42歳、男性)は、知的障害がある。父親(72歳)と二人暮らしをしている。半年前、Aさんに血便がみられたため病院を受診したところ、大腸がん(colorectal cancer)と診断され、S状結腸ストーマを造設した。パウチの交換に支援が必要となり、退院後は父親が自宅で介護をしていた。父親の介護負担が大きくなったため、居宅介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。 次のうち、Aさんの正常時の便の性状として、最も適切なものを1つ選びなさい。
解答・解説を見る
正解: 5
正答
5.軟便から固形状
この問題のポイント
消化管ストーマから出る便の性状は、ストーマを造設した腸管の位置によって異なります。
見分ける鍵は、「肛門側に近い大腸ほど水分吸収が進み、便が形をもつ」という流れです。Aさんは大腸の終末部に近いS状結腸にストーマを造設しているため、正常時は軟便から固形状の便がみられます。
解説
食物は小腸で主に栄養素が吸収された後、大腸へ送られます。大腸では水分や電解質が吸収され、腸内容物は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸へ進むにつれて、しだいに水分の少ない便へ変化します。
S状結腸は大腸の肛門側に近い部分です。そのため、S状結腸ストーマから排出される便は、通常、軟便から形のある固形状になります。回腸や上行結腸など、より口側に造設されたストーマほど、水分吸収を受ける大腸の範囲が短いため、水様便や粥状便になりやすくなります。
ただし、便の性状は食事、水分摂取、薬剤、感染症、抗がん薬治療、腸の動きなどによって変化します。「S状結腸ストーマなら必ず固形便」と決めつけず、Aさんの普段の便の性状、排泄回数、量、色、におい、腹部症状を基準に観察することが重要です。
急に水様便が続く、排泄量が著しく増える、便が出なくなる、血液が混じる、腹痛や腹部膨満がある、嘔吐するなどの変化がみられた場合は、脱水や腸閉塞、出血などの可能性も考えて、速やかに医療職へ報告します。
ひっかけポイント
「ストーマから出る便はすべて水様便」ではありません。便の出口が小腸に近いほど水分が多く、S状結腸のように肛門側へ近づくほど形のある便になります。
介護実践でのポイント
パウチ交換を支援するときは、便の性状だけでなく、ストーマの色や腫れ、出血、周囲皮膚の発赤・びらん、装具からの漏れも確認します。Aさんが自分でできる手順は本人に行ってもらい、わかりやすい言葉や写真などを用いて、必要な部分だけを支援します。
選択肢の確認
1.水様から粥状{じゅくじょう}
適切ではありません。
水分が多い水様便から粥状便は、回腸などの小腸ストーマや、より口側の結腸ストーマでみられやすい性状です。S状結腸まで大腸を通過した正常時の便としては、水分が多すぎます。
2.流動状から液状
適切ではありません。
流動状から液状の便も、水分吸収が十分に行われる前の腸内容物に近い性状です。S状結腸ストーマの正常時の便としては適切ではありません。
3.半流動から粥状{じゅくじょう}
適切ではありません。
半流動から粥状の便は、S状結腸ストーマの正常時として想定される便よりも軟らかく、より口側のストーマや下痢のときにみられやすい性状です。
4.泥状から軟便
適切ではありません。
泥状から軟便は、選択肢1から3よりは形があるものの、S状結腸ストーマの正常時の代表的な範囲としてはまだ軟らかすぎます。体調不良や食事の影響で一時的にみられることはありますが、最も適切ではありません。
5.軟便から固形状
正答。最も適切です。
S状結腸は大腸の肛門側に近く、そこへ到達するまでに水分吸収が進みます。そのため、正常時は軟便から形のある固形状の便が排出されます。
覚えるポイント
大腸は、腸内容物から水分を吸収して便を形成します。
ストーマが口側にあるほど便は水様・液状になりやすく、肛門側にあるほど軟便・固形状になりやすくなります。
S状結腸ストーマの正常時の便は、軟便から固形状です。
便の性状は個人差や体調によって変わるため、その人の普段の状態との比較が重要です。
急な下痢、排便停止、出血、腹痛、腹部膨満などは、医療職への報告が必要です。