第105回
105PM044|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み42〜44の問いに答えよ。Aさん(29歳、経産婦)は妊娠38週0日。不規則な子宮収縮を主訴に午後2時に来院した。妊娠経過は良好であった。児の推定体重は3,400 g。胎児心拍数陣痛図では陣痛間欠8分、発作40秒。胎児心拍数基線140 bpm、基線細変動は正常で、一過性頻脈があり、一過性徐脈は出現していない。血性分泌物はない。陣痛開始しており入院となった。胎児心音は、母体の右側、臍棘線上中央で聴取できた。内診所見は、子宮口5cm開大、展退度50%、Station -1。矢状縫合は横径に一致し、小泉門は9時方向、同じ高さで大泉門が3時方向に触知できた。陣痛開始から10時間が経過した。陣痛間欠6分、発作40秒。内診所見は、子宮口8cm開大、展退度80%、Station +1。胎児心拍数陣痛図では胎児心拍数基線140 bpm、基線細変動6〜25 bpm。最下点100 bpm、回復まで20秒の変動一過性徐脈が2回みられた。Aさんは「昨夜からあまり眠れていない」と話し、疲れた様子である。助産師の対応で適切なのはどれか。
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正解4
正答
4.子宮収縮薬の使用を医師に相談する。
この問題のポイント
分娩第1期活動期の経産婦で、分娩の進行が遅れているときの助産師の対応を問う問題です。子宮口8cmで陣痛周期6分40秒・発作40秒という所見は、日本産科婦人科学会の微弱陣痛の基準に当てはまります。一方、胎児心拍数陣痛図は基線・細変動とも正常で、一過性徐脈は軽度の変動一過性徐脈だけです。進行が遅れている主な原因が陣痛の弱さ(娩出力)であること、産婦が疲労していること、胎児の状態が保たれていることを組み合わせて、陣痛促進を医師に相談する判断を導きます。
解説
陣痛開始から10時間後の状況を整理する
- 分娩進行:子宮口8cm開大、展退度80%、Station +1です。入院時(子宮口5cm、Station -1)と比べると、児頭は下降していますが、子宮口は3cm開大しただけです。陣痛開始から10時間という経過を考えると、経産婦としては進行が遅いと判断できます。
- 陣痛:間欠6分、発作40秒です。
- 胎児:基線140 bpm、細変動6〜25 bpm、変動一過性徐脈(最下点100 bpm、回復まで20秒)が2回です。
- 産婦:「昨夜からあまり眠れていない」と話し、疲労がみられます。
陣痛の強さと進行が遅れる原因を評価する
陣痛周期は、発作の始まりから次の発作の始まりまでの時間で、「発作+間欠」で求めます。10時間後は6分+40秒=6分40秒です。日本産科婦人科学会の基準では、微弱陣痛を子宮口の開大度ごとに次のように定めています。
- 子宮口4〜6cm:陣痛周期6分30秒以上
- 子宮口7〜8cm:陣痛周期6分以上
- 子宮口4〜8cm:発作(陣痛持続時間)40秒以内
子宮口8cmで周期6分40秒・発作40秒なので、周期と持続時間のどちらも微弱陣痛に当たります。この時期の平均(周期2分30秒、持続70秒)と比べても、かなり弱い陣痛です。入院時も、子宮口5cmで周期8分40秒と4〜6cmの基準に当たる弱さでした。その後も陣痛は十分に強まっていません。
分娩が進まないときは、分娩の3要素のどこに原因があるかを考えます。3要素とは、娩出力(陣痛・腹圧)、産道(骨産道・軟産道)、娩出物(胎児の大きさ・胎位・回旋など)です。微弱陣痛は、母体の疲労や膀胱充満などで起こります。児頭骨盤不均衡や回旋異常などの通過障害に伴って起こることもあります。そのため、陣痛を強める前に原因を確かめることが大切です。この事例では、陣痛が微弱陣痛の基準を満たしており、睡眠不足による疲労が陣痛をさらに弱める要因になっています。一方、児の推定体重は3,400 gで、児頭はStation +1まで下降しています。狭骨盤や児頭骨盤不均衡を疑わせる情報は示されていません。
