第105回

105PM053|第105回 助産師国家試験 過去問

次の文を読み51〜53の問いに答えよ。Aさん(33歳、3回経産婦)はこれまで病院で出産しており、妊娠や分娩経過は順調であった。Aさんは、妊娠18週2日に自宅分娩を扱う開業助産師を初めて受診した。「今回は可能であれば自宅で出産し、家族みんなで経験を分かち合いたいと思います」と話し、自宅での出産を希望した。今回の妊娠経過も順調である。Aさんは夫(40歳、自営業)と子どもとの5人暮らしである。Aさんの妊娠経過は順調であった。妊娠39週6日、午前10時に陣痛が発来したと助産師に連絡があり、助産師はすぐに訪問した。到着時の内診所見は、子宮口6cm開大、展退度80%、Station ±0。陣痛発作時に軽い努責感がある。胎児心拍数陣痛図で、陣痛間欠3分、陣痛発作45秒、胎児心拍数基線120 bpm、基線細変動正常、直近の陣痛時に160 bpmまでの一過性頻脈が1回みられた。この時点での助産師の対応として適切なのはどれか。

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正解3

正答

3.そのまま経過観察する。

この問題のポイント

自宅分娩の場で、到着時の内診所見、陣痛、胎児心拍数陣痛図から母児の経過が正常かどうかを判断し、開業助産師としての対応を選ぶ問題です。子宮口6cm開大の活動期で、陣痛は正常範囲にあります。胎児心拍数も基線・基線細変動とも正常で一過性頻脈がみられ、異常所見はありません。全開大前の軽い努責感は経産婦によくみられる現象であり、努責を促したり医療的な介入を加えたりせず、分娩の進行に備えながら見守る場面です。

解説

まず、問題文から判断に必要な情報を整理します。

  • 33歳の3回経産婦で、過去の妊娠・分娩経過は順調でした。今回の妊娠経過も順調です。
  • 妊娠39週6日(正期産)に自然に陣痛が発来しました。
  • 内診所見は子宮口6cm開大、展退度80%、Station ±0です。
  • 陣痛は間欠3分・発作45秒で、発作時に軽い努責感があります。
  • 胎児心拍数は基線120bpm、基線細変動正常で、陣痛時に160bpmまでの一過性頻脈が1回みられました。
  • 本人は、家族で経験を分かち合える自宅出産を「可能であれば」と望んでいます。

判断の軸は母児に異常があるか、ないかです。異常がなければ、助産師が自らの判断で自宅分娩を進められます。異常があれば、医師の判断を仰ぐ必要があります。

分娩進行の評価

子宮口6cm開大は分娩第1期の活動期にあたります。展退度80%で、頸管は十分に薄くなっています。Station ±0は、児頭の先進部が左右の坐骨棘を結ぶ線の高さまで下降していることを示します。児頭はすでに骨盤内に進入(嵌入)しています。

陣痛の強さは、子宮口の開大度ごとに評価します。日本産科婦人科学会の基準では、子宮口4〜6cmの時期の陣痛周期(発作の開始から次の発作の開始まで)は平均約3分、発作持続時間は平均約70秒です。微弱陣痛と過強陣痛の目安は次のとおりです。

  • 微弱陣痛:陣痛周期が6分30秒以上、または発作持続が40秒以内
  • 過強陣痛:陣痛周期が1分30秒以内、または発作持続が2分以上

Aさんの陣痛周期は、間欠3分と発作45秒を合わせた3分45秒です。発作持続は45秒です。微弱陣痛と過強陣痛のどちらの基準にも当てはまりません。子宮口の開大と児頭の下降が進んでいることからも、有効な陣痛と判断できます。

胎児の状態の評価

  • 胎児心拍数基線の正常範囲は110〜160bpmで、120bpmは正常です。
  • 基線細変動が正常(6〜25bpm)であることは、胎児の自律神経機能が保たれていることを示します。低酸素やアシドーシスに陥っている可能性は低いと考えられます。
  • 一過性頻脈は、妊娠32週以降では、心拍数が15bpm以上急に上昇し、15秒以上2分未満続く変化をいいます。胎児が元気であることを示すサインで、異常ではありません。
  • 一過性徐脈は記載されていません。胎児心拍数波形のレベル分類では、レベル1(正常波形)に相当します。

160bpmという数値だけを見て「頻脈」と判断しないことが大切です。頻脈は心拍数基線そのものが160bpmを超える状態を指します。陣痛に伴って一時的に上昇し、基線に戻る変化は一過性頻脈です。

軽い努責感の意味と対応

経産婦は軟産道が伸展しやすく、初産婦に比べて分娩の進行が速い傾向があります。児頭が下降して骨盤底や直腸を圧迫すると、子宮口が全開大する前から努責感が生じることがあります。これは進行が順調であることのあらわれで、異常ではありません。

ただし、努責は子宮口全開大後(分娩第2期)に行うのが原則です。全開大までは、次のような援助で努責感を逃がします。

  • 短く浅い呼吸で力を逃がす
  • 側臥位など楽な体位をとる
  • 肛門部を圧迫する

また、経産婦に努責感が出てきていることは、全開大と児娩出が近いことも示しています。早めに分娩の準備を整えておきます。

開業助産師の業務範囲と「経過観察」の中身

助産師は正常な妊娠・分娩を自らの判断で取り扱います。保健師助産師看護師法第38条では、妊婦・産婦・褥婦、胎児または新生児に異常があると認めたときの対応を定めています。この場合、助産師は医師の診療を求めさせることを要し、自ら処置をしてはなりません(臨時応急の手当は例外)。

