38Q80第38回 介護福祉士国家試験 過去問

こころとからだのしくみ発達と老化の理解

Aさん(82歳、女性)は、介護老人保健施設に入所している。朝、眠そうな様子であったため、介護福祉職がどうしたのかと尋ねると、Aさんは、「夜、足や背中がかゆくてあまり眠れなかった」と話した。看護師と共に足や背中を観察すると、皮膚が乾燥していて、引っ掻{か}いたような傷があった。そのほかに皮膚の異常はみられなかった。Aさんは寒さに弱く、今は冬なので常に電気毛布を使用している。昨日は入浴日であった。 次のうち、Aさんに生じている可能性がある疾患として、最も適切なものを1つ選びなさい。

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正解: 4

正答

4

この問題のポイント

Aさんには、皮膚の乾燥、夜間のかゆみ、掻いたことによる傷がみられます。一方、水疱、発赤、潰瘍、厚い痂皮など、かゆみの原因となる特徴的な皮疹はみられていません。

高齢者、冬季、電気毛布の継続使用、入浴という情報から、皮膚の乾燥を背景とした老人性の皮膚掻痒を判断します。

解説

高齢になると、皮脂や汗の分泌、角質層の水分保持力が低下し、皮膚のバリア機能も弱くなります。そのため皮膚が乾燥しやすく、わずかな刺激でもかゆみを感じやすくなります。特に空気が乾燥する冬季は症状が現れやすくなります。

Aさんは冬に常時電気毛布を使用しています。長時間皮膚を温め続けると乾燥やかゆみを助長する可能性があります。また、熱い湯での入浴、長時間の入浴、洗浄力の強い石けん、ナイロンタオルなどによる強い摩擦は、皮脂を失わせて乾燥を悪化させます。昨日が入浴日だったことも、乾燥と症状の関係を考える手がかりです。

皮膚掻痒症では、かゆみの原因となる一次的な発疹が目立たない一方、掻いた結果として掻破痕や色素沈着が生じることがあります。Aさんには乾燥と掻き傷以外の皮膚異常がみられないため、正答は4です。

介護福祉職は疾患を確定診断せず、かゆみの部位と程度、発疹、傷、出血、睡眠への影響、入浴方法、室温・湿度、寝具や暖房器具の使用状況を観察して看護師へ報告します。支援では、医療職の指示に沿った保湿、ぬるめで短時間の入浴、皮膚を強くこすらない洗浄、室内の乾燥予防、電気毛布の温度と使用時間の見直しなどを検討します。

選択肢の確認

1.角化型疥癬{かくかがたかいせん}(hyperkeratotic scabies)

誤りです。 多数のヒゼンダニが寄生し、手足や体幹などに厚い角質、鱗屑、痂皮を形成する感染力の強い疥癬です。事例には、そのような特徴的な皮疹や集団発生を疑う情報はありません。

2.帯状疱疹{たいじょうほうしん}(herpes zoster)

誤りです。 一般に身体の左右どちらか一方の神経分布に沿って、痛みや違和感に続いて発赤や小水疱が現れます。Aさんには水疱や限局した発疹がなく、足と背中の乾燥性のかゆみが中心です。

3.褥瘡{じょくそう}

誤りです。 持続する圧迫やずれによって、骨突出部などに発赤、びらん、潰瘍などが生じます。乾燥した皮膚の広い範囲にかゆみが生じる疾患ではなく、事例にも圧迫部位の持続する発赤や組織損傷は示されていません。

4.老人性皮膚掻痒症{ろうじんせいひふそうようしょう}(senile pruritus)

正しいです。 加齢による皮脂や水分保持力の低下を背景に、乾燥とかゆみが生じます。冬季、暖房や電気毛布、入浴方法などによって悪化しやすく、掻破痕がみられることもあります。

5.閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans)

誤りです。 下肢の動脈が狭窄・閉塞して血流が低下する疾患です。歩行時の下肢痛、冷感、蒼白、足背動脈の触知低下、重症時の潰瘍などがみられますが、背中を含む乾燥性のかゆみを中心とする疾患ではありません。

覚えるポイント

  • 高齢者の皮膚は、皮脂、水分保持力、バリア機能が低下して乾燥しやすい。
  • 冬の乾燥、過度な保温、熱い湯、長時間入浴、石けんや摩擦は悪化要因になる。
  • 原因となる発疹が目立たなくても、掻いた結果として傷が生じる。
  • 保湿、やさしい洗浄、室温・湿度、寝具や暖房器具の調整が重要。
  • かゆみが続く場合は、薬剤や腎・肝疾患など別の原因も考えて医療職につなぐ。

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