第108回

108PM033|第108回 保健師国家試験 過去問

2つ選択

平成30年(2018年)の労働災害と業務上疾病の発生状況について正しいのはどれか。2つ選べ。

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正解2・3

正答

2.労働災害による死亡者数は平成29年(2017年)に比べ減少している。
3.労働災害の認定数は脳・心臓疾患よりも精神障害によるものが多い。

この問題のポイント

平成30年(2018年)の労働災害・業務上疾病・過労死等の労災補償に関する統計について、水準と前年からの推移を問う問題です。死亡者数は1,000人未満の水準で前年より減った一方で、業務上疾病は前年より増えたという対比が判断の鍵になります。あわせて、労災の支給決定(認定)件数は精神障害が脳・心臓疾患を上回ること、業務上疾病の最多区分は負傷に起因する疾病(主に災害性腰痛)であることを押さえていれば、正答の2つを選べます。

解説

問題文は対象を平成30年(2018年)と指定しています。そのため、その年の統計(労災補償は平成30年度)で判断します。選択肢は、性質の違う次の3種類の統計から作られています。

  • 労働災害による死亡者数・休業4日以上の死傷者数:厚生労働省「労働災害発生状況」(暦年)
  • 休業4日以上の業務上疾病:厚生労働省「業務上疾病発生状況等調査」(暦年)
  • 労災の認定(支給決定)件数:厚生労働省「過労死等の労災補償状況」(年度)。選択肢3の「認定数」はこれにあたります。

死傷者数や業務上疾病が「休業4日以上」で集計されるのには理由があります。休業4日以上の労働災害では、事業者が労働者死傷病報告を遅滞なく労働基準監督署長に提出する義務を負い(休業4日未満は四半期ごとの報告)、これが統計の基礎になっているためです。

労働災害による死亡者数

死亡者数は、昭和36年(1961年)の6,712人をピークに、安全衛生対策の進展によって長期的に減少してきました。平成27年(2015年)に初めて1,000人を下回りました。平成29年は978人と前年よりやや増えましたが、平成30年は909人に減り、当時の過去最少となりました。同年度に始まった第13次労働災害防止計画(2018〜2022年度)は、死亡者数を2017年比で15%以上減らすことを目標としました。

死亡災害は、業種別では建設業、事故の型別では墜落・転落が最も多くなっています。一方、休業4日以上の死傷者数は、平成30年に12万7千人余りと前年より増えました。死傷災害の事故の型では転倒が最多で、第三次産業や高年齢労働者での増加が課題とされています。「死亡は減っているが、死傷や疾病は減っていない」という対比は、この分野でよく問われる構図です。

業務上疾病(休業4日以上)

業務上疾病は、労働基準法施行規則別表第1の2の区分に沿って集計されます。主な区分は、負傷に起因する疾病、物理的因子による疾病(熱中症など)、作業態様に起因する疾病、化学物質による疾病、じん肺、病原体による疾病などです。

平成30年は、負傷に起因する疾病が全体の約7割を占めて最多でした。その大部分は、重い物を持ち上げた瞬間などに起こる災害性腰痛で、腰痛だけで業務上疾病の半数以上にのぼります。これに対し、腰部に負担のかかる業務を比較的長期間続けて生じる非災害性腰痛は、作業態様に起因する疾病に分類されます。この年の発生数は前年を上回りました。記録的な猛暑となった年で、熱中症の増加も目立ちました。

腰痛は、社会福祉施設などの保健衛生業でも多く発生しています。平成25年に改訂された「職場における腰痛予防対策指針」では、対象が福祉・医療分野の介護・看護作業全般に広げられました。あわせて、原則として人力による人の抱上げは行わせないことが示されています。看護職自身の健康を守るうえでも大切な知識です。

過労死等の労災補償状況

平成30年度の支給決定件数は、精神障害465件、脳・心臓疾患238件で、精神障害がおよそ2倍でした。精神障害は請求件数・支給決定件数とも長期的に増加傾向にあり、背景にはハラスメントや長時間労働など、仕事による強い心理的負荷があります。