また医療法第19条第1項は、助産所の開設者に対し、嘱託する医師及び病院又は診療所を定めておくことを義務づけています。同条第2項は、出張のみによって業務に従事する助産師が妊婦等の助産を行うことを約するときは、当該妊婦等の異常に対応する病院又は診療所を定めておくことを求めています。助産所の開設者は嘱託医師と嘱託医療機関の両方を定め、出張のみの助産師は異常に対応する病院又は診療所を定めるという違いに注意してください。自宅分娩は、こうした医師・医療機関との協力体制を整えたうえで、正常経過の範囲内で行われます。

Aさんは母児ともに正常経過であり、この時点で介入すべき理由はありません。ここでいう経過観察は、何もしないことではありません。次のような観察と支援を続けながら、自然な進行を見守ることです。

  • 陣痛と胎児心拍の定期的な確認
  • 母体のバイタルサイン
  • 破水の有無と羊水の性状
  • 膀胱充満の確認(排尿の促し)
  • 水分補給
  • 努責感への対応

子どもを含む家族の立ち会いを調整するなど、Aさんが望む出産の実現を支えることも助産師の役割です。

選択肢の確認

1.Aさんに努責を促す。:子宮口は6cm開大で全開大に至っておらず、この段階で意図的に努責させる適応はありません。全開大前にいきむと、子宮口(特に前唇)が児頭と恥骨の間で圧迫され、頸管浮腫を生じやすくなります。その結果、かえって開大が遅れたり、頸管裂傷を起こしたりするおそれがあります。産婦の体力の消耗や胎児への負担にもつながります。努責は子宮口全開大後の分娩第2期に、陣痛発作に合わせて行うものです。「努責感がある」ことと「努責させてよい」ことを混同しないようにし、全開大前は呼吸法や体位で逃がすよう援助します。

2.嘱託医師に報告する。:嘱託医師への報告は、母児に異常を認め、医師の診察や医療機関への搬送を検討する必要があるときに行います。報告が必要になるのは、次のような所見がみられた場合です。胎児側では、胎児心拍数基線の異常、基線細変動の減少、遅発一過性徐脈や高度変動一過性徐脈などの出現、羊水混濁があります。母体側では、異常な性器出血、母体の発熱や高血圧、分娩の遷延や停止などがあります。160bpmまでの一過性頻脈を基線の頻脈と取り違えると、報告が必要だと誤って判断しやすくなります。Aさんは陣痛、内診所見、胎児心拍のいずれにも異常がないため、この時点で報告を要する状況ではありません。

3.そのまま経過観察する。:正答。子宮口6cm開大の活動期で、陣痛は正常範囲にあります。胎児心拍数も基線・基線細変動とも正常で、一過性頻脈を伴っています。母児ともに正常経過です。軽い努責感も経産婦の順調な進行を示す所見であり、医療介入は必要ありません。陣痛・胎児心拍・母体の状態を継続して観察し、努責感を逃がす援助と分娩準備を行いながら、自然な進行を見守ります。

4.末梢静脈の血管確保を行う。:末梢静脈路の確保は、分娩時の異常出血やショック、母体搬送などに備えて行う侵襲的な医療行為であり、正常経過の産婦にルーチンで行うものではありません。保健師助産師看護師法第37条は、主治の医師の指示がある場合を除き、衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならないと定めています。例外は、臨時応急の手当と、臍帯の切断・浣腸など助産師の業務に当然付随する行為です。静脈路確保や輸液は、医師の指示のもとで行う処置です。さらに、静脈路は産婦の自由な動きを妨げます。自宅で家族と経験を分かち合いながら出産したいというAさんの希望に照らしても、必要のない処置は控えるべきです。

覚えるポイント

  • 胎児心拍数の正常は、基線110〜160bpm、基線細変動6〜25bpmです。一過性頻脈は胎児の健常性を示すサインです。一時的に160bpmに達しても、基線の頻脈ではありません。
  • 努責は子宮口全開大(分娩第2期)からです。全開大前の努責感は、短く浅い呼吸・体位の工夫・肛門部の圧迫で逃がします。早すぎる努責は、頸管浮腫・頸管裂傷・疲労の原因になります。
  • 経産婦は分娩の進行が速い傾向があり、活動期に努責感が出てきたら分娩が近いサインと捉えます。「経過観察」は放置ではなく、母児の観察と産婦への支援を続けながら、分娩準備を早めに整えることです。
  • 陣痛の強さは開大度別に評価します。子宮口4〜6cmでは、陣痛周期6分30秒以上または発作40秒以内で微弱陣痛、周期1分30秒以内または発作2分以上で過強陣痛です。
  • 助産師は異常を認めたら医師の診療を求めます(保健師助産師看護師法第38条、臨時応急の手当は例外)。静脈路確保のような衛生上危害を生ずるおそれのある行為には、主治の医師の指示が必要です(同法第37条)。
  • 医療法第19条では、助産所の開設者は嘱託する医師及び病院又は診療所を定めておきます。出張のみによって業務に従事する助産師は、助産を約するときに、妊婦等の異常に対応する病院又は診療所を定めておきます。

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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