第108回

108AM052|第108回 保健師国家試験 過去問

次の文を読み50〜52の問いに答えよ。人口2万人のA市において運動習慣の有無と総死亡数との関連に注目し、施策に反映させるために疫学調査を行うこととした。特定健康診査の際に運動習慣に関する聞き取り調査を行った。運動習慣ありを「週2回以上、1回30分以上、1年以上、運動をしている者」と定義し、その後5年間の死亡の有無を確認した。A市は全国と比較して、住民の平均年齢が高いと推測した。得られた死亡率を解釈する際に、年齢構成を考慮するために間接法による年齢調整を行うこととし、標準化死亡比〈SMR〉を求めることとした。その際に必要な情報はどれか。

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正解2

正答

2.観察集団の総死亡数

この問題のポイント

間接法による年齢調整の指標である標準化死亡比〈SMR〉を計算するのに、どの情報が必要かを問う問題です。「実際の死亡数÷期待死亡数」という式の形を思い出し、観察集団と基準集団のそれぞれから何を使うのかを整理すれば正答できます。ほかの選択肢には、直接法で使う情報や粗死亡率で使う情報が並んでいます。

解説

なぜ年齢調整が必要か

問題文には「A市は全国と比較して、住民の平均年齢が高い」とあります。死亡は年齢の影響を強く受けるため、高齢者が多い集団では、健康水準が同じでも粗死亡率(総死亡数÷総人口)が高くなります。このまま全国と比べると、年齢構成の違いによる見かけの差を「A市は死亡が多い」と誤って解釈してしまいます。これは年齢による交絡であり、交絡を取り除く方法が年齢調整です。年齢調整には直接法と間接法があり、本問は間接法を用いてSMRを求める場面です。

間接法(SMR)の計算の流れ

間接法では、基準集団(ここでは全国)の年齢階級別死亡率を観察集団(A市)に当てはめます。

  • 期待死亡数=Σ(基準集団の年齢階級別死亡率×観察集団の年齢階級別人口)
  • SMR=観察集団で実際に生じた死亡数(総数)÷期待死亡数×100

期待死亡数とは「A市の人口構成のままで、年齢別の死亡率だけが全国と同じだったら何人死亡するか」を表す値です。これと実際の死亡数を比べます。SMRが100を超えれば、年齢構成の影響を除いても全国より死亡が多く、100未満なら少ないと判断します。

したがって、SMRの計算に必要な情報は次の3つです。

  • 観察集団の総死亡数
  • 観察集団の年齢階級別人口
  • 基準集団の年齢階級別死亡率

選択肢のうち、この3つのどれかに当たるのは選択肢2だけです。

仮の数値で確かめる

A市(2万人)を65歳未満15,000人と65歳以上5,000人に分け、全国の死亡率を65歳未満で1,000人当たり2人、65歳以上で1,000人当たり30人と仮定します。期待死亡数は、15,000×2/1,000+5,000×30/1,000=30+150=180人です。A市で実際に198人が死亡していれば、SMR=198÷180×100=110となり、年齢構成を考慮しても全国より約1割多いと解釈できます。この計算ではA市の年齢別死亡数を一度も使っておらず、総数の198人だけで足りています。

直接法との違いと、間接法を選ぶ理由

直接法では、観察集団の年齢階級別死亡率を基準人口(モデル人口)の年齢構成に当てはめて、年齢調整死亡率(人口10万対などの「率」)を求めます。そのため、観察集団の年齢階級別の死亡数と人口が必要です。つまり「率をどちらの集団から取るか」が直接法と間接法で逆になっています。

人口2万人のA市では、年齢階級ごとの死亡数が少なく、偶然の変動で率が大きくぶれます。年齢別の死亡率に頼る直接法は不安定になりやすいため、総死亡数だけで計算できる間接法が適しています。市区町村どうしの死亡水準を比べる地域診断で、全国を100としたSMRがよく使われるのはこのためです。ただし、間接法のSMRは、それぞれの観察集団を基準集団と比べた値です。観察集団の年齢構成が互いに異なる場合、観察集団どうしのSMRを厳密に比べることには限界があります。

選択肢の確認

1.基準集団の総人口:この情報は、粗死亡率の分母や、直接法で基準人口に当てはめた死亡数を合計して割るときの分母として使います。SMRの式には登場しません。間接法で基準集団から借りるのは年齢階級別の死亡率だけで、基準集団全体の人口規模は計算結果に影響しません。直接法の手順と混同すると選んでしまいやすい選択肢です。

2.観察集団の総死亡数:正答。SMRの分子である「実際の死亡数」に当たります。A市で観察期間中に実際に死亡した人数の合計が分かればよく、年齢階級ごとの内訳は必要ありません。これを期待死亡数と比べることで、年齢構成の違いを除いたうえで、A市の死亡が全国より多いか少ないかを判断できます。

3.基準集団の総死亡数:この情報は全国の粗死亡率を求めるときには使いますが、SMRの計算には用いません。期待死亡数は年齢階級ごとの死亡率に観察集団の人口を掛けて求めるため、年齢で区切らない全国の死亡の合計値は式のどこにも入りません。粗死亡率どうしを比べても年齢構成の影響は除けない、という点も合わせて押さえておきましょう。

4.基準集団の年齢別人口:この情報は、直接法で年齢調整死亡率を求めるときに基準人口(モデル人口)の年齢構成として使うものです。間接法の式には直接登場しません。間接法で基準集団から必要なのは年齢階級別の死亡率で、全国値は人口動態統計の公表値を用いるのが一般的です。人口の年齢構成が分かっても死亡率は分かりません。直接法と間接法では「基準集団から何を借りるか」が逆になるので、取り違えないことが大切です。

5.観察集団の年齢別死亡数:この情報は、直接法で観察集団の年齢階級別死亡率を計算するときに必要になります。間接法の利点は、観察集団の年齢階級ごとの死亡数が分からない場合や、各階級の死亡数が少なく率が不安定な場合でも、総数だけで計算できることです。人口2万人のA市では年齢階級別の死亡数が少なくなりやすく、これこそが間接法を選ぶ理由です。

覚えるポイント

  • SMR=観察集団の実際の死亡数(総数)÷期待死亡数×100。期待死亡数=Σ(基準集団の年齢階級別死亡率×観察集団の年齢階級別人口)
  • 間接法で必要な情報は、観察集団の総死亡数、観察集団の年齢階級別人口、基準集団の年齢階級別死亡率の3つ
  • 直接法は「観察集団の年齢別死亡率×基準人口」、間接法は「基準集団の年齢別死亡率×観察集団の人口」。率の取り方が逆
  • 直接法の結果は率(年齢調整死亡率)、間接法の結果は比(SMR)。SMRが100を超えれば基準集団より死亡が多い
  • 人口の小さい集団(市町村)や、観察集団の年齢別死亡数が不明なときは間接法を選ぶ
  • 粗死亡率は年齢構成の影響を受け、高齢化した地域では高く出る。比較するときは年齢調整が必要

掲載内容は受験学習用に編集しています。正式な正答・採点上の取扱いは、各試験実施機関の発表を優先してください。情報の確認方法と訂正窓口は編集方針に掲載しています。本サービスは診断・治療・臨床判断を目的とするものではありません。

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