9PM140|第9回 公認心理師国家試験 過去問
20 歳の男性A、大学生。手術後 5 日目である。退院前に、公認心理師Bにアセスメントが依頼された。Aは 3 か月前に交通事故に遭い、軽度の頭部外傷で総合病院に搬送された。頭部 CT 検査では異常が認められず、入院することなく帰宅した。その後の日常生活に支障はなかったが、 2 か月前から頭痛と物忘れが増えた。講義の内容が分からなくなり、期末試験の勉強も計画通りに進められず、多くの科目で不合格となった。家族に連れられ、総合病院を再受診したところ、頭部 CT 検査で血腫がみつかり、緊急入院となり手術を受けた。Aは「大学のことを考えると、不安になったり落ち込んだりする」と話している。 Bが行う心理検査として、最も適切なものを 1 つ選べ。
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正解: 5
正答
5
この問題のポイント
この事例では、頭部外傷後にみられる遂行機能障害を評価する心理検査が問われています。
Aは交通事故後、頭部 CT 検査で当初異常は認められませんでしたが、その後、頭痛と物忘れが増え、講義理解や試験勉強の計画に支障が出ています。血腫が見つかり手術を受けた後の退院前アセスメントであり、学業復帰に向けて前頭葉機能や遂行機能を把握する必要があります。
解説
WCST は、Wisconsin Card Sorting Test の略で、前頭葉機能、特に概念形成、認知的柔軟性、セットの転換、保続などを評価する検査です。遂行機能障害の評価に用いられます。
この事例のAは20歳の大学生で、交通事故後に頭部外傷を受けています。2か月前から頭痛と物忘れが増え、講義内容が分からない、期末試験の勉強を計画通りに進められない、多くの科目で不合格となるという問題が出ています。単なる気分の落ち込みだけでなく、学習計画の立案・実行・切り替えに支障が出ている可能性があります。
退院前のアセスメントでは、今後の大学生活、学業上の配慮、リハビリテーション、家族支援を検討するため、認知機能、とくに遂行機能を把握することが重要です。したがって WCST が最も適切です。
アセスメントの視点
頭部外傷後の支援では、不安や抑うつだけでなく、注意、記憶、遂行機能、学業や生活への影響を総合的に評価します。
選択肢の確認
1.BDI-Ⅱ
判定:適切とはいえない。
BDI-Ⅱは抑うつ症状を評価する尺度です。Aは大学のことを考えると不安や落ち込みを感じていますが、事例で中心となるのは頭部外傷後の認知機能、特に計画や遂行機能の評価です。最も適切な検査ではありません。
2.HDS-R
判定:適切とはいえない。
HDS-R は、認知症のスクリーニングに用いられる改訂長谷川式簡易知能評価スケールです。Aは20歳で、頭部外傷後の遂行機能評価が必要な事例です。認知症スクリーニングを最優先する場面ではありません。
3.SLTA
判定:適切とはいえない。
SLTA は標準失語症検査で、失語症の評価に用いられます。本事例では、失語症を示す言語症状よりも、物忘れ、講義理解の困難、計画通りに勉強できないという遂行機能面の問題が中心です。
4.STAI
判定:適切とはいえない。
STAI は、状態不安と特性不安を評価する尺度です。Aには不安がありますが、退院前のアセスメントとして最も重要なのは、頭部外傷後の認知機能や遂行機能の把握です。
5.WCST
判定:最も適切。
WCST は、前頭葉機能や遂行機能を評価する検査です。Aは頭部外傷後に学習計画の困難や講義理解の問題が生じており、遂行機能障害の評価が必要です。退院後の学業復帰や支援方針を検討するうえで最も適切です。
覚えるポイント
- WCSTは、前頭葉機能や遂行機能の評価に用いられます。
- 遂行機能には、計画、切り替え、抑制、問題解決、認知的柔軟性が含まれます。
- 頭部外傷後は、CT所見だけでなく、生活・学業上の認知機能の支障を評価します。
- BDI-Ⅱは抑うつ、STAIは不安、SLTAは失語症、HDS-Rは認知症スクリーニングに関係します。
- 心理検査は、症状だけでなく、支援方針に必要な機能を見極めて選択します。