入院時は、胎児心音が母体の右側で聴取され、小泉門が9時方向(母体の右側)にありました。このことから、第2頭位(児背が母体の右側)とわかります。矢状縫合は横径に一致し、小泉門と大泉門が同じ高さにありました。これは、屈曲(第1回旋)がまだ十分でない状態です。回旋異常も進行の遅れの原因になるため、実際の場面では内診で回旋を確かめます。ただし、10時間後の回旋は問題文に示されていません。そのため、この設問では陣痛の強さと母児の状態から判断します。
遷延分娩とは、分娩開始後、初産婦で30時間、経産婦で15時間を経過しても児が娩出しないものです。この事例はまだその定義に当たりません。しかし、疲労が深まるほど陣痛はさらに弱まり、悪循環に陥りやすくなります。放置すれば、母体の脱水・消耗・感染、分娩後の弛緩出血、胎児機能不全の危険が高まります。
胎児の状態を評価する
- 基線140 bpmは正常脈(110〜160 bpm)です。
- 細変動6〜25 bpmは中等度で、正常です。
- 変動一過性徐脈は、心拍数が急速に15 bpm以上低下し、開始から回復まで15秒以上2分未満のものです。主に臍帯圧迫で起こります。高度とされるのは、最下点70 bpm未満で30秒以上続く場合と、最下点70 bpm以上80 bpm未満で60秒以上続く場合です。今回は最下点100 bpm・回復まで20秒なので軽度です。
- 基線・細変動が正常で、軽度変動一過性徐脈がみられる波形は、胎児心拍数波形のレベル分類でレベル2(亜正常波形)です。産婦人科診療ガイドライン産科編2020は、レベル2の対応と処置を医師と助産師で分けています。医師は「経過観察」または「監視の強化、保存的処置の施行および原因検索」、医療機関の助産師は「連続監視、医師に報告する」です。急速遂娩の準備が求められる段階ではありません。
正答に至る判断
進行が遅れている主な原因は陣痛の弱さです。胎児の状態が保たれているうちに有効な陣痛を得て分娩を進めることが、母児にとって最善です。子宮収縮薬は医薬品なので、使用には主治医の指示が必要です(保健師助産師看護師法第37条)。また、助産師は、妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常を認めたとき、医師の診療を求めさせる必要があり、自ら処置をしてはなりません(同法第38条。臨時応急の手当を除く)。胎児心拍数波形の面からも、レベル2での助産師の対応は連続監視と医師への報告です。したがって、陣痛の所見、分娩の進行、胎児心拍数波形、産婦の疲労を具体的に伝え、子宮収縮薬の使用を医師に相談するのが適切です。
使用を決めるのは医師で、使用前に適応と禁忌が確認されます。骨盤狭窄、児頭骨盤不均衡、胎位異常、前置胎盤、過強陣痛などは、子宮収縮薬(オキシトシン)の禁忌です。通過障害があるのに陣痛だけを強めると、子宮破裂や胎児機能不全を招くおそれがあるためです。
相談と並行して、助産師は次のような援助と準備を行います。
- 産婦への援助:水分・エネルギーの補給、排尿の援助(膀胱が充満すると児頭の下降と陣痛を妨げます)、陣痛間欠時の休息、変動一過性徐脈に対する体位の工夫
- 薬剤使用の準備:産婦と家族への説明と文書による同意、輸液ポンプによる精密な投与、分娩監視装置による連続監視
- 使用開始後の観察:陣痛が強まると臍帯圧迫が増え、変動一過性徐脈が悪化することがあります。過強陣痛や波形の変化(高度化、細変動の減少、基線の変化)を観察します。
- 分娩の準備:経産婦は有効な陣痛が得られると急速に進むことがあるため、早めに整えておきます。
選択肢の確認
1.経過観察する。:子宮口8cmで陣痛周期6分40秒・発作40秒と微弱陣痛の基準を満たし、分娩の進行が遅れ、産婦は疲労しています。陣痛が弱いまま待つと遷延と消耗が進み、弛緩出血や胎児機能不全の危険が高まります。胎児心拍数波形はレベル2で、急速遂娩を要する段階ではありません。しかし、ガイドラインでは医師の対応に経過観察が含まれるのに対し、助産師の対応は連続監視と医師への報告とされています。微弱陣痛という異常もあるため、医師に報告せずに見守るだけでは不十分です。経過観察が適切なのは、有効な陣痛で子宮口の開大と児頭の下降が順調に進み、胎児心拍数波形がレベル1(正常波形)で、産婦の状態も安定している場合です。
