116C021|第116回 歯科医師国家試験 過去問
55 歳の男性。舌と頰粘膜の疼痛を主訴として来院した。1 か月前に口唇の腫 脹、出血および前腕部の皮疹に気付き、かかりつけ歯科医で副腎皮質ステロイド軟 膏の処方を受けていたが、徐々に顔面、口腔内および四肢に水疱とびらんが拡大し たという。初診時の顔貌写真(別冊No. 2A)、口腔内写真(別冊No. 2B)及び前腕 皮膚の写真(別冊No. 2C)を別に示す。血液検査結果を表に示す。 白血球数 :6,620/μL 赤血球数 :497 万/μL ヘモグロビン :15.3 g/dL ヘマトクリット :45.7% AST :20 U/L ALT :20 U/L PT-INR :0.95 CRP :0.20 mg/dL 抗BP 180 抗体 :<9.0 倍(基準値<9.0 倍) 抗デスモグレイン1 抗体 :158 倍(基準値<20.0 倍) 抗デスモグレイン3 抗体 :8,240 倍(基準値<20.0 倍) 考えられるのはどれか。1 つ選べ。

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正解: d
正答
d
この問題のポイント
口腔粘膜を含む弛緩性水疱・びらんと、抗デスモグレイン3抗体の著明高値から尋常性天疱瘡を診断します。
解説
本症例では口唇、口腔粘膜、顔面、四肢に水疱とびらんが拡大しています。抗デスモグレイン3抗体が著明に高く、抗デスモグレイン1抗体も高値です。デスモグレインは上皮細胞間接着装置であるデスモソームの構成分子で、自己抗体により表皮内・上皮内の細胞間接着が失われます。
尋常性天疱瘡では口腔粘膜病変が初発・主要症状となることが多く、破れやすい弛緩性水疱、広範なびらん、Nikolsky現象を認めます。抗BP180抗体が陰性であることは類天疱瘡を支持しません。
症例問題の解き方
病変の分布、粘膜病変の有無、水疱の破れやすさ、自己抗体の種類を順に確認します。
画像の確認
実画像では、口唇周囲に痂皮を伴うびらんが散在し、口腔内でも頰粘膜から口角にかけて広い発赤・びらん面がみえる。前腕にも小さな紅斑性病変があり、単一神経領域に限局しない粘膜皮膚病変である。これに抗デスモグレイン1・3抗体の著明高値を合わせると、尋常性天疱瘡の正答につながる。
選択肢の確認
a.GVHD
誤り。GVHDは造血幹細胞移植歴を背景に、苔癬様病変や口腔乾燥などを生じます。本症例の自己抗体所見とは一致しません。
b.帯状疱疹
誤り。帯状疱疹は通常、単一神経支配領域に一致する片側性の小水疱と疼痛を示します。全身性のびらんと抗デスモグレイン抗体高値を説明できません。
c.類天疱瘡
誤り。類天疱瘡では表皮下水疱を形成し、抗BP180抗体などが陽性になります。本症例では抗BP180抗体が陰性です。
d.尋常性天疱瘡
正しい。口腔粘膜を含む弛緩性水疱・びらんと抗デスモグレイン3抗体の著明高値は尋常性天疱瘡に合致します。
e.Stevens-Johnson 症候群
誤り。Stevens-Johnson症候群は薬剤や感染を契機とする急性重症粘膜皮膚障害で、抗デスモグレイン抗体による自己免疫性表皮内水疱症ではありません。
覚えるポイント
- 尋常性天疱瘡は抗デスモグレイン3抗体と関連。
- 口腔粘膜病変が先行しやすい。
- 類天疱瘡は抗BP180抗体と表皮下水疱。