こうした状況を受けて、過労死等防止対策推進法(平成26年)が制定され、労働安全衛生法の改正によってストレスチェック制度(平成27年12月施行)が設けられました。ストレスチェックの実施義務の対象は、出題当時は常時50人以上の労働者を使用する事業場でした。令和7年の法改正により、今後は50人未満の事業場にも義務が拡大されます。

正答に至る判断

以上から、平成30年に前年より減ったのは死亡者数です。業務上疾病は増えており、その最多区分は負傷に起因する疾病です。また、労災の支給決定件数は精神障害が脳・心臓疾患を上回ります。したがって、正しいのは選択肢2と選択肢3です。

産業保健の場では、こうした統計が優先課題を決める根拠になります。たとえば、メンタルヘルス対策、腰痛予防、熱中症予防、高年齢労働者の転倒防止などです。

選択肢の確認

1.労働災害による死亡者数は2,000人以上である。:平成30年の死亡者数は909人で、2,000人を大きく下回っています。平成27年以降は1,000人未満で推移しているので、死亡者数の桁を押さえていれば判断できます。休業4日以上の死傷者数(12万人台)や業務上疾病(8千人台)の数字と取り違えないよう注意しましょう。

2.労働災害による死亡者数は平成29年(2017年)に比べ減少している。:正答。平成29年の978人から平成30年は909人に減り、過去最少を更新しました。平成29年は前年より一時的に増えましたが、長期的な減少傾向は続いています。

3.労働災害の認定数は脳・心臓疾患よりも精神障害によるものが多い。:正答。平成30年度の支給決定件数は、精神障害465件に対して脳・心臓疾患238件で、精神障害がおよそ2倍です。請求件数でも精神障害のほうが多く、近年は一貫して精神障害が上回っています。

4.業務上疾病(休業4日以上)発生数は平成29年(2017年)に比べ減少している。:平成30年の業務上疾病発生数は前年を上回っており、減少していません。記録的な猛暑で、熱中症の増加が目立った年でもあります。前年より減ったのは死亡者数のほうで、選択肢2の「減少」と混同させる作りになっています。この年は休業4日以上の死傷者数も増えています。

5.業務上疾病(休業4日以上)発生数の内訳では「作業様態に起因する疾病」が最も多い。:平成30年の内訳で最も多いのは負傷に起因する疾病で、全体の約7割を占め、その中心は災害性腰痛です。統計上の区分名は「作業態様に起因する疾病」で、非災害性腰痛、振動障害、頸肩腕症候群などが含まれますが、件数は負傷に起因する疾病よりずっと少なくなっています。同じ腰痛でも、災害性か非災害性かで区分が分かれる点が取り違えやすいところです。なお、本問の対象年(平成30年)より後の令和2年以降は、新型コロナウイルス感染症の労災によって病原体による疾病が急増し、令和3年・令和4年などには最多の区分となりました。年次によって最多の区分が変わるので、問題文の対象年を必ず確認しましょう。

覚えるポイント

  • 労働災害の死亡者数は昭和36年をピークに長期的に減少し、平成27年に初めて1,000人未満になりました。平成30年は909人で、前年の978人より減少しています。
  • 死亡災害は業種別で建設業、事故の型別で墜落・転落が最多です。休業4日以上の死傷災害は事故の型別で転倒が最多で、平成30年の死傷者数は前年より増えました。
  • 休業4日以上の業務上疾病は平成30年に前年より増加しました。内訳の最多は負傷に起因する疾病で、大部分は災害性腰痛です。なお、令和3年・令和4年などは、新型コロナウイルス感染症の労災により病原体による疾病が最多でした。
  • 災害性腰痛は「負傷に起因する疾病」、非災害性腰痛は「作業態様に起因する疾病」に分類されます。
  • 過労死等の労災支給決定件数は精神障害>脳・心臓疾患で、精神障害は増加傾向です。これがストレスチェック制度(出題当時は常時50人以上の事業場で義務)などの対策につながりました。
  • 死亡災害・業務上疾病は暦年、労災補償状況は年度の統計です。どの統計の数字かを区別して読みましょう。

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