9AM67|第9回 公認心理師国家試験 過去問
32 歳の女性A。第一子Bを出産して 12 日後、様子の変化を心配した夫Cに連れられて、分娩した産科クリニックを受診した。CによるとAは、退院直後は穏やかであったが、数日前から、急に奇異な言動がみられるようになった。「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで家の外に飛び出したこともある。Cが声をかけると、Aは、「赤ちゃんに申し訳ない」、「赤ちゃんが死んでしまう」と涙を流しながら訴えた。食事も摂らず、夜も眠っていない。日中はBに触れようとせず、「自分は母親ではない」と繰り返すという。医師による診察中、Aは怯えた様子をみせたり、診察室から逃げ出そうとしたりした。 Aの病態の理解として、最も適切なものを 1 つ選べ。
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正解: 4
正答
4
この問題のポイント
この問題では、出産後まもない時期に急激に出現した精神症状から、産じょく期精神病を考えることが求められています。
A は出産 12 日後で、数日前から急に奇異な言動がみられ、赤ちゃんに関する強い不安や妄想的内容、不眠、食事摂取不良、逃げ出そうとする行動がみられます。
解説
産じょく期精神病は、出産後まもない時期に急性に発症する重篤な精神状態です。混乱、幻覚、妄想、激しい不安、興奮、不眠、気分の変動、現実検討の低下などがみられることがあります。
本事例では、A は第一子を出産して 12 日後です。退院直後は穏やかでしたが、数日前から急に奇異な言動がみられています。「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで家の外に飛び出す、「赤ちゃんが死んでしまう」と訴える、「自分は母親ではない」と繰り返すなど、産後の急性精神病状態を示唆する内容があります。
さらに、食事を摂らず、夜も眠っていないこと、診察室から逃げ出そうとすることも重要です。本人と児の安全に関わるリスクがあるため、緊急性の高い状態として理解します。
事例問題で見るポイント
周産期の問題では、出産後の日数、発症の急激さ、睡眠、食事、現実検討、児への関わり、自傷他害や児への危険の有無を確認します。
公認心理師としての注意点
産じょく期精神病が疑われる場合、心理面接だけで対応しようとせず、産科、精神科、家族、保健師などと速やかに連携し、母子の安全確保を優先します。
マタニティー・ブルーズは一過性の涙もろさや気分変動が中心で、通常ここまでの奇異な言動や現実検討の低下は中心ではありません。産後うつ病も重要ですが、本事例は急性の精神病症状が目立つため、産じょく期精神病が最も適切です。
選択肢の確認
1.適応障害
判定:誤り。
適応障害は、明確なストレス因に反応して情緒面や行動面の症状が生じる状態です。本事例では、産後まもなく急に奇異な言動、妄想的な訴え、強い混乱、不眠、食事摂取不良がみられます。適応障害よりも産じょく期精神病が適切です。
2.産後うつ病
判定:誤り。
産後うつ病では、抑うつ気分、興味や喜びの低下、疲労感、罪責感、睡眠障害などがみられます。A には罪責感や涙もろさもありますが、「赤ちゃんがいなくなった」と叫んで飛び出す、「自分は母親ではない」と繰り返す、逃げ出そうとするなど、急性の精神病状態を示す所見が強いため、産じょく期精神病が最も適切です。
3.統合失調症
判定:誤り。
統合失調症でも幻覚や妄想、まとまりにくい言動がみられることがあります。しかし本事例では、出産後 12 日という時期に急性に発症しており、周産期に特有の重篤な病態として産じょく期精神病を考えるのが最も適切です。
4.産じょく期精神病
判定:最も適切。
産じょく期精神病は、出産後まもない時期に急性に発症する重篤な精神状態です。A には、産後 12 日での急激な奇異な言動、赤ちゃんに関する妄想的な訴え、不眠、食事摂取不良、逃避的行動がみられるため、本問の病態理解として最も適切です。
5.マタニティー・ブルーズ
判定:誤り。
マタニティー・ブルーズは、産後数日頃にみられる一過性の涙もろさ、気分変動、不安などを指します。通常は短期間で軽快し、現実検討の著しい低下や危険行動を伴うものではありません。本事例の重篤さからは産じょく期精神病が適切です。
覚えるポイント
- 産じょく期精神病は、産後まもなく急性に発症する重篤な精神状態です。
- 妄想、混乱、不眠、食事摂取不良、児への関わりの異常、危険行動に注意します。
- マタニティー・ブルーズは一過性で比較的軽い気分変動です。
- 周産期の急性精神症状では、母子の安全確保と医療連携を最優先します。