119F74|第119回 医師国家試験 過去問
入院して治療を行ったが、呼吸状態が悪化し、マスク5L/分の酸素投与でもSpO₂が90%を維持できない状態となり、本人の呼吸困難も悪化した。終末期における医療について、患者本人から侵襲的な処置を希望しないこと、「苦しくないように、痛くないようにして欲しい」という希望があることを家族が聞いており、家族から本人の意思を尊重して治療を進めて欲しいと話があった。また今回の入院時にも、同様のことを本人が主治医をはじめ医療スタッフに話しており、診療録にもこの意向が記載されていた。 オピオイドの投与とともに行うのはどれか。
解答・解説を見る
正解: d
正解
d ネーザルハイフローによる酸素投与
判断の軸
この問題の中心は、単なる呼吸管理ではなく、終末期における本人意思の尊重です。
この患者は、
- 侵襲的な処置を希望しない
- 苦しくないようにしてほしい
- 痛くないようにしてほしい
と繰り返し意思表示しており、家族もその意思を尊重してほしいと述べています。
さらにその内容は診療録にも記載されています。
したがって、この場面では 延命のための侵襲的治療 ではなく、呼吸困難の緩和を目的とした非侵襲的な支持療法 を選びます。
なぜネーザルハイフローか
ネーザルハイフロー、HFNC は、
- 高濃度酸素を安定して投与できる
- 呼吸仕事量を軽減できる
- 鼻カニューレで比較的快適に装着できる
- 会話や口腔ケアがしやすい
という利点があり、苦痛緩和を重視する終末期呼吸管理 に適しています。
オピオイドは呼吸困難感そのものを和らげる目的で用い、HFNC は低酸素と呼吸負担を軽減する目的で併用します。
この組み合わせは、患者の希望と治療目標に合致しています。
各選択肢の検討
a 気管切開
誤りです。明らかな侵襲的処置であり、本人の希望に反します。b 気管挿管
誤りです。侵襲的人工呼吸管理であり、希望しない処置です。c 輪状甲状靱帯切開
誤りです。緊急気道確保のための高度侵襲的手技であり、本症例の方針と一致しません。d ネーザルハイフローによる酸素投与
正しいです。非侵襲的で、呼吸苦の軽減に有用です。オピオイドと併用して症状緩和を図るのに適しています。e ECMO〈Extracorporeal membrane oxygenation〉
誤りです。極めて侵襲的な補助循環、呼吸補助であり、終末期の本人意思に反します。
ひっかけポイント
呼吸不全が進んでいるため、つい「より強い呼吸補助」を選びたくなります。
しかし、この問題で最も大切なのは SpO₂ を機械的に上げることよりも、患者の価値観と苦痛緩和を優先すること です。
また、「侵襲的治療をしない」ことは「何もしない」ことではありません。
非侵襲的な酸素投与やオピオイドによる症状緩和は、積極的な緩和医療です。
まとめ
終末期で侵襲的治療を望まない患者に対しては、オピオイドによる呼吸困難緩和 と ネーザルハイフローによる非侵襲的酸素投与 を組み合わせるのが適切です。
したがって正解は d です。