114D037|第114回 歯科医師国家試験 過去問
72歳の男性。開口困難を主訴として来院した。2年前から右側下顎に疼痛を自覚していたがそのままにしていたところ、2か月前から開口障害が発現したという。5年前に右側舌癌の治療歴があるが、現在まで再発はない。初診時の顔貌写真(別冊No. 9A)、口腔内写真(別冊No. 9B)及びエックス線画像(別冊No. 9C)を別に示す。 原因として疑われるのはどれか。1つ選べ。

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正解: d
正答
d
この問題のポイント
舌癌治療後の照射野に一致する下顎骨の破壊・硬化、皮膚瘻孔、慢性疼痛と開口障害から、放射線性骨髄炎を疑います。
解説
頭頸部放射線治療後の顎骨では、血管障害により低酸素・低血流・低細胞性となり、骨の修復能が低下します。抜歯や義歯性外傷、歯性感染などを契機に骨露出・壊死・感染が持続し、病的骨折や皮膚瘻孔を形成することがあります。下顎骨は上顎骨より緻密で血流が乏しく、照射後骨壊死・骨髄炎の好発部位です。
本例は舌癌治療から数年後に同側下顎痛が続き、皮膚瘻孔と開口障害、広範な骨変化を認めます。顎関節部に限局する強直症・骨折や、両側性にみられやすい筋突起過長症、関節内遊離体を作る滑膜性骨軟骨腫症では説明できません。
画像の確認
実画像では、Aの右側下顎下縁付近に発赤・硬結を伴う皮膚瘻孔がみられ、Bでは著しい開口制限が確認できます。Cのパノラマエックス線画像では患者右側の下顎体から下顎角部にかけて骨硬化と不整な透過像が混在し、慢性の放射線性骨障害に一致します。
選択肢の確認
a.顎関節強直症
誤り。
関節裂隙の消失や関節部の骨性癒着が中心で、皮膚瘻孔と下顎体部の骨変化を説明しません。
b.関節突起骨折
誤り。
外傷歴と急性発症を伴うことが多く、数年にわたる下顎痛や照射歴と合いません。
c.筋突起過長症
誤り。
頬骨弓との干渉で徐々に開口制限を来しますが、骨髄炎像や皮膚瘻孔は生じません。
d.放射線性骨髄炎
正しい。
放射線治療後の低血流性顎骨に生じた壊死・感染として、経過と画像が一致します。
e.滑膜性骨軟骨腫症
誤り。
顎関節腔内に多数の軟骨性遊離体を生じる病変で、本例の下顎体部病変とは異なります。
覚えるポイント
- 放射線照射骨は低酸素・低血流・低細胞性となります。
- 放射線性骨髄炎は下顎に多く、骨露出・瘻孔・病的骨折を来し得ます。
- 照射前の歯科評価と照射後の感染・外傷予防が重要です。
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