第105回
105PM045|第105回 助産師国家試験 過去問
次の文を読み45〜47の問いに答えよ。Aさん(32歳、初産婦)は人工授精で妊娠した。妊娠初期に頭殿長により予定日が決定された。妊娠経過は良好。妊娠40週6日、妊婦健康診査のため産婦人科医院を定期受診した。身長160 cm、体重65 kg(非妊時体重55 kg)、血圧120/75 mmHg。尿蛋白(-)、尿糖(-)。腹囲90 cm、子宮底長34 cm。Hb 11.0 g/dL、ヘマトクリット35%、白血球10,000/μL。胎児推定体重2,800 g、AFI 15。胎児心拍数陣痛図で子宮収縮3回/40分、胎児心拍数基線130 bpm、基線細変動正常、一過性頻脈4回/40分、モニタリング中に最下点120 bpm、持続10秒の心拍変動が1回あった。胎児心拍モニタリング中に胎動を10回自覚するのに要した時間は15分であった。現時点の妊娠経過のアセスメントで正しいのはどれか。
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正解1
正答
1.正常
この問題のポイント
妊娠40週6日の妊婦健康診査で得られた母体と胎児の数値を、それぞれの基準に照らして評価できるかを問う問題です。体重増加、血圧、尿所見、Hb・Ht、白血球数、子宮底長と推定体重、AFI、胎児心拍数陣痛図(CTG)、胎動の自覚は、いずれも基準の範囲内にあります。判断の鍵は2つです。1つは、最下点120 bpm・持続10秒の心拍低下が一過性徐脈の定義を満たさないことです。もう1つは、妊娠中の白血球増加とHbの低下が生理的な変化であることです。
解説
Aさんは人工授精で妊娠しており、妊娠初期の頭殿長(CRL)で予定日が決められています。受精の時期がはっきりしており、初期の超音波でも確認されているので、妊娠週数の誤差は小さいと考えられます。妊娠40週6日は正期産(37週0日〜41週6日)の範囲で、過期妊娠(42週0日以降)ではありません。週数が正確であることが、胎児発育や予定日超過を評価するときの前提になります。
母体の所見
- 体重:非妊時BMIは55÷(1.6×1.6)≒21.5で、普通体重です。増加量は10 kgです。出題当時の「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」(2021年3月改定)では、普通体重の増加量の目安は10〜13 kgで、その範囲に入ります。改定前の目安は7〜12 kgでしたが、その基準でも範囲内です。
- 血圧・尿所見:血圧120/75 mmHgで、妊娠高血圧症候群の基準(収縮期140 mmHg以上または拡張期90 mmHg以上)に該当しません。尿蛋白(-)、尿糖(-)で、腎障害や糖代謝異常を疑う所見もありません。
- Hb 11.0 g/dL、Ht 35%:妊娠中は循環血漿量の増加が赤血球量の増加を上回ります。そのため血液が希釈され(生理的水血症)、Hbは非妊時より低くなります。妊娠貧血はHb 11.0 g/dL未満またはHt 33%未満で判断します。Hb 11.0 g/dLは境界値ですが「未満」には当たらず、Htも33%以上です。
- 白血球10,000/μL:妊娠中は好中球を中心に白血球が生理的に増加し、妊娠末期には10,000/μLを超えることも珍しくありません。分娩時にはさらに増えます。発熱などの感染徴候の記載もありません。
胎児の発育と羊水量
- 子宮底長34 cm、腹囲90 cmは、満期の子宮の大きさとしておおむね妥当な値です。
- 推定体重2,800 gは、満期の平均よりやや小さめです。ただし、胎児発育不全の目安とされる−1.5 SD以下には当たりません。超音波による推定体重にはおおむね±10%程度の誤差があることも踏まえて評価します。
- AFI 15 cmについては、一般に5 cm以下で羊水過少、24〜25 cm以上で羊水過多とされます。15 cmはその中間です。羊水量は妊娠末期に徐々に減り、予定日を超えると羊水過少が起こりやすくなります。そのため、今後もAFIの確認が重要です。
胎児心拍数陣痛図と胎動
- 子宮収縮3回/40分は、陣痛発来の定義(周期10分以内、または1時間に6回以上)に達していません。分娩前の不規則な収縮と考えられます。
- 基線130 bpmは基準範囲(110〜160 bpm)内で、基線細変動も正常(6〜25 bpm)です。
- 一過性頻脈は、妊娠32週以降では15 bpm以上・15秒以上2分未満の心拍上昇を指します。40分間に4回あり、20分間に2回以上というreactive(反応性)の条件を満たします。これは、胎児の中枢神経と自律神経による心拍調節が保たれ、低酸素状態にないことを示します。