2.院内の階段昇降を促す。:階段昇降や歩行は、主に分娩早期で母児ともに良好なときに、陣痛の促進や児頭の下降を期待して勧める方法です。今回は子宮口8cmまで進んでいます。疲労している産婦の体力をさらに消耗させ、転倒のおそれもあります。また、変動一過性徐脈がみられ、分娩監視装置で胎児心拍数を連続監視すべき状況なので、院内を移動させるのは不適切です。経産婦では陣痛が強まると急速に進み、墜落分娩になる危険もあります。
3.帝王切開術の準備をする。:胎児心拍数波形はレベル2で、急速遂娩の準備が求められる段階ではありません。児頭はStation +1まで下降して分娩は進んでおり、児頭骨盤不均衡を疑わせる情報もありません。吸引分娩・鉗子分娩は子宮口全開大が条件です。そのため、分娩第1期に急速遂娩が必要になれば帝王切開となります。帝王切開を検討するのは、波形が悪化して胎児機能不全が進んだ場合、児頭骨盤不均衡が判明した場合、子宮収縮薬を適切に使っても分娩が停止した場合などです。現時点では時期尚早です。
4.子宮収縮薬の使用を医師に相談する。:正答。進行が遅れている主な原因は微弱陣痛と産婦の疲労で、胎児の状態は保たれています。そのため、陣痛を強めて分娩を進める段階です。胎児心拍数波形もレベル2で、助産師は連続監視を行い、医師に報告する段階にあたります。子宮収縮薬を使うかどうかは、医師が適応と禁忌を確かめて判断します。そのため、助産師は陣痛・進行・胎児心拍数・疲労の所見をまとめて相談します。同意の取得や輸液ポンプの準備を整え、疲労への援助も並行して行います。
覚えるポイント
- 陣痛周期は「発作+間欠」で求めます。微弱陣痛の基準は、子宮口4〜6cmで周期6分30秒以上、7〜8cmで周期6分以上、4〜8cmで発作40秒以内です。
- 遷延分娩は、分娩開始後、初産婦で30時間、経産婦で15時間を経過しても児が娩出しないものです。産婦の疲労は陣痛を弱め、遷延を招く悪循環になります。
- 高度変動一過性徐脈は「最下点70 bpm未満で30秒以上」または「最下点70 bpm以上80 bpm未満で60秒以上」です。基線・細変動が正常で軽度変動一過性徐脈がみられる波形はレベル2(亜正常波形)で、助産師は連続監視と医師への報告を行います。医師の対応は、経過観察、または監視の強化・保存的処置・原因検索です。急速遂娩の準備・実行が対応に入るのはレベル3以上です。
- 分娩が進まないときは、原因(陣痛の強さ、産道、児の大きさ・胎位・回旋)と母児の状態を合わせて判断します。原因が微弱陣痛で、児頭骨盤不均衡など子宮収縮薬の禁忌がなく、胎児の状態が保たれていれば、陣痛促進を医師に相談します。回旋異常が疑われれば体位の工夫なども検討し、胎児機能不全が進めば急速遂娩を検討します。
- 助産師は、妊婦・産婦・褥婦・胎児・新生児に異常を認めたら医師の診療を求めさせ、自ら処置はしません(臨時応急の手当を除く。保助看法第38条)。医薬品の使用は主治医の指示によります(同法第37条)。
- 子宮収縮薬(オキシトシン)は、骨盤狭窄・児頭骨盤不均衡・胎位異常、前置胎盤、過強陣痛などが禁忌です。使用時は、文書による同意、輸液ポンプでの精密投与、分娩監視装置による連続監視が基本です。過強陣痛と胎児心拍数波形の悪化に注意します。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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解いた記録を残して、苦手な問題をもう一度。
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