9AM68|第9回 公認心理師国家試験 過去問
70 歳の男性A、元会社員。定年退職後も嘱託として働いている。最近、元気がなくなったことを心配した妻Bと共に、精神科クリニックを受診した。Bによると、 6 か月ほど前から口数が減り、身体が動くにもかかわらず、趣味の庭仕事にも関心を示さなくなった。Bが誘っても、Aは「また今度」とだけ話し、興味を失っている様子である。たまに庭仕事に出てきても段取りが悪い。糖尿病の服薬管理や金銭管理は自立できているが、通院日を間違えることがあるという。診察室でAは、「近頃、物忘れが多くなったので、メモ帳が欠かせなくなりました」と心配そうに語る。夜は眠れており、食欲も変わらないという。 Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
解答・解説を見る
正解: 2
正答
2
この問題のポイント
この問題では、高齢者の物忘れや意欲低下を、うつ病や認知症と鑑別しながら軽度認知障害として理解できるかが問われています。
A は物忘れを自覚して心配しており、通院日を間違えるなどの認知機能低下がみられます。一方で、服薬管理や金銭管理は自立しており、日常生活の自立は大きく失われていません。
解説
軽度認知障害は、年齢相応よりも認知機能の低下がみられるものの、日常生活の基本的な自立はおおむね保たれている状態です。認知症の前段階として扱われることがありますが、すべてが認知症に進行するわけではありません。
本事例の A は 70 歳で、6か月ほど前から口数が減り、趣味の庭仕事への関心が低下しています。庭仕事をしても段取りが悪く、通院日を間違えることがあります。また本人も「物忘れが多くなった」と心配し、メモ帳を使っています。
一方で、糖尿病の服薬管理や金銭管理は自立できています。夜は眠れており、食欲も変わりません。このため、認知症として生活機能が明らかに低下している段階というより、認知機能の低下はあるが生活の自立が保たれている軽度認知障害が最も適切です。
事例問題で見るポイント
高齢者の認知機能低下では、本人の自覚、家族からの情報、ADL、IADL、服薬管理、金銭管理、通院管理、睡眠や食欲、気分症状を整理します。
公認心理師としての注意点
高齢者の物忘れでは、うつ病、せん妄、薬剤の影響、睡眠障害、身体疾患も鑑別が必要です。医師、家族、地域包括支援センターなどとの連携を考えます。
A には意欲低下もありますが、うつ病で中心となる持続的な抑うつ気分、睡眠・食欲の変化、強い罪責感などは示されていません。したがって、軽度認知障害が最も適切です。
選択肢の確認
1.うつ病
判定:誤り。
うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、睡眠や食欲の変化、疲労感、罪責感などがみられます。A には意欲低下や興味低下がありますが、夜は眠れており、食欲も変わりません。また、本人の物忘れの自覚や通院日の間違い、段取りの悪さが目立つため、軽度認知障害が最も適切です。
2.軽度認知障害
判定:最も適切。
軽度認知障害では、認知機能の低下がみられるものの、日常生活の自立はおおむね保たれています。A は物忘れを自覚し、通院日を間違えることがありますが、服薬管理や金銭管理は自立しているため、本問の病態理解として最も適切です。
3.持続性抑うつ障害
判定:誤り。
持続性抑うつ障害は、慢性的に抑うつ気分が続く状態です。本事例では、6か月ほど前からの変化であり、睡眠や食欲の変化も示されていません。中心は認知機能の低下と生活自立が保たれている点であり、軽度認知障害が適切です。
4.前頭側頭型認知症
判定:誤り。
前頭側頭型認知症では、脱抑制、常同行動、人格変化、共感性の低下、食行動の変化、言語障害などが目立つことがあります。A にはそのような顕著な人格変化や脱抑制は示されておらず、服薬管理や金銭管理も自立しています。
5.レヴィ小体型認知症
判定:誤り。
レヴィ小体型認知症では、認知機能の変動、具体的な幻視、パーキンソニズム、レム睡眠行動障害などが特徴です。A にはこれらの特徴は示されていません。病態理解としては軽度認知障害が適切です。
覚えるポイント
- 軽度認知障害は、認知機能低下があるが日常生活の自立が大きく失われていない状態です。
- 認知症との違いは、生活機能の障害の程度です。
- 高齢者の意欲低下では、うつ病と認知機能低下の鑑別が重要です。
- 服薬管理、金銭管理、通院管理などの IADL を確認します。