- 最下点120 bpm・持続10秒の変化は、基線から10 bpm下がり10秒で戻った変動です。早発・遅発一過性徐脈は、減少の開始から最下点まで30秒以上かかる緩やかな低下です。持続10秒ではこれに当たりません。急速な低下とみても、変動一過性徐脈の条件(15 bpm以上の低下、15秒以上2分未満)を満たしません。したがって、一過性徐脈はなく、5段階のレベル分類ではレベル1に相当します。
- 胎動カウントは、妊婦自身が行える胎児の健康状態(well-being)の評価法です。10回に達するまでに長時間かかる場合や、いつもより明らかに少ないと感じる場合に受診を勧めます。15分で10回は十分な胎動です。
以上から、母体・胎児のどの所見にも異常はなく、現時点の妊娠経過は「正常」と評価できます。実践では、予定日を過ぎたAさんに陣痛、破水、胎動の減少などの受診の目安を伝えます。41週以降は、NSTやAFIによる胎児の評価をより頻繁に行い、分娩誘発を検討する時期に入ることも押さえておきます。
選択肢の確認
1.正常:正答。母体の体重増加、血圧、尿所見、血液所見、胎児の発育と羊水量、CTG、胎動の自覚は、いずれも基準の範囲内です。Hb 11.0 g/dLの境界値、非妊時なら高めの白血球数、短い心拍の低下が含まれています。しかし、妊娠末期の生理的変化や各所見の定義に照らすと、どれも異常所見には当たりません。
2.胎動減少:胎動を10回自覚するまでの時間は15分と短く、胎動は十分に保たれています。CTGでも一過性頻脈が40分間に4回あり、胎児の活動性と反応性は良好です。妊娠末期には子宮内が狭くなり、大きな蹴りからうねるような動きへと動き方が変わります。しかし、回数がはっきり減るのは生理的な変化ではなく、胎児の状態悪化を示すサインとして受診を勧めます。
3.羊水過多:AFI 15 cmは、羊水過少とする5 cm以下と、過多とする24〜25 cm以上のちょうど中間にある値です。子宮底長34 cm、腹囲90 cmも週数相応で、腹部の過度な膨隆や緊満の記載もありません。過多の原因として母体の糖代謝異常や胎児の消化管閉鎖などがありますが、Aさんは尿糖(-)で、それを疑う所見もありません。
4.胎児機能不全:この診断は、CTGなどで胎児の健康に問題がある、または今後問題が生じるおそれがある所見を認めたときにつけられます。Aさんの所見は、基線130 bpm、基線細変動は保たれ、一過性頻脈を伴うreactiveな波形で、レベル1に相当します。「最下点120 bpm」という数字だけを見て一過性徐脈と読み違えないことが大切です。10 bpm・10秒の低下は、どの一過性徐脈の定義も満たしません。
5.白血球の異常増多:妊娠中は好中球を中心に白血球が生理的に増加するため、10,000/μLは病的な増加とはいえません。臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準(Lenckiの基準)でも、白血球数の目安は15,000/μL以上です。さらに、38℃以上の発熱、母体頻脈、子宮の圧痛、腟分泌物や羊水の悪臭といった所見とあわせて判断します。Aさんにはこれらの記載がありません。
覚えるポイント
- 妊娠貧血はHb 11.0 g/dL未満またはHt 33%未満です。妊娠中は生理的水血症でHbが下がり、白血球は増加します(妊娠末期に10,000/μL超も生理的範囲)。
- AFIは5 cm以下で羊水過少、24〜25 cm以上で羊水過多です。予定日を超えると羊水は減りやすいので、AFIの評価が重要になります。
- CTGの正常所見は、基線110〜160 bpm、基線細変動6〜25 bpm、一過性頻脈あり、一過性徐脈なしです。一過性頻脈は32週以降で15 bpm以上・15秒以上2分未満、20分間に2回以上でreactiveです。
- 一過性徐脈は定義で判定します。早発・遅発は最下点まで30秒以上の緩やかな低下、変動は15 bpm以上・15秒以上2分未満、遷延は15 bpm以上・2分以上10分未満です。
- 正期産は37週0日〜41週6日、過期妊娠は42週0日以降です。41週以降は胎児の評価を頻繁に行い、分娩誘発を検討します。
- 妊娠中の体重増加の目安は、普通体重(BMI 18.5以上25未満)で10〜13 kgです(2021年改定の食生活指針)。
掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。
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