第105回

105PM052|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み51〜53の問いに答えよ。Aさん(33歳、3回経産婦)はこれまで病院で出産しており、妊娠や分娩経過は順調であった。Aさんは、妊娠18週2日に自宅分娩を扱う開業助産師を初めて受診した。「今回は可能であれば自宅で出産し、家族みんなで経験を分かち合いたいと思います」と話し、自宅での出産を希望した。今回の妊娠経過も順調である。Aさんは夫(40歳、自営業)と子どもとの5人暮らしである。Aさんの自宅は都市郊外にあるアパートの2階で、間取りは居室3部屋と台所である。夫は自宅で仕事を行っており、育児には協力的である。自宅分娩のために助産師が確認すべき内容で適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.分娩時に支援を依頼する近隣の助産師の確保

この問題のポイント

自宅分娩を引き受ける開業助産師が、安全のために事前に整えておくべき体制を問う問題です。分娩では母体と新生児という2人の対象に同時に異常が起こりうること、自宅では病院のようにすぐ応援を呼べないことが判断の鍵です。Aさんの「家族みんなで経験を分かち合いたい」という希望、3回経産婦であること、アパートの2階という住環境も、他の選択肢を見分ける手がかりになります。

解説

自宅分娩の前提

自宅分娩は、正常な経過の低リスクの妊産婦を対象に、助産師が自宅に出向いて分娩を介助する形態です。Aさんは33歳で、これまでの妊娠・分娩はいずれも順調で、今回も経過は順調です。助産師が扱う対象として問題のない状況です。

助産師が扱えるのは正常な経過の範囲に限られます。保健師助産師看護師法第38条は、妊産婦や新生児に異常を認めたときは医師の診療を求めさせることとし、臨時応急の手当を除いて助産師自らが処置をしてはならないと定めています。したがって自宅分娩の安全は、「異常を早く見つけ、応急の手当をしながら速やかに医療につなぐ」体制が整っているかどうかで決まります。

なぜもう1人の助産師が必要か

分娩の場面では、次のことが同時に起こりえます。

  • 出生直後の児に新生児仮死があれば、保温・気道確保・人工呼吸などの蘇生をただちに始める必要がある
  • 同じ時間帯に母体では胎盤娩出と子宮収縮の確認が必要で、弛緩出血などの分娩後異常出血が起こりうる
  • 搬送が必要になれば、救急要請、連携医療機関への連絡と情報提供、付き添いを並行して行う必要がある

病院であれば医師や他の看護職員をすぐに呼べますが、自宅ではその場にいる人しかいません。新生児蘇生法(NCPR)の考え方でも、出生時には児の対応に専念できる人がいることが望ましいとされます。とくにAさんは今回が4回目の分娩です。経産回数が多いと分娩の進行が速くなりやすく、子宮筋の収縮不良による弛緩出血のリスクも高まります。母と子の両方に手が必要になる場面に備え、分娩時に駆けつけてもらえる近隣の助産師を確保しておくことが、最も基本的な確認事項です。日本助産師会の助産業務ガイドラインでも、分娩には複数の助産師で対応できる体制を整えることが示されています。

自宅分娩でほかに確認しておくこと

  • 医療機関との連携:医療法では、出張のみで業務を行う助産師は、妊婦等の異常に対応する病院または診療所を定めておくことが求められています。助産所の開設者は、嘱託医師と嘱託医療機関を定めます。
  • 搬送経路と手段:Aさんの自宅はアパートの2階なので、階段での搬送経路、救急車の停車位置、医療機関までの所要時間を確認します。
  • 分娩環境:分娩する部屋、室温・照明、湯や清潔なリネン、新生児の保温手段を確認します。
  • 家族の役割:上の子どもを見守る人や連絡役を、夫を含めて事前に話し合っておきます。
  • 説明と同意:自宅分娩の利点と限界、異常時には医療機関へ搬送することを説明し、本人と家族の同意を得ておきます。

選択肢を「母子の安全に直結するか」「本人の希望に沿うか」「制度上の連携の形に合っているか」で整理すると、正答が選択肢3であることがわかります。

選択肢の確認

1.分娩時のAさんの子どもの預け先の確保:Aさんは「家族みんなで経験を分かち合いたい」と話しており、子どもを含めた家族で出産を迎えることを望んでいます。子どもをよそへ預ける前提で準備を進めるのは、本人の意向に沿いません。分娩中に上の子どもを見守る役割を家族内で決めておくことは大切ですが、それは預け先の確保とは別の事柄です。子どもの同席を望まない家庭では預け先の調整が話題になることもありますが、自宅分娩の安全のために必須の確認事項ではありません。

2.Aさんの自宅で助産師が待機する部屋の確保:助産師は分娩が進めば産婦のそばに付き添って経過を観察するので、待機専用の部屋を用意する必要はありません。住環境について確認すべきなのは、分娩を行う部屋の条件(広さ・室温・照明)、湯や物品を準備できるか、搬送時の経路などです。居室3部屋に子ども3人を含む5人で暮らしている状況で助産師用の部屋を求めることは、家族の生活への負担にもなります。

3.分娩時に支援を依頼する近隣の助産師の確保:正答。自宅では院内のような応援が得られません。新生児蘇生と母体の出血への対応、搬送の連絡・付き添いを同時に行えるよう、分娩時に来てもらえる助産師を事前に確保しておく必要があります。4回目の分娩で進行が速く、弛緩出血のリスクもあるAさんでは、特に重要です。

4.分娩時にAさんの自宅に往診する産科医の確保:自宅分娩で助産師が整える医師との連携は、異常時に診察・搬送を受け入れてもらう医療機関の確保であり、医師に自宅へ来てもらう体制ではありません。分娩時の異常は、帝王切開や輸血など病院の設備が必要になることが多く、往診では十分に対応できません。そのため、異常時は医療機関へ搬送するのが原則です。「嘱託医師・連携医療機関=往診する医師」と取り違えないようにします。

5.助産師のAさんの自宅までの移動時間が2時間以内であること:自宅分娩で助産師の移動時間を2時間以内とする基準はありません。むしろAさんは3回経産婦で分娩の進行が速い可能性が高く、2時間もかかる距離では助産師の到着前に出産してしまうおそれがあります。確認すべきなのは、連絡を受けてから分娩に間に合う距離に助産師がいることと、異常時に医療機関まで速やかに搬送できることです。

覚えるポイント

  • 分娩は母体と新生児の2人に同時に対応する場面です。自宅分娩では、支援を依頼できる助産師をもう1人確保しておきます。
  • 助産師が扱うのは正常経過のみです。異常を認めたら医師の診療を求めさせ、自ら処置はしません。臨時応急の手当は例外です(保健師助産師看護師法第38条)。
  • 出張のみで業務を行う助産師は、異常に対応する病院・診療所を定めておきます。助産所の開設者は、嘱託医師と嘱託医療機関を定めます(医療法)。
  • 医師との連携は「往診」ではなく「搬送の受け入れ」です。自宅から医療機関までの搬送経路(2階なら階段など)を事前に確認します。
  • 経産回数が多いほど分娩進行は速く、弛緩出血のリスクも高くなります。助産師の到着時間と応援体制に直結する情報です。
  • 本人・家族の希望(家族で分かち合う出産)を尊重し、上の子の見守り役などの役割分担を事前に話し合います。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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